中古BEV相場は急落する? 必要なのは「長く安心して使える制度」と「ブロックチェーン」

■ブロックチェーン(BC)はバッテリー性能を正しく証明できるか

 バッテリーの充電履歴をデータで取得し、それを分散して記録するのがBCであり、この仕組みには中央集権的なサーバーが存在しない。完全に「Peer-to-Peer(ピアトゥピア)」で繋がるので、結果的にサーバー管理者が存在しないので、不正が起きないのだ。この仕組みは仮想通貨でも使われている。

 自動車業界の鬼才と言われるステランティスのカルロス・タバレスCEOは昨年ブロックチェーンを使う車歴システムを構築すると発表し、きたるBEV時代のサスティナビリティ(持続可能性)に備えている。またホンダはゼロシリーズのBEVではBCを使うとコメントしている。

2022年2月にイタリア本国で発表された(ステランティスの)アルファロメオ・トナーレ(HEVとPHEV)は、車両情報をブロックチェーンで管理している。今後このやり方が主流になってゆく…のか…?
2022年2月にイタリア本国で発表された(ステランティスの)アルファロメオ・トナーレ(HEVとPHEV)は、車両情報をブロックチェーンで管理している。今後このやり方が主流になってゆく…のか…?

 現在、モビリティにおけるBCを牽引するのはアメリカのMOBI(Mobility Open Blockchain Initiative)という非営利団体。ここには日米欧を中心に参画企業が集まり、BCとWEB3.0を進めている。

 一方、欧州はGAIA‐X、ドイツはCATENA‐Xというデータ連携するコンソーシアムも活発に動き、バッテリーの使い方からクルマの素材(部品)のカーボンフットプリントをデータでマネージメントする仕組みが出来ている。そしてMOBIと連携しながら国際的な協調領域が広がっているようだ。

 日本はこの欧米の取り組みにどう連携するのか、産官の動向が気になるところだ。

■欧州電池規制法やバッテリーパスポートへの対応

 国内においてはBEVのリセールバリューを高めるためにBCが鍵を握っているが、それと同時に欧州では厳しい環境規制が矢継ぎ早に提案されている。

 そのひとつが欧州炭素国境調整メカニズム。これは環境規制の緩い国で生産したものを欧州に輸入する抜け道を防ぐために、欧州内外のカーボン排出量の差を国境で課金するメカニズムだ。

 さらにクルマの設計から廃車に関する規則案 (End-of-Life Vehicles規則) が提案され、BEVのLCA(ライフサイクル・アセスメント)が重要となる。具体的には回収とリサイクルを考慮した設計が要求される。

 バッテリーに関しては欧州電池規制法が2025年2月に施行され、バッテリーの原材料から設計・生産、そしてリユース・リサイクルにわたるLCA全体のデータを開示することが義務づけられる。その対象はクルマだけでなく産業用から携帯型などEU域内で販売するすべてのバッテリーが対象となる。

 BEVのカーボンフットプリント(LCA全体で排出する温室ガスをCO2に換算)は2025年2月から開示義務となる。

 さらに2027年2月からQRコードで読み取るバッテリーパスポートが施行され、原材料やカーボンフットプリントの閲覧が可能となる。

 このように、欧州では実効性のあるSDGsを推し進めるための規制が厳しさを増すなか、ステランティスのカルロス・タバレスCEOはBCを使うことはもちろんのこと、「バッテリーの重量を今後10年で半減すべき」とコメントしている。

■業界団体に向けた提言

 以下、官民そろって早急に進めるべき社会整備を書いておく。

1.バッテリーの使用状況の履歴を残す仕組みは、BEVだけではなくHEVもPHEVも同じ課題である。「HEV対BEV」というような議論は意味がなく、早急に取り組むべきことは「(原材料である希少金属の)資源確保」と「回収リサイクル」という、上流から下流までのライフサイクル、クルマの一生を評価する仕組みが必要だ。その意味ではHEV大国である日本は積極的にBC導入を急ぐべきである。

2.希少金属を大量に搭載するBEVが海外に再販されると、希少金属を回収できなくなる。欧州電池規制法のように、回収リサイクルを可能とするBEVの設計が必要だろう。業界を上げて仕組み作りが必要だし、車電分離という話も聞かれる

3.BCは車両からデータを取得するが、テスラが自前の充電器でADASデータも含めて走行データを取得し、安全性評価に使っている。現状のCHAdeMOは電力のやり取りしかできないが、テスラのように充電時に車両からデータを得るよう連携させる仕組みが必要だろう。すでに欧州ではGAIA-X/CATENA-Xが先行し、強靭な社会・持続可能性・経済発展・イノベーションを促進する取り組みが活発化している。

4.欧州は循環型社会をめざした新たな法規制が進むものの、日本でも脱炭素&資源循環の達成に向けた企業間データ連携基盤が必要だろう。日本は「ウラノス」というデータ連携があるが、それに関わる制度設計ができてない。

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