好きになった人なら、アバタがあってもエクボのように良いように見えることから、他の人が見るとあまりいいとは思わないものでも、好きになったら、とことん良く思える、ということありますよね。
それはクルマにも同じことが当てはまるのではないでしょうか? 新車が登場した当初は大人気で、エクボばかりでアバタが見えなくなっている人が多いのではないでしょうか?
そこで、発売後1年経った人気車をピックアップし、1年経ったからこそわかる、冷静なエクボ(〇なところ)、アバタ(×なところ)を渡辺陽一郎氏が再評価!
文/渡辺陽一郎
写真/ベストカーWEB編集部
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スズキジムニー/2018年7月5日発売
さっそく、発売後1年経ったクルマのアバタとエクボを探していきたい。まずは納期約1年と言われるジムニーから。
■ジムニーのエクボ(○なところ)
ジムニーは軽自動車である以前に、日本の悪路に最適なオフロードSUVだ。耐久性の高いラダーフレームに、副変速機を備えた後輪駆動ベースの悪路向け4WDと、車軸式サスペンションを搭載する。
軽自動車だから、ボディはオフロードSUVの中でも最小サイズに収まる。そのためにジムニーは、狭く曲がりくねったデコボコの激しい日本の悪路や林道に最適だ。
初代ジムニーの発売は1970年だから、50年近くにわたり、日本の悪路に取り組んで商品力を高めてきた。
特に現行型の発売は2018年7月だから、悪路走破力を高める電子制御機能も豊富に備わる。
例えばブレーキLSDトラクションコントロールは、空転が生じたホイールだけにブレーキを作動させ、駆動力の伝達を確保する。
4速ATであれば、普通にアクセルペダルを踏むだけで、滑りやすくデコボコの激しい悪路も走破できる。やはり本格派四駆というところは、1年経っても揺るがないところだろう。
■ジムニーのアバタ(×なところ)
従来型に比べると運転しやすくなったが、それでも悪路向けの足まわりとリサキュレーティング・ボール式のステアリングシステムにより、前輪駆動ベースのシティ派SUVに比べるとクセが強い。普通の軽のような運転感覚ではない。
操舵感が鈍く峠道などでは曲がりにくく感じる。ステアリングホイールを内側に切り込むタイミングを若干早めると、滑らかに運転できる。
ホイールベース(前輪と後輪の間隔)は2250mmで、ワゴンRやスペーシアに比べると210mm短い。
そのために前後方向の揺れも拡大しやすい。ホイールベースが短いこともあって空間効率は低く、後席と荷室も狭い。居住性と積載性は、実質的に3ドアクーペだ。
4WDがパートタイム式だから、他車の4WDと違って、カーブを曲がる時に前後輪の回転数を調節できない。
したがって4WDはスリップが発生する悪路だけで使い、舗装路は後輪駆動の2WDで走らねばならない。
このジムニー独特の運転感覚が見方によっては個性に感じるし、逆にそれがアバタにもなりうるのだ。
デビューしたての頃は浮かれて、ジムニーを運転できることに喜びを感じたが、1年経って冷静に見ると、いい意味でも悪い意味でもこの運転感覚が自分に合うかどうか自問自答する必要があるのではないか。
また、販売店によると、今でも生産が追い付かないほどの注文が入っていて、契約から納車までの期間は約1年に達していること。
発売1年が経ってこの状況では仕方ないというより、ユーザーのことを考えていないと言わざるを得ない。早急に生産台数をもっと増やすべきだろう。
■まとめ/1年経った再評価
後輪駆動をベースにした軽自動車とあって車内は狭いが、適度な引き締まり感が伴い、ジムニーとの一体感を盛り上げる。バランスの良いボディスタイルも、後輪駆動ベースの4WDだから実現できた。
少しクセの強い運転感覚には、乗りこなす楽しさがある。そして悪路走破力は、日本で購入できるSUVのナンバー1だ。う~ん、ジムニーのエクボとアバタは表裏一体かと……。
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