スバルではWRX STIなどに搭載されてきた伝説ともいえるEJ20ターボエンジンがその生涯を閉じたことが話題になったばかりだが、その裏でEE20もお蔵入りとなったことは知られていない。
知らないのは当たり前でEE20は海外向けのボクサーディーゼルエンジンなのだ。
マツダのクリーンディーゼルエンジンの成功もあり、日本への導入が期待されたエンジンでもあったが、日本国内にデビューすることなく生産を終了したことになる。
本企画では松田秀士氏が世界で唯一の水平対向ディーゼルのEE20のポテンシャルを振り返ると同時に、はなぜ消滅したのかについて考察する。
文:松田秀士/写真:SUBARU、TOYOTA、MAZDA、MITSUBISHI、NISSAN
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コンパクトさにビックリ
まず日本未導入のEE20エンジンをなぜここで取り上げるのかというと、ボクサーディーゼルは世にも珍しい水平対向ディーゼルエンジンだからだ。
そのボクサーディーゼルエンジンがデビューした12年前の2008年にボクはスペインのマラガで試乗している。ではまずはEE20とはどんなエンジンだったのかレポートしよう。
試乗会場となったマラガはアフリカ大陸に臨むジブラルタル海峡の傍だった。当時その地は建設ラッシュ! あちこちにリゾートホテルやら建設中の建造物が目に入る。
サブプライムローンに苦しむ当時の米国など対岸の火事といったところだった。しかし、今、コロナに苦しむ姿を誰が予想しただろうか。
プレゼンテーション会場に足を運ぶとバラバランになったボクサーディーゼルエンジンが展示され、その傍らにはやはりバラバラのパーツとともにドイツメーカーの直列4気筒ディーゼルエンジンが展示されている。
面白いことにその直4ディーゼルとボクサーディーゼルのシリンダーブロックが比較展示されていた。その時の印象は、ボクサーディーゼルのなんとコンパクトなことか! だった。
水平対向エンジンはディーゼルに打ってつけ
スバルの開発陣にとって追い風だったのは、水平対向エンジンがことのほかディーゼルに向いていたということだろう。つまり、ディーゼルエンジンになるための素性がもともといいのだ。
どういうことかというと、水平対向エンジンは対向する左右のピストンが対称な運動をするため、互いの爆発振動を打ち消す特性があり、直列4気筒やV型6気筒ディーゼルに必須の振動を打ち消すためのバランサーが必要ない。
これだけでも、かなりフリクション(抵抗)を軽減することができる。
また、クランクシャフトを左右のシリンダーブロックが挟み込むようにデザインされているので、クランクケースの剛性がもともと強い。
また直列4気筒と比べるとクランクシャフトが短くなるのでクランクシャフトの剛性も高く、16.3:1という高い圧縮比から発生する強烈な爆発トルクをきっちり受けとめることができるのだ。
ディーゼルエンジンの場合このクランク剛性は重要で、強烈な爆発トルクによってクランクにねじれが発生し、それが振動などの症状の原因になっていたりする。
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