中古の価格差1000万円? スポーツカーはやはりMTじゃないとダメなのか?

■フェラーリF355ベルリネッタ/MTとATの価格差は驚きの1000万円超え!

1994年から1999年まで販売されたフェラーリF355。3495ccV型8気筒DOHC(5バルブ)エンジンを搭載。最高出力は380ps/8200rpm、最大トルクは36.7kgm/5800rpm
1994年から1999年まで販売されたフェラーリF355。3495ccV型8気筒DOHC(5バルブ)エンジンを搭載。最高出力は380ps/8200rpm、最大トルクは36.7kgm/5800rpm
フェラーリF355のF1マチック。当初は6速MTのみの設定だったが、1997年に2ペダルのセミオートマチックのF1マチックが設定されている
フェラーリF355のF1マチック。当初は6速MTのみの設定だったが、1997年に2ペダルのセミオートマチックのF1マチックが設定されている

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 1994年のデビューから四半世紀以上が過ぎているのに、みんな大好きF355。自然吸気V8の突き抜けるエンジンサウンド、ピニンファリーナデザインの美しく均整の取れたスタイリングが、今でも多くの人を魅了する。

 それまでとは異なる、「誰でも乗れるフェラーリ」というコンセプトでリリースされたF355には、パワーステアリングが装着され、1997年にはいわゆるセミATであるF1マチック仕様が追加された。それにより2ペダル・パドルシフトでイージードライビングが可能となった。

 MTもF1マチックも6速で排気量は3495cc、最高出力380ps/8200rpmは変わらず。新車価格は当時1550万円と1680万円で、130万円の差がついていた。

 このF1マチックについてはベストカーwebでも何度も取り上げられているので多くをここでは語らないが、ひと言でいうと「壊れたら直すのが非常に困難」。

 トルコンでもなく、DCTでもなく、「電動・油圧でMT操作を自動化した」F1マチックは、クラッチの摩耗も早く、ポンプやモーターの故障も起き、そして制御の要であるECUはすでに生産中止。したがって壊れると不動車になるリスクがあるのだ。

 そのリスクは、走行距離の多いクルマの価格にはっきりと表れている。

 XRシャーシ搭載のいわゆる後期型と呼ばれる1996年式で、走行距離7万キロ近辺、外装色は定番のロッソコルサの修復歴なしのディーラー車、違いはMTとF1マチックだけという2台が「価格応談」としてウェブに掲載されていた。

 まずMTを販売しているショップに電話してみると、「車両本体価格で1800万円、タイミングベルトの交換をして車検を取ると追加で200万円ぐらいかかる」とのこと。乗り出しで2000万円近辺ということだ。「今売らなくても3年後には2500万円ぐらいになっているはずなので」と、売り惜しみトークまでされてしまった。

 次にF1マチックを販売しているショップに聞いてみると、「車両本体価格で980万円、タイミングベルト交換は6年前に行っていて、その後の走行が少なく、F1マチックは全く問題ない」と断言された。MTと比べて800万円以上安い。

 クルマの出どころを聞き忘れたので3分後に改めて電話してみると、「実は…」といきなりのぶっちゃけトーク。「2日後のオークションに出す予定でいるから、今決めてくれるのなら850万円で売ってあげますよ」とささやかれた。何の交渉もしていないのに、一気にMTとの価格差が1150万円に。闇が深い……(笑)。

 もちろん状態のいいF1マチック搭載車は当然トラブルのリスクも低く、すべてのF1マチック車のリスクが高いというつもりは全くないが、F355のMT車が高騰する理由の一つが理解できた。

■ポルシェ911カレラ2(タイプ964)/MTとATの価格差は250万円プラスマイナス数十万

1992年式ポルシェ911カレラ2。エアロタイプミラーとカップデザインホイールが特徴。十数年前ならティプトロなら日本国内で300万円台後半から買えたが、欧州の空冷ポルシェブームで国内の在庫が減り相場が高騰した
1992年式ポルシェ911カレラ2。エアロタイプミラーとカップデザインホイールが特徴。十数年前ならティプトロなら日本国内で300万円台後半から買えたが、欧州の空冷ポルシェブームで国内の在庫が減り相場が高騰した
1989年に4WDの964カレラ4、1990年にRRの964カレラ2がデビュー。エンジンは250ps/31.6kgmの3.6Lフラット6。クーペのボディサイズは全長4245×全幅1660×全高1310㎜、車重は1350~1450kg
1989年に4WDの964カレラ4、1990年にRRの964カレラ2がデビュー。エンジンは250ps/31.6kgmの3.6Lフラット6。クーペのボディサイズは全長4245×全幅1660×全高1310㎜、車重は1350~1450kg

ポルシェ964型911カレラ2の中古車情報はこちら!

 1989年デビューのポルシェ964。デビュー時はフルタイム4WDのカレラ4のみ、1990年から本命のカレラ2が販売となり、1993年に販売終了。

 930に見た目はよく似ていたが中身は全くの別物で、モノコックボディ、パワステが採用され、効かないことで有名だったエアコンもちゃんと効き、乗り心地も快適に。

 そしてカレラ2の登場と同時に、ポルシェがティプトロニックと呼ぶ4速ATもデビュー。時代はバブル花盛りの頃で、カレラ2の販売の7割がティプロトロニックだったともいわれ、AT投入によりポルシェは新たな顧客を獲得した。

 当時の新車販売価格はカレラ2のMTが1035万円、ティプトロニックが1135万円だった。

 現在ポルシェ964のMT車は、空冷911のなかでも最も高騰しており、今年に入ってから300万円以上も値上がりしている印象を受ける。

 さっそく、カレラ2のMTから見ていこう。カレラ2の1990年式、走行距離8万キロで1280万円、同じくカレラ2の1990年式、走行距離8.3万キロで1080万円。1991年式カレラ2、8万キロが1278万円、エアロタイプミラーやカップデザインホイールなどが装着された1992年式、12.2万キロのカレラ2のRS仕様が1238万円。

 964カレラ2のMTは走行距離、色によっても違うが中古車相場は1000万~1300万円といったイメージ。

 964カレラ2ティプトロに関しても、暴騰するMTに引きずられた格好で高騰している。タマ数もMTに比べると多く、10台以上見ることができる。

 1991年式カレラ2ティプトロニックは、10万キロ、858万円が程度のいいものの底値で、1991年式、5万キロが980万円、1991年式、6.2万キロが948万円。

 1992年式カレラ2ティプトロニックは、8.1万キロが880万円、18.9万キロが900万円、6.6万キロが1058万円。最終年式の1993年式は4.7万キロが968万円、9万キロが1120万円。

 走行距離や程度の違いによって大きな変動があるが、964カレラ2ティプトロニックは800万~1100万円といったところ。

 MTとティプトロニックの価格差が分かる実例がなかなか見つからないが、複数のショップでヒアリングすると、その差はおよそ250万円プラスマイナス数十万ぐらいとのこと。

 一時はMT車の人気が強かったが、他の輸入スポーツカーの旧車と比べ、ポルシェのティプトロニックは信頼性が高いので、そこまで大きな差がつく状況にはなっておらず、MT車が見つからないのでAT車の値段も上がる、つまり964そのものが全体的に値上がりする状況のようだ。

 ちなみに四駆の964カレラ4はMTしかないが、1990年式では、9.9万キロが938万円、7.1万キロが980万円とカレラ2ほどは高くなっていない。

 そのほか、911SCが700万円オーバー、1988、1989年のカレラ3.2は軒並み1000万円オーバー。993カレラのMTも1000万~1100万円ほど、993カレラSのMTが1500万円、993カレラ4S(MTのみ)が1650万円、993ターボ(MTのみ)が2800万円オーバーと930や993の空冷モデルも異常なほど高騰している。

 日産の新型Zのアメリカでの発表会で、聴衆から一番大きな歓声が上がったのは、グプタCOOが「今回はマニュアルミッション車をご用意しました」とアナウンスした時だった。「時代はEV」なのかもしれないが、やはりスリーペダルのMT(アメリカではスティックシフトと呼ぶ)でなければ、と思う人が予想外に多いことがわかった。

 MTでクルマを自由自在に操ることの楽しみを覚えている人間にとっては、趣味のクルマならMTで、と考える気持ちはとても強く理解できる。

 ここまで読んでいただいたら、MT車は現在非常に高く評価されていることがお分かりになったと思う。今MTのスポーツカーに乗っている方は、大切に乗られることをお勧めしたい。

【画像ギャラリー】格好良い中古スポーツカー5選(FD3S、初代NSX、80スープラ、フェラーリF355とポルシェ964)を写真でチェック!!

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