これまで日本にはたくさんのクルマが生まれては消えていった。そのなかには、「珍車」などと呼ばれ、現代でも面白おかしく語られているモデルもある。しかし、それらのクルマが試金石となったことで、数々の名車が生まれたと言っても過言ではない。
当連載では、これら「珍車」と呼ばれた伝説のクルマや技術などをピックアップし、その特徴を解説しつつ、日本の自動車文化を豊かにしてくれたことへの感謝と「愛」を語っていく。今回は、名車の派生モデルとして高く評価された、マーチカブリオレを取り上げる。
文/フォッケウルフ、写真/日産
■低価格でもオープンカーの楽しさが存分に味わえる
1995年10月に開催された第31回東京モーターショーに、K11型マーチをベースにしたオープンモデル「マーチカプリオレ」が出展された。
参考出品とあってショーモデルの域を出ていなかったが、小型で4名乗車ができるおしゃれな雰囲気を演出したオープンカーに対する反響は大きく、日産は2年後の1997年にユーザーの要望に応え発売する。
発売当時の価格は5速MTが169万8000円、CVT車が179万6000円という、マーチベースのモデルらしく気軽に付き合える価格設定としていた。現在、中古車市場では39.8万円~88万円ほどで流通している。
オープンカーとしては低価格のモデルだったが、ルーフは電動開閉式ソフトトップを採用したうえに装備類も充実していた。クリーンフィルター内蔵のオゾンセーフエアコンを装備し、ステアリングやシフトノブ、パーキングブレーキレバーといったドライバーが触れる部分は抗菌処理が施され、ウインドウは全面UVカットグリーンガラスを採用。
運転席・助手席SRSエアバッグシステム、ABS、前席ロードリミッター付プリテンショナーシートベルトを備えるなど、安全装備についてもベース車に対してグレードアップされていた。
オープンカーで懸念されるボディ剛性については、安全性を重視したゾーンボディコンセプトをベースに入念な強化が図られている。特に乗員を取り囲むキャビン周辺には補強材などを加えることで剛性の確保が図られた。
また、センター部には専用に開発したルーフレールを備え、さらにAピラーの強化や三角窓を装着。こうしたオープン化に伴うボディ強化は、マーチカブリオレの能力を高めるとともに専用の造形として個性を主張するポイントとなっている。
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