中古BEV相場は急落する? 必要なのは「長く安心して使える制度」と「ブロックチェーン」

■BEVのリセールが低い理由は

 現状のBEVは「リセールバリューが低い」と認識されているが、BEVの中古車予測にはいくつかの仮説がある。

 その仮説のひとつ(A)は「BEV中古車は大幅に下落する」という説。

 BEVの減価償却率は現時点ではそれなりに(ガソリン車よりも)低いが、テスラやBYDの新車が値下げを繰り返していることを考えると、今後中古車相場がさらに大幅に下落する可能性が高い。そもそもバッテリー技術はまだ未成熟分野であり、バッテリーの革新的な技術が現れると、既存のバッテリーの価値は急落する可能性も高いのだ。

 BEVが中古市場に並んだ場合、搭載バッテリーが「最悪の状態で使われたのでは」とセカンドユーザーは心配する。「このクルマは急速充電を繰り返したか、あるいはゆっくり充電したのか」が分からないからだ。

 知り合いの「BMW i3」オーナーは10年10万kmを走破したが、バッテリーはあまり劣化していないと聞いた。この個体は急速充電(CHAdeMO)をほとんど利用していないという。

 200Vの交流でゆっくり充電すると、リチウムイオンバッテリーは長持ちする(ゆえに「CHAdeMOのインフラが少ないから日本はBEVが普及しない」と考えるのは間違っている)。

 バッテリーは、その使い方がバッテリーの劣化(寿命)に大きく影響する。だが現在世界で販売しているBEVの多くは「どのように使われてきたか」の履歴が残されていない。こうした状況が続くのであれば、「一巡後」のBEVの価格は大幅に下落すると予想せざるをえない。

 もうひとつの仮説(B)は「中古BEV価格は下落しない」という説。

 一部の中古BEV専門店からは「BEVはガソリン車と比べて部品点数が圧倒的に少ないぶん、バッテリー性能さえ安定していれば故障も少なく、相場価格も維持しやすい」という声もある。

 しかし、「バッテリーさえ安定していれば」という条件付きなので、結局、仮説(A)も(B)も、バッテリーの使われ方次第となる。その意味では仮説(A)も(B)も同じ課題に直面しているのだ。

 車両コストの40%を占めるバッテリーの実態が不透明なまま、床下に収まっているのは気持ちが悪い。

 リチウムイオンバッテリーは発火しやすい高エネルギーを有する部品だ。中古車として販売店に並んでいても、どのBEVがまともなのか、まともでないのか、現状では分からない。販売員に聞いても答えることはできないだろう。こうした不安がある中では、そもそも健全な中古車市場を成り立たせるのは難しい。

ガソリン車の半分とも1/5とも言われるBEVの部品点数。そのぶん整備費用は安くなる…と言われていたが、しかし車両本体価格のうち40%を占めるバッテリーの性能評価がブラックボックス化されており、中古価格が不安定化している
ガソリン車の半分とも1/5とも言われるBEVの部品点数。そのぶん整備費用は安くなる…と言われていたが、しかし車両本体価格のうち40%を占めるバッテリーの性能評価がブラックボックス化されており、中古価格が不安定化している

 ライフサイクルの中で、バッテリーの性能が大きく問われるBEV特有の課題が浮かび上がっている。エンジン車で成長してきた伝統的な自動車メーカーは、売り切りのビジネスモデルなので販売後のクルマにはあまり興味がない。

 政府もBEVを普及させるための補助金を与えているが、この政策は売り切りビジネスを助長するだけなので、愚策と言わざるを得ない。上述のとおり、一次ユーザーは補助金を利用できるが、二次ユーザーは補助金もなく、バッテリーの履歴も分からないまま、宝くじを買うように、中古車をチョイスするからだ。

 だが、もしバッテリーの履歴を正確に記録し、デジタル技術の「ブロックチェーン」(BC)というツールが使えるならば、中古車BEVは買いやすくなる。BCはデータを絶対に書き換えられないNFT(ノンファンジブル・トークン)なのだ。

次ページは : ■ブロックチェーン(BC)はバッテリー性能を正しく証明できるか

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