キャパシタケースの揺動による悪影響を解消しポジションアップ
ハイブリッドシステムを搭載したHINO600シリーズで初めてのダカールを戦う日野チームは当初、日本国内のテストでは確認されなかったキャパシタケースの揺動が車体の操縦安定性に悪影響を及ぼすトラブルに見舞われて低迷したが、揺動を抑える対策を講じてからは順調にペースアップ。
4日の競技から3ステージ連続で総合12位のSS順位を記録し、累積順位は総合17位に浮上した。後半戦に向けては各部のファインチューニングを施し、さらなる上位をめざす。
日野チームのメンバーのコメント
菅原照仁
しっかりとしたペースで走れるようになってきたので、後半戦では引き続き煮詰めを行ない、車両の完成度を高めたいと思います。コースはさらにむずかしい砂丘が出てくると予想。ナビゲーションもいっそうむずかしくなりそうです。
望月裕司
車両はしっかりリフレッシュできました。ハイブリッドシステムはアクセルオフの状態でエネルギー回生、すなわち発電を行ないますが、その状態で発電量を増やすべく、発電に必要なトルクを発生するだけの燃料を噴射する制御を明日は試します。
目的は発電量を増やすことよりも、アクセルオフ時に燃焼が続くことでターボチャージャーの回転が下がりにくくすることにあります。再加速時の速やかな過給圧の上昇を促し、いわゆるターボラグの解消効果を期待しています。車両の状態が良くなってきたので、こうしたことも試すことができます。
染宮弘和
長い時間を掛けて車両を良い状態に保ってくれるメカニックさんたちに感謝の気持ちです。明日からの後半戦は厳しいステージが続きそうなので、気を付けて頑張ります。
鈴木誠一
中間日の作業内容としてはこれまでと変わりませんが、トランスファーの交換があったので時間が掛かりました。ギアボックスとハイブリッドモーターの双方から入力を受けるトランスファーには大きな負荷が掛かります。
このほかフローティングマウントされているキャパシタケースは、より動きが小さくなるよう仕様を変更しました。
【従軍記者・多賀まりおの「ダカール2022」短信】
ベテラン従軍記者の裏話 ダカールラリー今昔物語
サウジアラビアの砂漠の雰囲気は北アフリカによく似ています。砂丘のカタチは地域によって異なりますが、岩山の連なり、枯れ川の底、植物が点々と茂る砂地の丘陵などモーリタニアかリビアを彷彿とさせる場所が少なくありません。
そんな地域に設営されるビバーク地の雰囲気もアフリカ風ですが、2007年までアフリカで開催されていた頃との大きな違いはロジスティクスがトラック中心であることでしょうか。
かつてアフリカでダカールが開催されていた地域は道路の整備が進んでおらず、地方の飛行場をビバーク地として航空機で主要な機材と人員を運んでいました。このため運べる量は限られ、供給される食事も1991年まではトラックの上でボイルされた缶詰とパンというシンプルなものでした。
ところが南米では舗装された道路網が完備しているため、ビバーク地の物流はトラックに変わりました。これで大量の機材が運べるようになると同時にビバークが飛行場である必然性がなくなり、トラックさえ行ければどこにでも設営できるようになったのです。
基本的にビバークの敷地外は舗装路なのでトラックも一般的な4×2や6×4のセミトラクタとトレーラで大丈夫。さすがにスタックしている姿をよく見かけますが、前輪駆動のバンをベースにしたキャンピングカーを持ち込むチームもあります。
アフリカ時代はC130輸送機の中で行なっていた国際映像の編集作業は拡幅式ボディを架装したセミトレーラに代わり、大会本部も輸送機からトレーラのコンテナに……。
大型の発動機式発電機があるのでサウジに来てからはメディアセンターにエアコンが備わり、サウジにきてからはトイレは水洗式、シャワーも毎日入れるようになりました。
そういえば人員を運ぶ飛行機も空挺部隊用の軍用機からチャーターの旅客機に……。小型輸送機のショートSC7スカイバンや旧世代のアントノフ、なぜか空中給油機に乗せられたこともある昔に比べると風情がなくなったのも事実ですが、文明を経験してしまうとなかなか元には戻れないような気がします。
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