一見すれば地味に思えるが実はメーカーの販売を支え続けている車種、というものが時折登場する。
2019年現在、そのような「影の実力車」の最右翼はトヨタのタンク/ルーミーだろう。ダイハツトールのOEMだが、巧みに作り分け購入層を増やしている。
なんとタンク/ルーミーの2018年通算の月販平均販売台数は1万4000台超え。これだけの台数を一気に売りさばける車種は現代において稀有な存在。
OEM元のダイハツも潤い、トヨタの販売店も潤う。まさにウィンウィンな関係を築いた名車はなぜ売れるのでしょうか?
文:遠藤徹/写真:トヨタ、ダイハツ
■タンク/ルーミーは月販平均1万4000台でトヨタを支える実力車
トヨタがダイハツからOEM供給を受けて販売している「タンク/ルーミー」が空前のヒットモデルとなっている。
2016年11月9日に発表、発売になったわけだが、3年近くが経過しているにもかかわらず、依然好調な売れ行きを続けている。
2019年1~7月の登録累計はルーミーが5万5021台、前年同期比3.9%増、タンク4万4753台、同0.4%増と共にプラスを維持。
両モデル合わせると9万9774台で月平均1万4253台となっている。ルーミーは登録車銘柄別販売台数のベスト10の6位、タンクは13位に位置している。ダイハツからのOEM供給車でこれだけ売れている車種は他にない。
一般的にはニューモデルで発売すると、ひと回りする2年目は伸長率がマイナスに転じるのが大半だが、タンク/ルーミーは例外で今なおプラスを維持し続けているのである。
■ソリオが健闘するもタンク/ルーミーが売れる理由
タンク/ルーミーはコンパクトな背の高いボックス型ワゴンで1リッター3気筒NAガソリン&同ターボエンジンを搭載している。
直接対抗するモデルはスズキのソリオで、こちらはほぼ同じコンセプトでエンジンは1.2リッターNA&同モーターアシスト方式のマイルドハイブリッド、同EV走行可能な1モーターハイブリッドを搭載している。
発売は2015年8月26日でタンク/ルーミーよりも1年3カ月早い。2019年1~7月の登録累計は2万7845台、4%増、月平均3978台と好調でスズキの登録車のトップセラーモデルだが、タンク/ルーミーに大きく引き離されている。
この違いを首都圏にある両陣営の扱い店に聞くと「ルーミーの方がクオリティは高く、走り、使い勝手が良い。安全対策もモデルが新しい分先行しているので競合しても勝てるケースが多い」(トヨタ店、カローラ店)。
「スズキ店よりも販売サービスネットが強力でどこへ行っても店舗があるので、お客さんは安心して買い求めているのではないか」(トヨペット店、ネッツ店)とコメントする。
これに対してスズキ店、アリーナ店の営業マンは「タンク/ルーミーはソリオより1年以上新しいモデルだから、クオリティ、使い勝手、性能面、安全対策で優位にクルマづくりができている。
それに圧倒的な販売力に支えられている。セールスパワーが同じとして比較すればむしろソリオの方が頑張っているともいえる」と反論する。
トヨタの営業拠点は2018年8月末現在、全国で4653営業所存在し、推定営業マンは3万5000人となっている。
対するスズキ店、アリーナ店は1073営業所、推定営業マンは7000人である。つまり5倍以上の販売力があるのだから、トヨタ陣営の方が圧倒的に優位といえる。
こうした比較をすると、むしろソリオの方が健闘しているといえなくもない。
車両本体価格はタンク/ルーミーが146万3400~200万8800円に対してソリオは145万9080~216万8640円であり、ソリオの方が高めの印象がある。
グレード数はタンク/ルーミーが標準車10、特別仕様車2の合わせて12タイプなのに対してソリオも同じく10+2タイプでどちらも比較的豊富なラインアップ態勢を整えているといえる。
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