ジェスチャーコントロールの精度を高める新技術が登場
最近ではスイッチを直接操作する必要さえなくそうという装備まで登場している。それがジェスチャーコントロールという技術で、文字通りジェスチャー(身振り手振り)で、操作を実現するものだ。
いまや欠かせないものとなっているのは、トランクを足で開けられるハンズフリー機能だろう。
両手が荷物で塞がっていてもトランクを開けられるもので、リアバンパーの下に足先を入れ、横に動かすことで実現。その後、作動の正確性を高めるためもあってバンパーをキックする(こうなるとジェスチャーではないが)仕様も登場している。
2020年11月にマイナーチェンジされたホンダオデッセイでは、リアゲートだけでなくスライドドアにもハンドアクションのジェスチャーコントロールが採用され、手をかざすだけでパワースライドドアが開く。
インテリアにもジェスチャーコントロールの導入が進んでいる。メルセデスベンツやBMW、VWはオーディオや空調、モニターをジェスチャーで操作できる装備の導入を積極的に進めている。これによりスイッチやタッチパネル、サンルーフに手を伸ばさなくてもハンドサインだけで操作が完了するのだ。
これはもちろん便利ではあるが、ジェスチャーコントロールは操作に個人差もあるせいか、認識能力にも限界があり、オーナーからは使いにくいという声もよく聞く。それは走行中にブラインド操作しやすくするためのデバイスながらクルマとの対話が成り立っているか、分かりにくいからだ。
手応えがない自分の操作がクルマに認識されているのか、どの程度の調節をしているのか、音声で知らせてくれるのと、操作が反映されているのが後から確認できるのが頼りなのだ。
ジェスチャーコントロールの問題点を解決してくれそうな技術とは
そんなジェスチャーコントロールの問題点を解決してくれそうな技術が開発されている。それは空中ハプティクス、超音波を使って空中で手応えを感じさせる、画期的な技術だ。
2021年1月20~21日、東京・有明ビッグサイトで行なわれた自動車関連企業向けの展示会「オートモーティブワールド」で、この注目の技術に触れることができた。
これは英国ブリストル大学発のベンチャー、ウルトラリープ社が開発したもので、いくつもの超音波発生器から超音波を発生させて、カメラで手の形や位置を認識して操作に対する反応を手応えとして実現する技術。
超音波自体は、そのままでは聞こえないし感じないものだが、波形の位相を調整することで音波の干渉を生み出し、一定の部分に手で感じるほどの強い音波を作り出すのだ。
筆者も試させてもらったのだが、通常コマンダーを操作してナビやオーディオなどを操作するものを、完全に空中でのハンドサインだけで実現しているだけでなく、操作する手に反応が伝わってきた。
断続的に風を当てているように、まるで空気圧を利用しているかのような感触。手に何かが当たっていると思わせてくれる。
オーディオの音量を調節する場合、掌を下に向けて上下するのだが、手を上に上げて遠ざけるほど音量が大きくなるため、掌に当たる感触も強くなる。空気圧を利用していれば、遠ざかるほど弱くなってしまうため制御は難しいが、超音波の場合は重なり合うポイントを移動させるのと音波の強さは別々にコントロールできるのだろう。
この空中ハプティクス、開発キットはすでに発売されていて、自動車メーカーと採用についての交渉も始まっているらしい。数年後にはジェスチャーコントロールの補完技術として実車に搭載されることになるだろう。
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