かつてSUV販売NO.1だったC-HRの落ち込みが加速中
2020年7月まではヤリスクロスがまだ発売されていなかったので、ライズとC-HRの価格帯でのバッティングはなかった。
それでもライズが2019年11月の発売以来、月販1万台規模で絶好調の売れゆきを見せているのに対してC-HRは、モデルが古くなったこともあり、2000台そこ新車効果のあった発売当時よりも半減状態の大幅マイナスとなっている。
C-HRは2016年12月に発売され、2017年4月にはコンパクトSUVながら、登録車1位を記録し、発売から2017年6月までの7ヵ月間で2位2回、3位1回、4位2回を達成。2017年、2018年と2年連続でSUV販売NO.1に輝いている。2019年は僅差の209台差でSUV販売NO.1の座をヴェゼルに明け渡した。
2020年1月は、3543台(対前年比81.9%)、2月3912台(対前年比64.3%)、3月5172台(対前年比57.8%)、4月2334台(対前年比54.2%)、5月1595台(対前年比37.9%)、6月1833台(対前年比42.2%)、7月2160台(対前年比51.5%)、8月2349台(対前年比65.1%)と大きく伸び悩んでいることがわかる。
おそらく2020年はライズがSUV販売NO.1の座に輝くだろう。まさに盛者必衰である。
これにヤリスクロスが加わるとどうなるか。ライズとC-HRの両方からシェアを食い、三つ巴の戦いがさらに熾烈化することが見込まれる。
ヤリスクロスは2020年7月末から先行予約を受付けており、冒頭で紹介したように2万台以上を受注していると予想する。
トヨタディーラーの営業マンによれば、ヤリスクロスの競合車としてユーザーから挙がる車種は、今のところC-HRのほか、ヴィッツ、シエンタ、カローラフィールダー、ポルテ/スペイドなど、トヨタのコンパクト車で占められているという。
全店扱いとなっているため、販売しているのは同じトヨタの営業マンだから、ユーザーがライズ、ヤリスクロス、C-HRのチョイスで迷う場合、コンセプトの違いを説明することになる。ヤリスクロスを購入しようとしているユーザーは、競合車がすべてトヨタ車というのも凄い。
ライズはSUVのなかで最もコンパクトなボディサイズだが、全高を高めに取り、室内が広く荷物の積載性に優れている。
ライズとヤリスクロスを比較
パワーユニットは1Lターボだから、走りもまずまずなのがウリとなっている。それにしても最も小さいSUVとはいえ、月販1万台規模で、SUV分野のダントツトップなのはもちろん、総合順位でもトップクラスだ。
ところがヤリスクロスの登場で、この状況が大きく変わろうとしている。ヤリスクロスは、1.5LのガソリンNAと同ハイブリッドを搭載。室内はライズよりさらに広く、ハイブリッドは燃費がSUVでは最高レベルを確保している。
売れ筋の「Z」同士で比較するとガソリンNAでは17万円、ハイブリッドでは47万円高くなるが、200万円近辺では同じどちらのモデルも選べるので、ヤリスクロスのほうが買い得ともいえる。
ライズはダイハツからのOEM供給車なのに対して、ヤリスクロスはトヨタのオリジナルモデル。
首都圏のトヨタディーラーA店営業担当者は、
「お客さんの好みを重視し、それぞれの商品特徴を説明しています。しかし、ライズとヤリスクロスで迷っている場合にはヤリスクロスのほうを勧めがちになってしまいますね。
発売されたばかりのモデルというのもありますし、万人受けするのはヤリスクロスですから。またライズはダイハツさんからのOEMモデルで、ヤリスクロスはトヨタオリジナルモデルですので、優先したい気持ちになります」。
C-HRへの影響はどうか? モデルが古く人気が落ちているうえにライズの人気に押されるように、最近になってますます売れ行きに急ブレーキがかかっている。
C-HRは、2020年8月4日に一部改良して商品ラインナップを強化したが、この程度では人気の回復はおぼつかないだろう。
さらに首都圏トヨタディーラーB店営業担当者は、
「ヤリスクロスの登場で最も影響を受けているのはC-HRです。デザインが気に入ってC-HRを買われる方以外で、C-HRかヤリスクロスかで迷っているお客様に対してはヤリスクロスをお勧めしています。
価格帯が重なるうえに室内の広さ、荷物の積載性ではヤリスクロスのほうが使い勝手が良く、リセールバリューも高いからです」と実情を打ちあける。
C-HRの現行モデルの登場は2016年12月だから2020年末で4年が経過する。普通に考えれば2021年か2022年には世代交代の時期を迎える。
しかし、2021年秋頃には、2020年7月9日にタイで発表されたカローラクロスの日本での発売が予想され、C-HRと価格帯で直接競合し、フルモデルチェンジしないとさらに苦境に追いやられる可能性がある。
また一方でC-HRのような背が低めでクーペ感覚のスタイリッシュなクロスオーバーSUVは今後のトレンドに合わないのではないか、といった営業マンからの意見も出てきている。
カローラクロスは全高が高く、室内の広さ、レジャー用品などの積載性の良さを盛り込んでいるので販売すればヒットするのは間違いない。
そうするとC-HRの存在価値はさらに低下し、場合によってはカローラクロスにとって代われる可能性もありそうだ。
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