日本の中型後輪駆動の4ドアセダンに陰りが見える。一般社団法人日本自動車販売協会連合会の乗用車ブランド通称名別順位による集計によれば、昨2019年の1年間(1~12月)の統計においても、また2019年4月から2020年3月までの2019年度での統計においても、販売台数のベスト50に入る後輪駆動の4ドアセダンは、トヨタクラウンだけだ。
前輪駆動の中型4ドアセダンを加えても、トヨタカムリと、レクサスESが顔を見せるのみである。
いっぽう、輸入車では、メルセデスベンツもBMWも、後輪駆動の4ドアセダンはメーカーの中核のひとつであることに変化はない。
世界的にSUV(スポーツ多目的車)人気であるのはもちろんだ。しかしなぜ、日本の中型後輪駆動の4ドアセダンが壊滅的になってしまったのだろう。
文:御堀直嗣/写真:TOYOTA、LEXUS、NISSAN
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メーカーの思惑とユーザーのニーズが乖離
大きくみれば、自動車メーカーの思惑に翻弄された結果といえる。メーカーの思惑とは、販売台数の増加による規模の拡大だ。
とはいえ、販売増はどの自動車メーカーも目指すところであり、特別なことではない。だが、そこで見落とせないのは、拡大路線と消費者の思いや志向との調和が不可欠だということである。その比重がメーカーの思惑に偏ってしまうと、消費者離れが起きる。
では販売増の陰で、メーカーのどのような思惑が強まったのだろうか。
ユーザーにとって意味の薄い車名変更
ひとつは、目先を変えようとした車名変更だ。もうひとつが、車体寸法の拡大である。
例えば、すでに販売を終えているトヨタマークIIの場合、2004年に36年の歴史を閉じ、マークXへ車名変更した。
そもそもマークIIは、当初はコロナマークIIと名乗り、コロナとクラウンの間を埋める4ドアセダンとして登場した。

トヨタの4ドアセダンとしては、カローラ、コロナ、クラウンがすでにあり、順に車格を高めていく買い方が形づくられていた。
だが、クラウンはトヨタの最上級車種であり、すぐには手が出ない消費者にとって、カローラやコロナにはない少し上の贅沢を味わえる喜びをマークIIはもたらした。
のちの広告宣伝、「いつかはクラウン」につながるカローラからの上昇志向は、単に車格の上下を示すだけでなく、人の成長にあわせて活動範囲や家族のありかた、あるいは成功の証など人生を象徴する役目も担っていた。
1991年からクラウンがすべて3ナンバー車となり、車体寸法が大きくなったのに対し、5ナンバーで上級車感覚を味わえるマークIIの存在意義があった。
マークIIも1992年にはすべて3ナンバー車となるのだが、クラウンより若干小さ目というところに、自宅車庫に収め、乗降する際にもなんとかなる位置づけだったといえるだろう。
そうしたマークIIを永年愛好してきた所有者、英語でいえばロイヤルカスタマーにとって、なぜマークXなのか? メーカーは目先を変えたかったのかもしれないが、買う立場とすれば車名変更の意味は薄いだろう。

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