コロナ禍時代 触れずに操作できるクルマのジェスチャー機能はどこまで進む?

ジェスチャーコントロールの精度を高める新技術が登場

 最近ではスイッチを直接操作する必要さえなくそうという装備まで登場している。それがジェスチャーコントロールという技術で、文字通りジェスチャー(身振り手振り)で、操作を実現するものだ。

スマートキーを携帯していればリアバンパーの下に足を出し入れするだけで、バックドアが自動開閉(開閉速度も向上)。両手が荷物で塞がっている時などに便利。またバックドア下端部にあるスイッチで操作も可能。停止位置の記憶、自動クローズ中の予約ロックも行える
スマートキーを携帯していればリアバンパーの下に足を出し入れするだけで、バックドアが自動開閉(開閉速度も向上)。両手が荷物で塞がっている時などに便利。またバックドア下端部にあるスイッチで操作も可能。停止位置の記憶、自動クローズ中の予約ロックも行える

 いまや欠かせないものとなっているのは、トランクを足で開けられるハンズフリー機能だろう。

 両手が荷物で塞がっていてもトランクを開けられるもので、リアバンパーの下に足先を入れ、横に動かすことで実現。その後、作動の正確性を高めるためもあってバンパーをキックする(こうなるとジェスチャーではないが)仕様も登場している。

 2020年11月にマイナーチェンジされたホンダオデッセイでは、リアゲートだけでなくスライドドアにもハンドアクションのジェスチャーコントロールが採用され、手をかざすだけでパワースライドドアが開く。

2020年11月のマイナーチェンジを経て、より精悍な顔つきへと生まれ変わった新型オデッセイ
2020年11月のマイナーチェンジを経て、より精悍な顔つきへと生まれ変わった新型オデッセイ
オデッセイのジェスチャーコントロール・パワースライドドア。パワースライドドアのセンサーが光っている時にジェスチャー操作を行うと、車両に触れずにスライドドアの開閉が可能
オデッセイのジェスチャーコントロール・パワースライドドア。パワースライドドアのセンサーが光っている時にジェスチャー操作を行うと、車両に触れずにスライドドアの開閉が可能

 インテリアにもジェスチャーコントロールの導入が進んでいる。メルセデスベンツやBMW、VWはオーディオや空調、モニターをジェスチャーで操作できる装備の導入を積極的に進めている。これによりスイッチやタッチパネル、サンルーフに手を伸ばさなくてもハンドサインだけで操作が完了するのだ。

2020年9月2日、新型メルセデスベンツSクラスが本国で発表された。対話型インフォテインメントシステム「MBUX」は第2世代に進化した
2020年9月2日、新型メルセデスベンツSクラスが本国で発表された。対話型インフォテインメントシステム「MBUX」は第2世代に進化した
新型SクラスのMBUXジェスチャーコントロール。自然な手の動きも認識され、ドライバーや乗員は電動スライド式サンルーフを非接触で開くことができる。人差し指と中指をV字型に広げるジェスチャーによって優先機能にアクセスできる
新型SクラスのMBUXジェスチャーコントロール。自然な手の動きも認識され、ドライバーや乗員は電動スライド式サンルーフを非接触で開くことができる。人差し指と中指をV字型に広げるジェスチャーによって優先機能にアクセスできる

 これはもちろん便利ではあるが、ジェスチャーコントロールは操作に個人差もあるせいか、認識能力にも限界があり、オーナーからは使いにくいという声もよく聞く。それは走行中にブラインド操作しやすくするためのデバイスながらクルマとの対話が成り立っているか、分かりにくいからだ。

 手応えがない自分の操作がクルマに認識されているのか、どの程度の調節をしているのか、音声で知らせてくれるのと、操作が反映されているのが後から確認できるのが頼りなのだ。

ルーフ上に設置された3Dカメラで手の動きを認識する(BMW)
ルーフ上に設置された3Dカメラで手の動きを認識する(BMW)
人差し指で右に回すと音量が上がり、左に回すと下がる(BMW)
人差し指で右に回すと音量が上がり、左に回すと下がる(BMW)

ジェスチャーコントロールの問題点を解決してくれそうな技術とは

コーンズテクノロジーが展示していた空中ハプティクスの開発用キットのデモ機。PC上でクルマの純正モニターのシステムを再現して、ナビやオーディオ、空調などをコントロールできるようにしている
コーンズテクノロジーが展示していた空中ハプティクスの開発用キットのデモ機。PC上でクルマの純正モニターのシステムを再現して、ナビやオーディオ、空調などをコントロールできるようにしている
オーディオモードでは、カメラの前に手をかざして掌を上下させると音量が調整できて、掌では超音波発生装置が作り出した音波の圧力が変化するのを感じ取れる
オーディオモードでは、カメラの前に手をかざして掌を上下させると音量が調整できて、掌では超音波発生装置が作り出した音波の圧力が変化するのを感じ取れる

 そんなジェスチャーコントロールの問題点を解決してくれそうな技術が開発されている。それは空中ハプティクス、超音波を使って空中で手応えを感じさせる、画期的な技術だ。

 2021年1月20~21日、東京・有明ビッグサイトで行なわれた自動車関連企業向けの展示会「オートモーティブワールド」で、この注目の技術に触れることができた。

 これは英国ブリストル大学発のベンチャー、ウルトラリープ社が開発したもので、いくつもの超音波発生器から超音波を発生させて、カメラで手の形や位置を認識して操作に対する反応を手応えとして実現する技術。

 超音波自体は、そのままでは聞こえないし感じないものだが、波形の位相を調整することで音波の干渉を生み出し、一定の部分に手で感じるほどの強い音波を作り出すのだ。

 筆者も試させてもらったのだが、通常コマンダーを操作してナビやオーディオなどを操作するものを、完全に空中でのハンドサインだけで実現しているだけでなく、操作する手に反応が伝わってきた。

 断続的に風を当てているように、まるで空気圧を利用しているかのような感触。手に何かが当たっていると思わせてくれる。

 オーディオの音量を調節する場合、掌を下に向けて上下するのだが、手を上に上げて遠ざけるほど音量が大きくなるため、掌に当たる感触も強くなる。空気圧を利用していれば、遠ざかるほど弱くなってしまうため制御は難しいが、超音波の場合は重なり合うポイントを移動させるのと音波の強さは別々にコントロールできるのだろう。

 この空中ハプティクス、開発キットはすでに発売されていて、自動車メーカーと採用についての交渉も始まっているらしい。数年後にはジェスチャーコントロールの補完技術として実車に搭載されることになるだろう。

次ページは : 室内の複数の乗員の声を聞き分ける技術もある

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