【これぞ日本車のお家芸】安くてもスペシャルなクルマと技術 4選

トヨタiQの前後逆転トランスアクスル

 ベンツがスマート・フォーツーを発売したのは1998年のことだが、それに遅れること約10年、トヨタからもまったく同じコンセプトのマイクロカー「iQ」が登場する。

 当時はEUが施行するCO2排出量規制にどう対応するか各社が模索していた時期で、この種の超小型車がいずれ必要になると考えられていた。

 全長が50cmも短いスマートは、リアエンジンによる完全2シーターと割り切ったが、トヨタは3m×1.7m×1.5mというサイズの中に、大人3人+子供をなんとか詰め込むことに挑戦。そのために専用設計のFFパワートレーンを開発することになる。

iQは2008年10月にデビュー。人気はイマイチだったが、限定で6MTの追加、独自チューニングを施したGRMNなどトヨタは力を入れていた。価格は140万〜160万円

 エンジンは1L、3気筒と1.3L、4気筒、ミッションはCVT(と限定で6MT)というのがiQのパワートレーンだが、ユニークなのはその配置だ。

 通常はエンジンとミッションが直結配置され、その後ろ側にデフとドライブシャフトの取り出し口が配置されるが、iQはデフをエンジン前に出した逆転レイアウトを採用。

 行き場のなくなったステアリングラックはスカットル上部に配置され、ストラットのスプリング直下にタイロッドが連結されている。

 当時は、この究極の省スペースパワートレーンが次期ヴィッツ(ヤリス)に使われるのでは? という噂もあったが、結局コストの問題でそのアイディアはお蔵入り。

 やはり「全長3mのクルマに4人乗せる」といったトンがったテーマがないと、こういうユニークなメカニズムにはなかなかゴーサインが出ないらしい。

 結果、せっかく造ったiQのパワートレーンはこのクルマに使われただけでフェイドアウト。実にもったいない話でございます。

3mの短い全長ながら、大人3人+子供1人を収納するパッケージングを実現するため、iQにはここまでやるかというほどスペシャルなチャレンジが盛り込まれた

初代インサイトは燃費スペシャル

 1999年に発売された初代インサイトは、プリウスに次いで日本で2番目のハイブリッド車となったが、その開発コンセプトはプリウスとはかなり異なるものだった。

 プリウスは普通のファミリーカーの燃費を2倍に引き上げるのが目標だったから、とにかくパワートレーンの効率を高めることに集中。THSという画期的なハイブリッドシステムを発明することで、大きな技術的ブレークスルーを果たす。

 いっぽう、インサイトのほうは当時欧州で話題となっていた「3Lカー(3Lのガソリンで100km走れるクルマ)」一番乗りを目指した、いわばレコードブレーカー。

存在そのものがスペシャルな初代インサイト。ホンダの目論見どおり、現役当時は燃費世界一に君臨。走らせれば軽いクルマの楽しさを堪能できる。価格は210万〜218万円

 記録達成が絶対のテーマだから、アルミボディの2シータークーペという実用性度外視のパッケージや、専用の1L、3気筒エンジンを開発するなど、まさに勝つためなら手段を選ばぬ凝ったレイアウトを採用。

 その徹底ぶりはレース用ホモロゲ車両とまったく同じセンスで、いわば燃費レースに勝つために造られたクルマだった。

 ところが、こういう風に無茶をして造られているからこそ、初代インサイトは乗って面白い。

 後輪にスパッツを履いた空力ボディは、1960年代の軽量スポーツカーを彷彿させるカッコよさがあるし、800kg台の軽量ボディでフットワークも抜群に軽快。その乗り味はエコカーというよりまんまライトウェイトスポーツなのだ。

 採算を度外視して燃費世界一を目指したら、中途半端なスポーツカーより面白いクルマができちゃった。それが、初代インサイトだったといえる。

インサイトのスペシャルパワーユニットは70ps/9.4kgmの995cc、直3SOHC(ECA型)に10kW/5.0kgmのモーターを組み合わせたホンダ初のハイブリッド(スペックは5MT)

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