ワゴンR/ムーヴ 軽の王座奪還に必要なのは何? 

■実質的な金額差は少なくてもあえてワゴンR/ムーヴを選ぶ理由

 このようにN-BOXやタントのような全高が1700mmを超えるスライドドアを備えた軽自動車は、居住性/積載性/使い勝手が優れている代わりに、動力性能/走行安定性/燃費/価格では不利になりやすい。

 逆にワゴンRやムーヴは、走りと燃費がメリットになる。

 そして全高が1700mm以下のワゴンRやムーヴでも、車内は十分に広い。例えば身長170cmの大人4名が乗車した場合、後席に座る乗員の膝先空間は、ワゴンRが握りコブシ3つ半、ムーヴも3つ分を確保する。

 Lサイズセダンの後席が握りコブシ2つ半程度だから、全高が1700mm以下の軽自動車もゆったりと座れる。

スーパーハイト系よりも背が低いからといって狭いというわけではない。燃費などでも有利なムーヴやワゴンRがピッタリなユーザー層も多いはず(画像はムーヴ)

 そして全高は低めといっても1600mmは上まわるから、頭上空間も広く、後席を畳めば大人用の自転車は無理でも十分な荷物を積める。

 従って3~4名で乗車する一般的なファミリーユースなら、実用的にはワゴンRやムーヴで不満を感じない。

 そこで軽自動車が欲しい時は、まず全高が1600~1700mmのワゴンR、ムーヴ、デイズ、N-WGNなどを検討する。そしてさらに広い居住空間や荷室、スライドドアが欲しいと思ったら、N-BOX、タント、スペーシアなどをチェックすると良い。

 今後の商品開発では、全高が1600~1700mmに位置する軽自動車の価値を改めて見直すことも考えたい。

 参考になるのはムーヴキャンバスのヒットだ。全高は1665mmだから、車名が示すようにムーヴと同等だが、フロントマスクなどを柔和な雰囲気に仕上げてリヤゲートは角度を若干寝かせた。

 後席側にスライドドアを装着して、独特の質感と見栄え、優れた乗降性を両立させている。N-BOXやタントは広さを徹底追求するから、天井の高さやピラー(柱)の角度が予め決まるが、ワゴンRやムーヴにはデザインの自由度がある。このメリットを生かしたい。

ムーヴキャンバスの成功はダイハツにとっても大きな功績。ワゴンRもムーヴも「見せ方」で大きく変わるのだ

 いい換えれば発想の転換だ。以前はワゴンRやムーヴが軽自動車の基本で、スペーシアやタントはさらに背の高い派生車種だったが、今は少なくとも販売面では後者が主流だ。

 主流と派生車の立場が入れ替わったから、ワゴンRやムーヴは従来とは違う独自の価値を追求せねばならない。

 ダイハツとしては、そのひとつがムーヴキャンバスだろう。スズキもワゴンRをベースにしたSUVのハスラーを用意する。

 それでもワゴンRとムーヴが、社用車&レンタカー向けという現実は寂しい。NーWGNが、ほかのホンダ車に先駆けてホンダセンシング(緊急自動ブレーキと運転支援機能)の自転車検知機能を採用したように、ワゴンRやムーヴにも先進技術を与えたい。

 安全装備は全高が1600~1700mmの車種でまず採用して、続いてN-BOXやタントに広めると良いだろう。

 N-BOXやタントがミニバン的な価値観なら、ワゴンRとムーヴには、上質感や先進技術を高めるセダン的な魅力を与えたい。そうすれば軽自動車の新たな選択肢に成長できるだろう。

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【編集部補足】

 ワゴンR、そしてムーヴが属するハイトワゴン市場にはホンダがN-BOXの弟分でもあるN-WGNを2019年7月に投入した。

新型N-WGN。この市場を再び盛り上げてくれる存在になりそうだ

 ホンダがこの市場にあえての新型車を投入したこと、そしてN-BOXと同等のクオリティを確保していそうな現状をみれば、再びこの市場が賑やかになる可能性は高い。

 ムーヴとワゴンRの一層の進化も期待できるはずだ。

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