■グランプリから去るホンダと他チームの思惑
それでもホンダのF1撤退の意思は強く、多くの意見のある中で撤退が覆る事は無く、ホンダ最後のシーズンは終ってしまった。F1からホンダの存在が消えてゆく。
多くの意見と言っても、これは日本で考えるのとは違った感覚のものだ。ホンダ撤退を残念がり、もったいないと考える者たちはF1部外者が多い。ファンやジャーナリズム、プレスやメディアが捉える意見であり、F1チーム自体の考え方とまた違うのだ。
F1の現場でホンダPUの撤退をもったいないと考えるのはおそらく次期PUの供給に不安がある小型チーム。それもパフォーマンスだけではなく、PU供給と供に付いてくるサービス。
ホンダがチームに費やすサービスの多くは他のメーカーよりも大幅にクオリティーが高く、信頼性の高いアファター・ケアーが得られ、とコスト・パフォーマンスは群を抜く。
ホンダのエンジン供給やレースへの態度は他メーカーとは大きく違い、予算も規模も小さなチームには垂涎のホンダからのPU供給なのだ。
しかし全てのカスタマーチームは既にメルセデスやフェラーリ等からしっかりとしたサポート付きでの供給を受けている。多くのチームはそれらのワークスとの契約にPUの供給以外にもチーム運営に有利な契約が交わされている。
例えばBチーム的な立場でそのメーカー絡みのヤングドライバーの育成とか。シート利用とバーターでPUの支払いが安くなったり、無料になったり、時にはスポンサー・フィーの上乗せがあったりして。
弱小チームのPU選びの多くは実際のパフォーマンスよりも他の付加条件が大きく影響しているのも確かなのだ。
したがって中堅チームの意見としては自分のチームに有益ではないPUは例えパフォーマンスが高かろうと、消えてくれる事に異存はないのだ。
■形を変えて遺されるホンダの魂
しかしワークスチームはまた意見を異にする。
と言うのも現在4PUで10チームを賄う、つまり要求があれば3チームまでは供給義務があるのだ。供給はPUを渡せば済む事では無く、サービスとエンジニアのリソースの提供が必要で、かつ組立現場でも各チームに合った仕様の組立が必要で、この為のリソースの確保は絶対条件となり、人材的負担も大きくなる。
ホンダの撤退でエンジンメーカーが少なくなると、義務供給は本来なら4チームに増えてしまう。他のワークスには痛手となるので、ホンダの撤退は回避したいと言うのが本音だ。
しかし、いざホンダ最終戦を迎えても、ホンダ撤退に対しての声高な意見はきこえて来なかった。コンプリメントは多数あったが、あくまでも挨拶代わりのようなものだ。
なぜなら、ホンダは見かけ上の撤退はするが、そのままレッドブル・パワートレインズに移行し、現在のホンダ PUが25年までは維持されパフォーマンスも変らずに行けるのだから期待は大きいのだ。
以前メルセデスのトト・ウルフはホンダPUのレッドブル・パワートレインズへの移行を歓迎するコメントをしている。実際メルセデスはワークスを含めて業界最大4チーム供給をしているのだから、PUサプライヤーがホンダであろうとレッドブルであろうと、存在してさえすれば負担が増える事はないのだから。
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