阪神大震災や2011年の東日本大震災でも一部の高速道路が崩落した。駿河湾沖を震源とする巨大地震『東海地震』の発生確率は30年以内に88%。
『首都直下地震』の発生確率は同じく70%と文科省が試算したのは2012年のこと。東海地震であれば東名高速道路、首都直下地震なら首都高速道路の安全にも関わってくる。
「今、地震に対して危険な高速道路はどこなのか?」 そんな問いに対して、高速道路研究家の清水草一氏は“意外な現実”を指摘するのであった。
文:清水草一/写真:shutterstock.com、首都高速道路
『古いから危ない』単純に言い切れない道路安全の難しさ
そもそもこの原稿の依頼は、「地震などで危険な高速道路を指摘してください」というものだったが、そんなことが私にわかったら大変だ。
「え? よくテレビニュースで見る首都高のボロボロのところ。ああいうところが危ないんでしょ?」
そう思われるかもしれないが、事はそう単純ではない。
「首都高のボロボロのところ」とは、具体的には首都高1号羽田線東品川桟橋付近を指すが、あそこが特に危険だというわけではない。
確かにコンクリート表面が崩れてきているが、実はあの映像自体、数年から10年ほど前に撮られたものらしく、現在はかなり補修されている。
しかも、コンクリート表面が剥離しつつあるからといって、必ずしも構造物としての強度が大幅に落ちているとは言えない。表面部分は全体強度のごくごく一部を担っているに過ぎないし、しかもあの区間も、耐震補強工事は完了している。
我々建築の素人は、「建築物は古くなると脆くなる」という先入観がある。そういう面もゼロではないが、歳月に比例して強度が落ちるわけでもない。
首都高では、一部区間での大規模更新、つまり造り直しが決定しており、あの東品川桟橋付近は真っ先に工事が始まっている(2026年完成予定)。
しかしそれは強度が落ちたからではなく、「このまま補修を続けるより、造り直した方が、長期的に見ると安上がりだから」なのである。
一般道の橋には、点検・補修がおろそかになっているものも数多いが、高速道路は一般道に比べると、はるかに厳しく点検されている。
もちろんそれとて完全ではなく、笹子トンネルの天井版崩落のような大ケアレスミスもあるが、それでも道路の中では最も厳しく管理されている。
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