ついにWRC、ラリージャパンの日本開催が決まった。開催日時は、2020年11月19~22日、愛知県内&岐阜県内にて開催される。
ラリージャパン開催ということで、ランエボやインプレッサWRX STI、セリカGT-FOURといった、昔懐かしい往年のWRCベース車両たちを思い出した人も多いことだろう。
これをきっかけにしてWRCベース車両が欲しいと思った人もいるハズ。思い立ったら吉日、ということで、往年のWRCベース車は、今いくらで買えるのか、中古車相場を徹底調査した。
文/伊達軍曹
写真/ベストカー編集部
■Rally Japan開催概要 ( 2019年10月10日現在)
・開催日時 2020年11月19〜22日(予定)
・大会名称 Rally Japan
・開催エリア 愛知県内(名古屋市・岡崎市・豊田市・新城市・長久手市・設楽町)および岐阜県内(中津川市・恵那市)の公道
・メイン会場 愛・地球博記念公園(長久手市:通称モリコロパーク)
ランサーエボリューションV
■中古車相場:80万~200万円
■1998年1月発売 総生産台数7617台
■2L、直4ターボ:280ps/38.0kgm

「全盛期のWRC」というフレーズで思い出される国産車はインプレッサ/ランエボ/セリカGT-Fourなわけだが、まずは三菱のランエボから紹介していきたい。
1998年シーズン途中からWRCに投入されたランサーエボリューションVは、市販車に比較的近い「グループA」規定の車両でありながら、改造範囲がかなり広いWRカーたちを向こうに回して計4戦で優勝。
三菱としては初となるマニュファクチャラーズタイトルを獲得するとともに、エースドライバーだったトミ・マキネンはドライバーズタイトルを獲得した。
そんなランエボVの市販バージョンは全幅1770 mmのワイドボディを初採用し、前身であるランエボIVより2kgm大きい38.0kgmの最大トルクをマーク。
現在の中古車相場は、走行距離が延びている個体は80万~150万円といったところだが、距離少なめなモノだと200万円前後。ミントコンディションな(超程度がいい)物件は400万円近くの値札が付くことも。
ランサーエボリューションVI
■中古車相場/80万~250万円
■1999年1月発売 総生産台数7594台
■2L、直4ターボ:280ps/38.0kgm


ランサーエボリューションVIのワークスマシンは翌1999年シーズンの第1戦「ラリー・モンテカルロ」からWRCにフル参戦し、その年は計5戦で優勝。
トミ・マキネンは前年に続いて見事ドライバーズタイトルを獲得したが、マニュファクチャラーズタイトルは惜しくもトヨタが獲得するに至った。
で、1999年1月に発売されたランエボVIの市販バージョンはエンジンのパワー&トルクこそエボVと同じだが、冷却系の改善により耐久性が向上し、競技用グレードである「RS」にはチタンアルミ合金製タービンが採用された。
またナンバープレートの位置を中央から左側に変更されたことや、リアウイングが2段化されたことなどもランエボVIの特徴となる。
現在の中古車相場は「ランエボVよりちょい高いぐらい」というニュアンスで、距離が延びている個体は80万~160万円ぐらい、走行距離が比較的短めの個体は170万~250万円あたりが目安となる。
ランサーエボリューションVI トミー・マキネンエディション
■中古車相場:240万~350万円
■2000年1月発売 総生産台数2911台
■2L、直4ターボ:280ps/38.0kgm


当時の三菱のワークスドライバー、トミ・マキネン選手が4年連続ドライバーズタイトルを獲得したことを記念して作られた特別仕様車で、カーマニアの間での通称は「ランエボ6.5」。
またマキネン選手の名前は日本では「トミ・マキネン」と表記されるのが一般的だが、特別仕様車の車名は音引き(棒)付きの「トミー・マキネンエディション」であった。
通常使用向けグレードのGSRは従来より10 mmダウンさせたターマック(舗装路)仕様サスペンションを採用し、ハイレスポンスチタンアルミ合金ターボチャージャーの採用により中低速トルクとレスポンスが大幅に向上した。
そのほかにもさまざまな点が改善されたトミー・マキネンエディションの中古車は今なお人気があるため、中古車相場も240万~350万円あたりと、ランエボVIより100万円は高い。
また通常のGSRでもきわめて走行距離が少ない個体や、WRCのワークスマシンをイメージした「スペシャルカラーリングパッケージ」装着車は、400万~500万円付近のプライスタグが付くこともめずらしくない。
インプレッサ 22B-STIバージョン
■中古車相場:1000万~1200万円
■1998年3月発売 総生産台数400台
■2L、直4ターボ:280ps/37.0kgm

続いては、WRCでも市販車の販売でもランエボと火花を散らしていたスバル インプレッサ。
歴代インプレッサのなかでも特に印象深いのがコレ、1998年3月に400台限定で発売された「インプレッサ 22B-STIバージョン」、通称22Bだ。
22Bは、WRCで3連覇を達成した「インプレッサ ワールドラリーカー1997」のイメージを忠実に再現したロードモデルで、E型クーペにWRカーをイメージした専用フェンダーやバンパー、リアウイングなどを架装。
ワイドフェンダー化に伴い全幅は1690mmから1770mmに拡大されている。またエンジンもSTIが22B用として専用チューン&ボアアップした2.2LのEJ22改が搭載された。
当時は自主規制があったため最高出力こそ280psだが、低中速トルクが大幅に改善されているのがEJ22改の特徴だ。
このようにスペシャル感たっぷりの22Bは新車発売時もわずか2日間で完売してしまったのだが、その中古車相場も今なおかなり高額。
流通台数はきわめて少ないが、たまに市場に出てくる個体はおおむね1000万円前後、またはそれ以上となるケースがほとんどだ。
インプレッサWRX STiバージョンIV
■中古車相場:80万~180万円
■1997年9月発売
■2L、フラット4ターボ:280ps/36.0kgm

一部改良を受けてSTiバージョンIVに進化。エンジンは最大トルクが36㎏mに達し、タイプRA STiのリアブレーキが15インチ対向2ポットになったほか、クーペのタイプR STiバージョンIVが新設定されたのがポイント
往年のWRCにおけるスバルワークスの息吹を今に感じたいのであれば、上記の22Bを探して買うのが一番ではある。
だがそのタマ数はきわめて少なく、あったとしても「1000万円級」の予算は普通に考えて無理なため、もしもGC8(初代インプ)が欲しいなら「STiバージョンIV」あたりを探すのが現実的だろう。
初代インプレッサWRXのSTiバージョンがカタログモデルに昇格したのはスバルがドライバーズ/マニュファクチャラーズのダブルタイトルを獲得した1995年から。
で、それがバージョンII、バージョンIIIへと進化していき、1997年9月に登場したのがバージョンIVだ。
EJ20エンジンは最大トルクが36.0kgmに達し、タイプRA STiのリアブレーキが15インチ対向2ポットになったほか、クーペにもタイプR STiバージョンIVが新設定された。
こちらの中古車相場は今となっては比較的お手頃で、セダンが約80万~130万円、クーペのタイプR STiバージョンIVで約150万~180万円付近というのが流通の中心。
ただし流通量は少なめであり、ほとんどの物件が走行10万kmを大きく超えてもいる。

インプレッサS202 STIバージョン
■中古車相場:180万円前後
■2002年6月 総生産台数限定400台
■2L、フラット4ターボ:320ps/39.2kgm

1992年に登場したGC8こと初代インプレッサもその役割を終え、2000年8月にはフルモデルチェンジで2代目(GD)へと移行。
そしてWRCのほうも、2代目インプレッサをベースとするワールドラリーカーで戦われるようになった。
この2代目インプレッサ(GD)はヘッドライトの形状が丸目→涙目→鷹目へと目まぐるしく変化するわけだが、2001年にリチャード・バーンズがドライバーズタイトルを獲得した際にドライブしていたのは丸目のWRカーだ。
その市販バージョンを狙う場合はWRCベース車両ではないが、400台限定のスペシャルモデル「S202 STIバージョン」を狙いたいところ。
これはtype RA spec CをベースにSTIがオンロード性能の向上を徹底追求したもので、吸気系の見直しと専用スポーツECUなのにより最高出力320psを実現している。
リアサスペンションにピロボールブッシュのラテラルリンク、トレーリングリンクを組み込み、リアサスの作動をリニアでシャープにした。
バネ下重量の軽量化にもこだわり、鍛造アルミホイールとアルマイト処理+スリット入りのブレーキディスクとした。2段階角度調整式のウィングタイプリアスポイラーはリアルカーボン製。
S202は、驚異のパワーウェイトレシオ 4.15kg/psと高次元のベストバランスを実現した。
ただ、S202の現在の中古車相場は180万円前後といったところだが、いかんせん流通量がきわめて少ない。
そのため、この時期の「丸目」が欲しい場合は通常のSTI 2.0 WRXを探すのが現実的だ。その場合の中古車相場は70万~140万円というのが目安となる。
インプレッサ S203
■中古車相場:130万~230万円
■2004年12月 総生産台数限定555台
■2L、フラット4ターボ:320ps/43.0kgm

2002年の途中、2代目インプレッサ(GD)のヘッドライトは前述の丸目から通称「涙目」と呼ばれるデザインに変更。
それと同時にWRCを戦うワークスマシンのほうも涙目のワールドラリーカーに移行した。
2003年にはスバルワークスのペター・ソルベルク選手が進化型のWRカーを駆って14戦中4勝をマークし、見事ドライバーズタイトルを獲得した。
この時期の市販バージョンに乗るのであれば、最注目は2004年12月に発売された「スバルインプレッサ S203」。こちらもWRCベース車両ではないが、より極みを求めたいならこのモデルをお薦めしたい。
これは涙目インプのWRX STIをスバルワークスであるSTiがチューニングした555台限定モデルで、搭載エンジンは最高出力320ps、最大トルク43.0kgmという日本車離れしたスペック。
その回転フィールも非常になめらかで、まるで4L級多気筒エンジンのごときプレミアム感がある。
S203の中古車相場は約130万~220万円といったあたりが一般的だが、走行1万km台などのミントコンディションな物件は500万円以上になることも。
セリカGT-Four(ST165)
■中古車相場:150万~220万円
■1986年10月
■2L、直4ターボ:185ps/24.5kgm

往年のWRCで大活躍した国産車といえば、インプレッサとランエボのほかにトヨタ セリカGT-Fourも忘れてはならない……というか、WRCで活躍を始めた年次はセリカGT-Fourのほうが古く、1990年に国産車として初のWRCタイトル(ドライバーズタイトル)を獲得したのは、カルロス・サインツがドライブしたこのST165型セリカGT-Fourだった。
市販バージョンのST165型セリカGT-Fourが販売されたのは1986年から1989年で、当時はそれなり以上の数が売れたものだったが、今やその流通量はきわめて希少。
具体的には2019年10月上旬現在、確認できるのは全国わずか3台で、そのプライスは150万~220万円付近となっている。
セリカGT-FOUR RC(ST185)
■中古車相場:200万円以上
■1991年9月 RCは世界限定5000台、日本限定1800台
■2L、直4ターボ:235ps/31.0kgm

1989年9月に市販バージョンのセリカがT180型にフルモデルチェンジし、同時にフルタイム4WDのGT-FourもST185型へ変更となると、1991年9月にはWRCを戦うグループAマシンを作るためのホモロゲーションモデル「GT-FOUR RC」を発売。
翌1992年シーズンからこれのグループAマシンが出走し、同年はカルロス・サインツがドライバーズタイトルを獲得。
翌1993年シーズンはユハ・カンクネンがドライバーズタイトルを獲得すると同時に、日本車メーカーとしては初のWRCマニュファクチャラーズタイトルをトヨタにもたらした。
が、その市販バージョンであるST185型セリカGT-FOUR RCの中古車流通量は今やほぼ皆無で、買いたくても買えない状態。2ヵ月前に調査した時は210万円で販売されていた。
RCではない「通常のGT-FOUR」もかなり希少だが、こちらは少数ながらいちおう流通はしていて、現在の相場はおおむね170万円前後となっている。
セリカGT-FOUR(ST205)
■中古車相場:80万~240万円
■1994年2月 WRC仕様車は世界限定2500台のうち国内2100台
■2L、直4ターボ:255ps/31.0kgm

1993年10月になると、市販版のトヨタ セリカは6代目のT200型にフルモデルチェンジを実施。そしてやや遅れて1994年2月には「次のグループAセリカ」のベースとなるST205型セリカGT-FOURが発売された。
旋回時のグリップを大幅に高める「スーパーストラットサスペンション」を採用したST205型ベースのグループAラリーカーは、1994年シーズン途中のラリー・オーストラリアから出場。
しかし大型化されたST205は、その重量ゆえにWRCでは苦戦。勝てたのは1995年のツールド・コルスだけで、レギュレーション違反による制裁なども受けながら、1995年にワークスとしての活動を終えた。
このようにWRCの世界ではあまり活躍できなかったST205型セリカGT-FOURだが、「中古車の世界」では今なおそこそこ活躍している。
他の世代のGT-FOURはほぼほぼ流通していないのに対し、ST205型は2019年10月上旬現在、確認できる範囲では全国11台が販売中。
そしてその中古車相場は今のところ80万~240万円といったところだが、「最後のGT-FOUR」ということで、ハイスペックな中古車は今後、そこそこ値上がりする可能性もあるだろう。