■「人をどう動かすかが僕の仕事だから」
そんな近藤監督にとって、サーキットを離れざるを得なかった時間はさぞかし辛かったのでは?
「サーキットには来られなかったけど、工場には行ってたし、レースもオンライン的なことでずっと参加していたからね。いまウチのSFは調子が悪い。そういう時どのチームも同じだけど、なぜ調子が悪いのか、どこが悪いのか、下手すると誰が悪いのかとなってきちゃう。そこで僕がドライバーの愚痴を聞き、エンジニアの愚痴を聞く。人をどう動かすかが僕の仕事だから」。
荒天に翻弄された今回のオートポリス戦でもKONDO RACINGの2台はポイントに手が届かなかった。それでも、細いながらも、光明はみえつつあるという。
「SFのマシンは非常に難しいんだね。さっき山本尚貴選手と会って話を聞いたけど、『もう何やっていいかわかりません。全部いろいろ試したんだけど』って。うちも同じようなパターン。でも少しずつ良くなってきてる。うちはスイッチが入った時は強いよ。歯車がカチャン!とはまったら本当に強くなる」。
スーパーGTのほうはどうなのだろうか?
「スーパーGTは今季、GT-Rにとってちょっと厳しい環境になってるね。でもGT-Rは決勝になるとしぶとくて強い。そこがGT-Rの良さだと思う。あとドライバーふたりのコンビネーションが良い。JP(ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ選手)には猛獣使いみたいなことやってますよ(笑)。
JPは手綱を緩めるとワーっ! と行っちゃうけど、ギュッ! と締めるところを締めるとアイツのすごく良いところが活きてくる。家にいる間もスタート前にはアイツに電話して『わかってるな、オマエの役割はこうだぞ』っていうと、『ワカッテルヨ、コンドーサン! OK、ダイジョーブ、コンドーサン!』って(笑)。レース中でも本当に電話したいくらいの時もあるよ、ヒヤヒヤしてね(笑)」。
■半年ぶりの現場復帰で思うモータースポーツの立ち位置
そして、ようやく半年ぶりに近藤監督はサーキットの現場に立った。
「やっぱり現場はいい。こんなにレースが好きでね。オートポリスにこれだけお客さんがきてくれるのも、本当に有り難い。いま、コロナ禍でみんなモヤモヤしてるじゃない。なんか、ピーキーなところでレースができてないよね。お客さんもビシっと入ってくれてさ、ファンサービスもビシッとできて、それでもってレースもきちっとできる日はいつ来るのかなぁ」
KONDO RACINGからSFに参戦するはずのサッシャ・フェネストラズ選手もいまだに入国ビザが発給されず、このままでは今季を棒に振りかねない状況にある。
「オリンピックの選手も事情は同じでしょう。可哀想だよね。レースはドームの中でやるわけじゃないんだからとは思うんだけど、やっぱり、あの競技は良くてこの競技はダメという線引きが難しいんだろうね。
それに、今日もトムスの舘(信秀)さんと二人で話したんだけど、日本でモータースポーツをスポーツと思ってるのって、まだまだ俺たちだけだよなって。ドライバーがやってるトレーニングとか本当にすごいことやってるわけですよ。そこだけをみても、スポーツ選手として、スポーツの大会として、モータースポーツをしっかり認めてもらいたいよね」。
サーキットに来られなかった間、他のチーム監督からの連絡も近藤監督を力づけた。
「いろんな監督からしょっちゅう電話がきて『もういいから来ちゃいなよ』『早く来いよ』って言ってもらって。その時はもう少し待ってくださいとしか言えなかったけど……、ね。
それにしても、こうして20年もね、トップカテゴリーで仕事できてるってことが幸せ。世界情勢やなにかで経済的に難しい時もあったし、簡単なじゃなかった。でも、それも乗り越えてきてるから。こうやってレースができるってのはね、もう……」。
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