今、コンパクトクラスのSUVが熱い。2020年10月の乗用車車名別販売台数を見ると、2位に入ったトヨタライズ(1万2356台)とその兄弟車であるダイハツロッキー(2610台)を合わせると、計1万5866台も売れている(ちなみに1位は「ヤリス」の1万8592台)。
2020年8月31日に発売されたヤリスクロスについても、すでに受注台数は3万台を超え、納期5ヵ月と全く生産が追いつかない状況。販売台数は9月が6740台(ガソリン:2210台、HV:4530台)、10月が6900台(ガソリン:2460台、HV:4440台)。
2020年6月30日に発売した日産キックスはe-POWERユニットを日本から輸出し、タイ工場で組み立てを行っているため増産が難しいなか、2020年10月は3542台を販売。
さらに2014~2016年と2019年にSUV販売台数NO.1を達成したホンダヴェゼルは、発売から7年というモデル末期ながら、2020年10月は2985台も売れた。
まさに国内最激戦区となっているコンパクトSUV、魅力的なモデルが目白押しとなっている。
そこで本企画では、そのコンパクトSUVのなかから特に注目のモデル、トヨタライズ、トヨタヤリスクロス、日産キックス、ホンダヴェゼルをピックアップ。
モータージャーナリストの国沢光宏氏が、各コンパクトSUVの”強み”と”弱点”を洗い出したうえで、それぞれどんなユーザーにお薦めかをお知らせします。
文/国沢光宏
写真/ベストカー編集部 ベストカーweb編集部 トヨタ 日産 ホンダ
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トヨタライズ/販売台数ではSUVのNO.1!
まずライズ/ロッキーから分析してみたい。ストロングポイントは価格でしょう。
まぁまぁ納得できる装備内容のグレードで174万5000円。206万円出して「Z」というグレードを選ぶとフル装備になる。
加えてSUVで希少となった5ナンバーサイズのボディだから狭い道路&駐車環境の日本でも乗りやすい。
それでいて軽自動車作りのノウハウを活かし、1クラス以上広いキャビンスペースを確保。
1L、3気筒ターボエンジンは燃費も良好。ハイブリッドなどこれといった”飛び道具”を持っていないので街中では15km/L近く、流れのいい道路状況なら20km/L近く走ってくれるから嬉しい(編集部註/WLTCモード燃費は18.6km/L、2WD、G)。カッコよいSUVルックもあって売れて当然か?
ただ、決定的な弱点がある。安全性です。トヨタのバッジを付けているけれど、開発も生産もダイハツ。
ダイハツというメーカー、価格>安全という考え方を持つ。自動ブレーキはトヨタより性能で圧倒的に劣り、50km/hからの衝突回避すらできない。衝突安全性も追突対応など日本の安全基準に含まれていない状況だとキビシイと考えていいだろう。
トヨタヤリスクロス/世界で最も安全なコンパクトSUV

同じトヨタのバッジを付けていながら全く違う持ち味なのがヤリスクロスだ。このクルマ、ヨーロッパで手強いライバルと戦うべく開発された。
すべてにおいて先進国基準となってます。衝突安全性ひとつ取っても万全! 正面は当然ながら、ロールオーバー(横転)や追突された時の安全対応までキッチリやっている。自信を持って推奨します。
自動ブレーキだって世界トップ水準。追突事故防止性能は当然。歩行者を検知する性能だって高く(右折時に横断歩道を渡っている歩行者まで検知)、様々なデータから推測すると事故の90%以上を事前に防止できるレベルに届いている。
コンパクトクラスということで比較すると、おそらく世界で最も安全なクルマといってよかろう。
また、ハイブリッドを選ぶと25km/L以上というとんでもない実用燃費(編集部註:WLTCモード燃費は30.2km/L、ハイブリッドG、2WD)に驚かされる。
標準の3気筒1.5Lエンジンだって15km/L程度走ってくれる(編集部註:WLTCモード燃費は20.2km/L、X、2WD)。
数少ない弱点が決して広いといえないキャビンスペースです。なかでもリアシートはボディがひと回り小さいライズと比べても負けている。購入時はぜひ実車でチェックしてほしい。
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日産キックスe-POWER/走りとリアシートの居住性が高評価
キックスはバランスのよさを特徴とする。ボディサイズがヤリスクロスより長いこともあり、リアシートの居住性で優位。身長183cmの私だってキックスならリアシートに長い時間座っての移動も苦にならない。
搭載されているパワーユニットも日産自慢のe-POWER(日産式ハイブリッド)のため、けっこう燃費よい(編集部註:WLTCモード燃費は21.6km/L)。
ヤリスクロスの数字にこそ届かないが、ヴェゼルとなら好勝負。しかもe-POWERのドライバビリティで高い評価を得ている。
ライバルより圧倒的に大きいバッテリーを搭載しているため、街中でアクセル踏んだ時の加速感は、ヤリスクロスを100とすればヴェゼル60。キックス120といったイメージ。乗れば誰でもハッキリわかるレベル。
キックスの弱点はe-POWER仕様&なんでも付いているフル装備グレードしかないため、割高に感じること。
装備を考えればヴェゼルと同等&ヤリスクロスより10万円くらい高いだけなのだけれど、コンパクトSUVで275万9900円となれば少し腰が引ける(乗り出しだと300万円超)。それでも月販3000台を超え、納期3ヵ月という人気。
ヴェゼル/モデル末期ながら競争力は健在!

ヴェゼルだけれど、2013年12月にデビューした、モデル末期でハード面もライバルに負けているのにいまだに毎月3000台ペースで売れているのだからスゴイと思う。
ストロングポイントを挙げるなら、211万3126円からという1.5Lエンジン車のコストパフォーマンスだろう。このクラスで圧倒的に広いキャビンスペースを持つし、1.5Lグレードなら値引きも大きく見積もり取ると競争力あります。
前述の通り、ヤリスクロスやキックスのハイブリッドだと乗り出し価格300万円に達してしまう。
お買い物や家族の送迎などチョイ乗りが多いという使い方であれば、燃費のいいハイブリッドを選ぶ必要もない。ヴェゼルの1.5Lだったら値引き含め230万円あれば買えてしまう。衝突時の安全性能はライズを圧倒的に凌ぐ。
また、このクラスでは唯一のターボエンジン、172ps/22.4kgmを発生する1.5L、VTECターボを搭載する「ツーリング・ホンダセンシング」という高性能モデルをラインナップする。モデル末期ということもあって話題に上がらないけれど、速くて楽しい。
ヴェゼルの新型は2021年春に登場するといわれているから、ホンダファンなら少し待ってみるのもよいかもしれません。現行フィットをベースにしているため、広いキャビンになると思う。
結論/各車のアドバンテージを見極めるとこうなる!
以上、コンパクトクラスのSUVを比べてみた。安全と環境問題のバランスの高さを考えればヤリスクロス。
広いキャビンスペースが希望ならキックス。安全の優先順位が低く、コストパフォーマンスということだったらライズだと思う。
軽自動車を含め、小さいクルマを選ぶ人は安全性よりコスト重視派が多い。今後もライズ人気と予想しておく。