自らハンデを背負って戦っていた「ランサーエボリューション」
コリン・マクレーに対抗する三菱ワークスの最強ドライバーといえば、トミ・マキネンだ。1996年から1999年まで、4年連続ドライバーズタイトルを成し遂げた三菱ワークスとトミ・マキネン。それを支えたマシン「ランサーエボリューション」が始めてWRCに登場したのは、その快挙から遡ること3シーズンの、1993年シーズンのことだ。
ランサーエボリューションは、それまで参戦していた「ギャランVR-4」の後継車としてデビューし、熟成した4G63ターボエンジンと、ワンウェイクラッチの機構を取り入れた独自の4WDシステムを武器に、スポット参戦を開始した。
そして、94年シーズンには「エボリューションII」へ、95年シーズンには「エボリューションIII」へと着実にマシンは進化し、速さと信頼性を磨いた。
スポット的に参戦していたマキネン(当時30歳)は、この年から三菱へと正式加入。前年に投入した電気式アクティブデフをはじめとしたマシンの改良が活き、95年シーズン第2戦のスウェーデンにて、1位にケネス・エリクソン、2位にマキネンと、三菱のワンツーフィニッシュを達成した。
その強さは、1996年シーズンで大爆発することになる。エボリューションIIIに乗ったマキネンは9戦中5勝という圧倒的速さを見せつけ、その年のドライバーズタイトルを獲得した。
翌97年シーズンでは、エボリューションIVへと進化、この年も4勝を記録したマキネンは、ランキング2位のコリン・マクレーと1ポイント差ではあったが(4戦連続リタイアのあと3連勝して猛追したマクレーも凄いが)、2年連続のドライバーズチャンピオンを獲得。
98年シーズン中にデビューしたランサーエボリューションVでも4勝を挙げ、ドライバーズタイトル3連覇と、三菱初のマニュファクチャラーズタイトルをもたらした。そして99年シーズン、ランサーエボリューションVIとなり、この年もマキネンがドライバーズタイトルを獲得、遂に4年連続ドライバーズチャンピオンという快挙を成し遂げたのだ。
インプレッサWRCを含め、他のライバルチームが、改修の自由度が大きい「WRカー規定」のマシンで参戦していた中で、三菱だけは、グループA規定(市販車としての生産台数規定があり、競技レベルの市販部品も量産する必要があった)で戦う道を選んでいた。
「リアウィングやフロントマスクがガンダムのようにド派手だ」など冷やかされてもいたが、憧れたWRCマシンとほぼ同じデザインのランエボが手に入る、という喜びは格別であり、ファンはこぞって購入していた。
ラリージャパン2021は、若者にこそみてもらいたい!!
WRCを見ていて思うことは、公道を使ったレースの場合、突然コース上に現れた牛を避けたり、道端で見物するギャラリー(マシンに触れようと手を伸ばすギャラリーも多かった)のすぐ真横を走り抜けたりと、マシンの速さはもちろんのこと、ドライバーの腕の凄さと、運の強さも必要なモータースポーツだな、ということだ。
また、ボロボロに壊れたマシンを30分で復元して送り出す凄腕メカニックや、ミリ以下の単位で最速マシンを作りこむ車両開発のエキスパートエンジニア、それを陰から支えるスタッフなど、一人のドライバーを勝たせるために動くチームメンバーとの一体感を、筆者もできることなら体験してみたかった。
「スバルと三菱、どちらが最強か!?」と問われたら、筆者は「速さは三菱、強さはスバル」と答える。モータースポーツが盛んな欧州で、遠い日本から送り出したマシンが大活躍したWRCを目にしたことがきっかけで、筆者はクルマ好きになり、そして、自動車の開発エンジニアにもなった。
来年、ラリージャパン2021が開催されることにより、モータースポーツに憧れる若者が多く誕生してくれることを期待している。
いまトヨタWRCチームは、2020年シーズンのマニュファクチャラーズランキングにて、わずか8ポイント差で2位につけている(1位はヒュンダイ)。12月4~6日の最終戦、ラリー・イタリアの結果次第で、逆転する可能性は大いにある。
ドライバーズ&マニュファクチャラーズチャンピオンを獲得し、来年のラリージャパン2021に向けて、勢いをつけられるか、最終戦が非常に楽しみだ。日本人ドライバー、勝田選手の活躍にも期待している。
かつてのように、他の日本車メーカーのワークス参戦も期待したいところではあるが、まずはトヨタに、日本車メーカーが世界一になるところを、再び見せてほしい、と思っている。
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