統合問題に揺れる日産自動車。GT-RやフェアレディZで育ったクルマ好きには、成り行きをハラハラしながら見守っている人も少なくないはず。しかしそんな混迷の今こそ、日産の技術力を思い出したい。日産は世界が真似できなかった、数々の神技術を生み出してきたのだ!
文:ベストカーWeb編集部/写真:日産自動車
4WDの歴史を変えたATTESA E-TS
舗装路にフルタイム4WDを持ち込んだのはアウディ。しかし当時は制御が難しく、959(後に961)で続いたポルシェもアンダーステアなどに苦労していた。
そこで日産は考えた。ターンインまではFR、その先でタイヤが滑ったら前輪に駆動力を伝えればいいんじゃないかと。こうして生まれたのが電子制御トルクスプリット4WD「ATTESA E-TS」だ。
その仕組みは、4輪の回転を車輪速センサーで測り、回転差が生じたときはトランスファーに内蔵された湿式多板クラッチの油圧を制御して、最大で50%まで前輪へトルクを分配するというもの。いってみればオンデマンド4WDなのだが、応答性を極限まで高め、スポーツドライビングに使うという発想は衝撃的だった。
ATTESA E-TSがいかにすごかったかは、R32型スカイラインGT-Rの成し遂げたグループAレース29戦29連勝(デビューから引退まで一度も負けなし!)が有名だが、実はそれだけじゃない。初搭載されたのは1985年の東京モーターショーに出たコンセプトカー「CUE-X」だし、GT-R以外にもセフィーロやローレル、シーマなどが搭載した。まさに日産FRの存在を飛躍させた技術なのだ。
【画像ギャラリー】ハイハイ見ていって! 神技術を実現した日産車はこれよ!(19枚)画像ギャラリー大気よりキレイといわれたシルフィのSULEVエンジン
昔から米カリフォルニア州の排ガス規制は世界一厳しいといわれてきたが、2001年に登場した日産セントラ(日本名サニー)が、そこに偉大な一歩を記した。その名もCA(クリーンエア)というグレードが、当時のハイブリッド車を上回る排ガス性能を打ち立てたのだ。
セントラCAが積んでいたのはQG18DEという1.8Lガソリンエンジン。「高速噴流型ハイスワール燃焼」「高精度空燃比制御システム」「超低ヒートマス担体触媒」「2ステージ式高効率HCトラップ」という4つの技術を駆使して、驚異的な排ガス性能を実現していた。
そのクリーンさはガチで「(当時の)都心の大気よりキレイ」。ハイブリッドシステムも使わずに、カリフォルニアではCARB(カリフォルニア大気資源委員会)の「SULEV(=スーパー・ウルトラ・ローエミッション・ビークル)」に認定され、諸条件も満たしてカリフォルニア州のゼロ排気車(Zero Emission Vehicle)クレジットの適用を受ける初めてのクルマとなったのだから驚く他ない。
ちなみにこのエンジン、日本ではサニーの上位互換モデルであるブルーバード シルフィに搭載された。もちろんその排ガス性能は日本でもいかんなく発揮され、炭化水素とNOxの排出量は、平成12年規制75%低減レベル(★★★)の、さらに半分という圧倒的なものだった。さらに日産は同技術を用いて2007年にディーゼルエンジンのSULEV化にも成功している。
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コメント
コメントの使い方アテーサE-TSにしても、VCターボにしても、特別な車種だけではなく、コスト的問題を解決して量販車に広く設定している点が最大の特徴かと思います。
VCターボは一時期信頼性の問題が指摘されましたが、現在は解決している様で、本来であればディーゼルの排ガス規制対策に用いるべき技術かと思います。
VCターボって、マツダのSPCCIに通じるものを感じます。市販化したのは凄い事かもしれませんがコストアップに対して得られる効果が見合わない。
これが80年代後半から90年代前半に出てきたなら拍手喝采で迎えられたかも知れませんが。
マツダのSPCCIは残念でしたが、VC-Tは費用対効果が見込めるようですね。
アルティマに採用された第一世代に信頼性の問題が指摘されましたが、改良されているようですし。
エクストロイドCVTもアテーサも今ではもうないですからねー。それもこれも過去の勢いのあった頃の日産の話。
今ではVCターボがありますが、耐久性的にどうなのか?とにかく今の日産は車好き(国際的レースで勝ちたいとか本当に乗って楽しい、快適等)が開発しているって感じがしないですね、セレナのATセレクターの件にしても。
e-POWERも枯れた技術の水平利用で、投資せずに最大に効果を得られた、素晴らしい機転です。
開発費の回収が少なく済むうえ、トヨタやホンダのストロングHVのように原価も高くないので安く設定できる。
現状さえ無ければ、窮地の日産を救った特大アイデア、としてドキュメンタリー化されたレベル。これらすら台無しにした経営陣・・・
とは言え、日産はアテーサE-TSやエクストロイドCVTなど、当時最先端とも言える技術がありましたが、残念ながら耐久性、整備性の問題から廃れてしまいました。VCターボも構造を見ると耐久性に不安があるように見えますが、どうなんでしょうね?
まぁ メーカーの耐久試験を通過する程度は有るンでしょうケド 改造には不向きでしょうね