本当にモテてたのか? 幻想だったのか?? 愛と幻想のデートカー史


■大ヒットした5代目シルビア

 快進撃を続けたプレリュードの販売にブレーキをかけたのは、日産から登場した1988年に登場した5代目シルビアだ。

 初代シルビアはダットサン・フェアレディをベースとした日本初のスペシャリティカーであった。その後、モデルチェンジを繰り返し5代目に至る。

S13(5代目)シルビア。最安グレードの「J`s」で1,467,000円、「Q`s」で1,556,000円、最上級の「K`s」でも1,978,000円で買えた。2Lターボで200万円以内だった

「アートフォース・シルビア」のキャッチコピーで販売されたこのシルビアが若者に受け入れられた最大の理由は、流麗なスタイリングにあったといっても過言ではない。

 ライバルであるプレリュードが直線基調でデザインされていたのに対し、シルビアは曲線と曲面を上手に組み合わせた未来的なデザインで、街中で人目を引くことになる。

 クルマの色といえば、白、赤、黒といったものが主流だった時代にライムグリーンのボディカラーをイメージに採用。そしてそのライムグリーンのモデルが多数売れるという現象も起きた。

 シルビアはデートカーとしての要素をしっかりと持ったクルマで、日産もそれを大きく意識してスッキリとした滑らかな面を持つインパネを採用するなど、女性にも受け入れやすいデザインを多く採用していた。またグレード名についても最上級がK’s(ケーズ)、続いてQ’s(キューズ)、J’s(ジェイズ)とトランプのカードに由来するネーミングにするなど、凝った演出が施された。

スタイリッシュなデザインだけでなく、手頃な価格、素直なハンドリングで人気を博した。現在は中古車価格が高騰しており、無事故車で走行距離が短いものは300万円以上の値がついている

 一方で、じつは中身はけっこう無骨でスポーツマインドにあふれたモデルであった。すでにAE86レビン&トレノの販売は終了し、手軽なFRモデルがなかった市場にFF化することなく新型としてFR2ドアクーペが登場したことで、走り好きのファン達がシルビアに飛びついたのだ。

 K’sはターボエンジン、Q’sとJ’sはNAエンジンを搭載するモデルで、初期型はCA18系の1.8L直列4気筒、後期型はSR20系の2リットル直列4気筒を搭載した。後期型K’sは300万円に迫る価格帯だったが、バブル期ということもあって高いというイメージは持たれなかった。

■「デートカー」という要素、「FRクーペ」という要素

 シルビアが大ヒットしたのは、デートカーとしての要素とFRクーペとしての要素の2面性があったからにほかならない。その両方の要素を求めて買ったユーザーもいれば、どちらか片方だけの要素で買い求めたユーザーもいただろう。どちらにもアピールできる多様性があるクルマだったからこそ、大ヒットに繋がったのには間違いはない。

 さて、現代に話を戻そう。

 今も昔も助手席に乗りたいお嬢さんはたくさん存在しているはずだ。コロナ禍の今、誰が乗ったかわからない「わ」ナンバーのカーシェアの助手席に乗ってもらうのか? 自分しかステアリングを握らず予約席としてリザーブしておいた助手席に乗ってもらうのか? どちらがいいのだろう。

 そして、お嬢さんはどちらに乗りたいのか? こうしたことを考えれば、クルマを所有することのよさが少しはわかるのではないだろうか。

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