バッテリーは温度変化に弱く、特に低温状態ではその機能が著しく低下してしまう。そのため、冬場にバッテリー上がりのトラブルが多い。
しかし、気温が高い夏でもバッテリートラブルが多いのだ。冷房での電力消費が増えてバッテリーの負担は一気に増えるからだ。
出先でバッテリー上がりによる立ち往生とならないためにも、バッテリーのコンディションを知っておくのは大事なことだ。
2019年6~8月におけるJAFの出動回数を見るとダントツ1位はバッテリー上がり(6月:4万7998件、全体の30.94%)となっている。
そこで本格的な夏を迎える前に、今愛車に取り付けられているバッテリーにトラブルが起きないチェック方法から、バッテリーを長持ちさせるためのコツまで解説していこう。
文/高根英幸
写真/ベストカーWeb Adobe Stock
取材協力/オートバックスセブン
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まずは愛車のバッテリーの種類を頭に入れる
クルマに使われている鉛酸バッテリーは、今から200年前も前に発明されたもので、そこから構造的にはあまり進化していない。
それくらいシンプルで完成度が高いものだから、広く使われているものだ。それでもクルマ用のバッテリーは近年になって多様化している。
補水型と呼ばれるものは、昔ながらのバッテリー液のレベルを点検し、必要に応じて補水や補充電を行なう必要のあるバッテリーだ。
構造が単純で特別な工夫をしていないスタンダードなタイプは価格もリーズナブル。通勤などで毎日クルマを使い、ある程度距離を走られるなら、これでも性能は十分だ。
メンテナンスフリー型はMF型とも表示されるもの。これは上部のカバー部分に複雑な通路を設け、充放電で発生する水蒸気と、水素ガスは空気中の酸素と結合させて結露することにより、バッテリーセル内に戻す構造としている。これによりバッテリー液が減ることは少なく、補水不要を謳っている。
ただし、まったくのメンテナンスフリーでいいという訳ではなく、あくまで補水の手間がほとんど要らないと考えておいた方がいい。
というのも後述するメンテナンスの有無でバッテリーの寿命は変わってくるからだ。ハイブリッド車は補機類用バッテリーを搭載しているが、これは密閉式のMF型で専用品を採用している車種も多い。
充電制御車用バッテリーというモノも登場している。これはバッテリーの状態に合わせてオルタネータによる発電を制御しているクルマ用に最適化したバッテリーで、従来より充放電のメリハリが大きくなる使い方に対応している。
従来はエンジン始動直後にバッテリーへの充電を行った後も一定量の発電を行ない、電装品への供給と同時にバッテリーの電圧を確保するようにしている。
この発電による抵抗が駆動損失となって燃費を悪化させることから、クルマの消費電力が少なく、なおかつバッテリーが十分に充電されている状態の時にはオルタネータによる発電を抑えて、駆動損失を抑えるのが充電制御だ。
電圧が下がった時にオルタネータで充電させるため、バッテリーの電圧変動は従来より大きいので、充電回復力が高く、充電回数も多い耐久性に優れた特性が与えられている。
アイドリングストップ車専用バッテリーもいまや一般的だ。信号待ちなどでアイドリングストップするということは、セルモーターでの始動回数が増えるので、短時間に大電流を流す回数が増える。
これは充電制御よりも変動幅が大きく、オルタネーターとバッテリーの能力と負担はさらに求められる。したがって性能が高いだけでなく、価格も高価となる。
週末しか乗らない、しかも近所の買い物のみというのであれば、寿命も長い専用バッテリーを選んだ方が結局は出費が抑えられることもある。
ドライバッテリーと呼ばれるものには、従来のバッテリー液をゲル化した鉛酸バッテリーと、リチウムイオンバッテリーの2種類がある。どちらも補水不要の密閉型で、横倒しにしても使えるなど、MF型以上の使い勝手の良さを誇る。
後者はスマホやノートPCで使われているリチウムイオンバッテリーをクルマ用に最適化したもので、非常にコンパクトでパワフルなのが特徴だ。
従来の鉛酸バッテリーと比べるとエネルギー密度が高いため、非常にコンパクトになるというメリットはあるが、高価で劣化の仕方も鉛酸バッテリーとは異なるので、電装品が多い市販車に普通に使うのはオススメできない。あくまで競技用だと考えよう。
またバッテリーは同じ容量でも、タイプが異なれば価格もかなり差が出てくる。例えばベーシックな補水タイプでは55D23Lは1万5000円くらいだが、これがアイドリングストップに対応している55R/80B24Rとなると2万7000円前後、より高性能なアイドリングストップ車専用の高性能バッテリーのN65Rになると3万円を超える。
一般的には高性能なバッテリーほど高価になり、保証期間も長くなっている。ベーシックな補水タイプは1年1万km程度の保証だが、MF型になると2年2万km、アイドリングストップ対応などの高性能バッテリーでは3年3万km保証を謳っているものもある。
価格は高くなるが、確実に3年使えるのであれば、割安になることもあるので、自分のクルマの使い方と予算で相談して、バッテリーのグレードと容量を決めるといいだろう。
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