新型コロナウイルスによって北米では乗用車などの生産がストップし、自動車産業に大きな影響を与えている。
ミシガン州ディアボーンに本社を置くフォードは、GEヘルスケアと組んで小さな非上場企業エアオン(Airon)の人工呼吸器を生産することを発表した。
新型コロナウイルスによる肺炎の治療には欠かせない人工呼吸器だが、なぜこのようなベンチャー企業の製品が選ばれたのだろうか。
文:ベストカーWeb編集部/写真:Ford Motor Company、Adobe Stock
■電気を使わない人工呼吸器
フォードは2020年3月30日にGEヘルスケアと共同で、エアオンの人工呼吸器をミシガン州で製造することを発表した。
GEヘルスケアは、ゼネラル・エレクトリックの医療機器部門として1994年に創業された。またエアオンは、人工呼吸器と呼吸改善機器を製造する小さな非上場メーカーで創業は1997年。
新型コロナウイルスによる肺炎の治療に欠かせない人工呼吸器だが、患者数が急速に増えたことで大きく不足している。
そのためこのプロフェクトでは100日以内に5万個を生産するという。しかもその後も必要に応じて月産3万個の生産を予定している。
フォードは実際の製造に必要なものを用意し、GEヘルスケアは製造のための技術を提供、エアオンは人工呼吸器のライセンスを許諾する。
しかし、なぜ今回はエアオンの製品が選ばれたのだろうか?
エアオンの人工呼吸器「A-Eベンチレーター」は、ほとんどの肺炎患者のニーズに必要な機能を備えながら電気を必要とせず、気圧を利用して作動する製品だという。
そのためMRIなどの電子機器を使用している場所や救急災害時対応に最適なものだ。迅速にセットアップできるように設計されており、医療従事者が簡単に使用できる。
また、集中治療室など患者がいる場所ならどこでも配置できる。比較的シンプルな構造のため、生産数を大幅に増やすのにも適しているという。
■100日で5万台の人工呼吸器を製造
フォードはまずフロリダのエアオンにスタッフを派遣し、現状の1日3台という生産数を増やすところから着手する。
さらに、4月の最終週までにミシガン州イプシランティにあるフォードのローソンビルコンポーネント工場での生産を開始する。
ここでは24時間体制で人工呼吸器を生産、UAW(全米自動車労組)を中心とした有志の従業員500人が3交代のシフトで作業する。これにより週に7200台のA-Eベンチレーターを製造。
このプロジェクトでは4月中に1500台を生産し、5月に1万2000台、7月4日の独立記念日までには5万台を用意する予定だ。
またフォードとGEヘルスケアは今回の発表の前週にGEヘルスケア製の簡素な人工呼吸器を共同生産することを発表しており、A-Eベンチレーターの製造と合わせて大きな効果をあげるはずだ。
米国政府は100日で10万台の人工呼吸器を生産する目標を掲げているが、これに大きく貢献することになる。
ホワイトハウスのピーター・ナヴァロ通商製造業政策局長は、「フォードと GEヘルスケアによるチームは、トランプ政権の全面的なコロナウイルスとの戦いの最前線に必要な人工呼吸器を早急に製造するために、トランプ流の迅速な行動を行っています。
フォードが第二次世界大戦中に自動車からシームレスに戦車の生産に移行したように、その優れたエンジニアリングを活用して米国の危機に対する支援を行うでしょう。
その努力に我々は敬意を表したいと思います」と語った、
同じ米国メーカーのGMも人工呼吸器の生産を開始しており、テスラも医療機器の提供などを行っている。
コメント
コメントの使い方