零戦や隼の仇敵「双胴の悪魔」と呼ばれた「P-38ライトニング」【名車の起源に名機あり】 

P-38パイロット・リアル・インタビュー

グラマラスでキュッした双胴の戦闘機「P-38ライトニング」
宿敵のライバルである零戦とP-38ライトニングの空撮風景

 筆者たちが空撮を行う場合、フライト時間は約30分。その前後の始動準備やタキシングなどがあるので1時間でワンセット。そうした行程を数セット行う。

 被写体となる機体各部には10台以上のゴープロを装着し、時にはパイロットの胸元や額にも付けていただくことがある。被写体となる機体とタンデムフライトするカメラプレーンとして、この時はボナンザをチャーターした。扉を外したボナンザの狭い後部にムービーとスチールのカメラマンが2名乗り込み、地上からもムービーを回す、という塩梅だ。 

 太平洋戦線にP-38が登場した当時、低高度における格闘戦においては零戦のほうが優位性が高く、零戦パイロットたちとっては容易に撃墜できたことからP-38を「ペロハチ」と呼称した。

 しかし米軍がP-38に改良を施し、急降下性能を活かした一撃離脱戦法に転換してからは、零戦に対して互角以上の戦いぶりを発揮したと言われている。

 そんなP-38を、我々の空撮撮影で操縦してくれたのはブレント・コナー氏。彼は同館が保有する隼やカタリナなど、多種多様な機体を飛ばせる超ベテラン・パイロットであり、本職はタンカー(空中消火機)パイロット。そんな「利き舵」を得意とする彼に、P-38の印象を伺った。

 「そもそもP-38は高高度戦闘機ですから、当然、高高度での性能は素晴らしいですが、低高度での性能も非常に高いと思います。旋回性能も抜群に良いですよ。ダイブ(急降下)した時の特性も優れています。同時期に造られた他のほとんどの戦闘機より高速で、しかも高く飛べますね」

 この前日には、零戦二二型(他施設の保有機)とのタンデムフライトも撮影していたのだが、「P-38は零戦よりもずっと高速で飛べますね。上昇能力も高いように思えました。でも零戦の旋回性能はとても優れています。もしP-38と零戦が空中戦をしたら、機速と高度獲得という点で零戦は不利になると思いますが、その旋回性を活かせばP-38を追撃できると思います。どちらが勝るかはパイロットの腕次第でしょう。どちらも優れた戦闘機ですね」

 「それよりも零戦に対して感じたのは、その優美さです。一緒に飛んでいると零戦の、滑らかな制御(control)と華麗な外形(gorgeous lines)が見事に調和していることが感じられます。それは機体の造形だけでなく、機体の動きにも表れています」

 「こうした撮影に参加できて、インプレッションが語れるのも、この博物館の整備が万全なためです。そのお陰でこのP-38Lも、今もフライアブルな状態を保てていますね」

ロッキード社とアリソン社

 P-38の開発当時、たった二人しか主任設計士がいなかったロッキード社は、1993年にジェネラル・ダイナミクスの航空宇宙事業部を買収し、1995年にはマーチン・マリエッタ社との合併を果たし、現在はロッキード・マーティン社として世界有数の大企業となった。

 一方、アリソン・エンジン社は、P-38にV-1710エンジンを供給していたころはゼネラルモーターズ社の傘下にあったが、戦後も同傘下のもとでジェネラル・エレクトリック(GE)のジェットエンジンの設計や、ヘリ用のターボシャフトエンジンなどの開発設計を担っていた。しかし1995年、ロールス・ロイス・ホールディングスに買収され、同社の子会社となった。

 ちなみに、ロッキード・マーティン社は現在、米空軍の戦闘機F-35を開発製造している。F-35のニックネームはご存じのとおり「ライトニングII」であり、第二のライトニングを意味している。

 そして、同機体が搭載する垂直離着陸用のリフトファン・システムは、ロールス・ロイス社製であり、つまりそこには、アリソンのDNAも継承されているのだ。

 戦後80年近く経った今もロッキードとアリソンは、同じライトニングという機体において、やはり同じ使命を果たしている。

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