2021年9月、日産デザインヨーロッパが、初代シルビアをモチーフにしたEVスポーツカーのプランを公開した。
2002年に生産が終了したシルビアの復活については、ベストカーでも幾度となく報じてきた。古い記事だと2008年なんてものもでてくるが、結果は現在のところ空振りだ。グーグルで「シルビア 復活」と打てば「ガセ」「しない」など身も蓋もないサジェストがあとにつづく。
しかしながら今、日々加速度を増すEV化の流れのなかで「名車」と呼ばれたモデルを復活させるのにはそれなりの意味と理由がある。可能性は低いかもしれないが、何よりワクワクするし、楽しいじゃないか!
ブランド力強化のために日産が進める「EVシルビア計画」を探った!
※本稿は2021年1月のものです
文・予想CG/ベストカー編集部、写真/ベストカー編集部
初出:『ベストカー』2021年2月10日号
■伝説のクーペがEV時代に甦る!
トヨタが2030年までにグローバルで350万台のEVを販売すると発表し、EVでも世界をリードする強い決意を示した。
巨人トヨタが動けば空気が変わる。将来EVが主力になることは認識しながらも、どことなく「まだ先の話」の感覚があった日本だが、今後EVのラインナップが急速に増えていくことを予感した人は多いのではないだろうか。
ところで、この記事の編集担当が不思議に思っていることがひとつある。エンジン車でのスポーツカーは「過去のもの扱い」されているのに対し、EVになると急に「次世代を象徴するもの扱い」になることだ。
昨年12月にトヨタが大々的に公開した「市販前提EV」でもトヨタ、レクサス両ブランドで2シーターと思われる本格スポーツカーが用意されていたし、ベースが同じとはいえポルシェはタイカン、アウディはeトロンGTが人気と注目を集めており、また、各社のコンセプトカーでも背の低いクーペタイプのEVが目立つ。
つまり、EV化によってクルマは一度リセットされるということなのかもしれない。
今市販されているEVにはSUVが多いが、それは従来のエンジン車からの延長線上のもので、ユーザー層もアーリーアダプターに限られている。この先、EVが支持と市民権を得るためには、今までになかった魅力的な商品を提供し、ユーザーの「欲しい」と思う気持ちを作り出す必要がある。
そのための戦略のひとつとしてスポーツカーのイメージ戦略が重要になるということ。エンジン車の黎明期がそうであったように、本格的なEV時代の幕を開けるには、若者受けするスタイリッシュなスポーツカーが必要なのである。
■EVの可能性を示す格好の素材
こんな話を続けてきたのには理由がある。昨年9月に、日産デザインヨーロッパが初代シルビアをモチーフにしたEVスポーツカーのプランを公開したからだ。
初代シルビアはドイツ人デザイナーのアルブレヒト・フォン・ゲルツ氏の助言を生かしてデザインされた美しいクルマで、1965年に登場し、わずか3年、554台の生産で終了した伝説のクーペだ。
クリスプカットと呼ばれるシンプルだが個性的なスタイルは、今なお「美しいクルマ」として挙げられることの多い名車である。
初代シルビアをEVで再生するプランが生まれた理由を欧州日産はこう説明している。
「初代シルビアは高品質で普遍的な魅力があるクルマで、再設計することで敬意を表したい。また、電動化が進むほどブランドの遺産が重要になるし、このクラシックなデザインはイノベーションを表現するのに最適なのです」
意図は明確。日産の歴史的名車を現代に蘇らせることで、EV時代になっても日産の歴史は連綿と続いていることを伝えたいということなのだ。
またエンジン、ラジエター、排気系パーツが不要でデザインの自由度が上がるEVで初代シルビアを再設計することは、EVの可能性を形で示す格好の素材になるとも言える。
実際、プランで示されたデザイン案は、よりシンプルになった前後の意匠によって現代的な美しさを表現しているほか、エンジン車とは異なるパッケージで、見た目以上に室内空間も広いと説明されている。
コメント
コメントの使い方