クルマも商品であるだけに、スポーツ選手やスポーツチームのようにたいていのクルマには競合車があり、切磋琢磨しながら進歩を続けるものである。
しかし、少数ながらライバルとなるクルマが存在しない、あるいはライバル車があるにしても、ライバル車があるのを忘れさせるくらい強い存在感を持つクルマというのもある。
当記事ではそんな日本車をピックアップし、そういったクルマたちがマーケットを独占できる理由やライバル車を圧倒できる理由を考察する。
文:永田恵一/写真:TOYOTA、NISSAN、MAZDA、MITSUBISHI、SUZUKI
トヨタクラウン

クラウンはライバルが輸入車に変わりつつある点も含め、日本車のラージセダンでは圧倒的な販売台数をキープしているモデルである。
その理由を考えてみると、クラウンは当時のアメリカ車を手本とした1955年登場の初代モデル以来、スピードレンジや駐車事情といった日本の道路環境を強く配慮したイージードライブな高級車というコンセプトを60年以上継承。
この点が日本人の心を打ち、名キャッチコピーである「いつかはクラウン」のように依然として日本人が買うクルマのゴールの1台として相応しい存在感を持つ。

また「保守的なクルマ」というイメージが強いクラウンであるが、イメージとは対照的に歴代挑戦を行ってきたクルマでもある。
振り返ってみると、失敗に終わったもののアヴァンギャルドなスタイルを採用した4代目、日本初のスーパーチャージャーを採用した6代目、マジェスタが日本初、世界的にも非常に早いタイミングでVSC(横滑り防止装置)を採用した10代目、直6エンジンからV6エンジン+新世代のプラットホームに移行し「ゼロクラウン」のキャッチコピーも記憶に残る12代目、そして日本専用車ながらドイツのニュルブルクリンクでのテストを行った現行15代目と、印象深いモデルが多い。
この2点がクラウンのブランドイメージを高め、結果的に日本車にはライバルがいないという圧倒的な強さを誇っているのではないだろうか。

トヨタアルファード&ヴェルファイア

2002年にかつてのグランビア/グランドハイエースの後継車として初代モデルが登場したアルファード(当時はアルファードのみ)は、1997年に高級ラージミニバンというジャンルを開拓したエルグランドのフォロワー(後追い)である。
フォロワーながらアルファード&ヴェルファイアがエルグランドや若干毛色が違うもののライバル車だったエリシオンや現行オデッセイを圧勝した理由を考えてみる。
■初代アルファードで同時期の2代目エルグランドの初期モデルが3.5L、V6のみだったのに対し、2.4L、直4も設定し、新車価格、維持費ともにリーズナブルだった(2代目エルグランドも後に2.5リッターV6を設定)
■FRだった2代目エルグランドに対し、初代アルファードはFFとしたことにより高い室内高や乗降性のよさを得た
■2004年登場のエリシオンに対しては、フロントマスクが大人しいエリシオンに対し、初代アルファードは押し出しの強さという、このクラスのミニバンに求めたいアドバンテージを持っていた。
■アルファード&ヴェルファイアは2015年に現行3代目にフルモデルチェンジされ、キープコンセプトながらさらに高級感を向上。売れているクルマだけに2017年末には世界トップクラスの性能を持つ新世代の自動ブレーキを装備するなどのビッグマイナーチェンジを行い、一層完成度を高めた
という過程からもわかるとおり進化を続けている。ユーザーが何を要求しているのかを鋭く察知して対応しているのが凄い。

今やアルファード&ヴェルファイアは日本車においてクラウンと双璧を成すほどの、ミニバンというジャンルを超えた高級車に成長。
ライバルであるはずのエルグランドはFF化した現行型攻勢をかけるつもりが自滅、その後は手を入れず放置したままで戦いを半ば放棄した状態だ。
オデッセイ、エリシオンに至ってははなからライバルではなかったのでは、と感じるほど歯が立たなかった。
コメント
コメントの使い方