R32スカイラインGT-R、初代セルシオ、初代ロードスターなどが登場した1989年は、今も語り継がれる日本車のビンテージイヤー(当たり年)だ。
その後バブルが崩壊し牙を抜かれてしまった日本車だったが、雌伏の十数年を経て2007年、新たなる傑作車たちが解き放たれることになる。
レクサスIS F、スカイラインクーペ(V36)、R35GT-R、インプレッサSTI(先代)、そしてそのライバル ランエボX。この5台が同じ年に登場したのだからたまらない。まさに「隠れた当たり年」と呼んでいいのではないだろうか。
2007年のクルマ好きを沸き立たせたスターモデルたち。それらの魅力を、今ここで改めて語ろう。
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※本稿は2020年8月のものです
文:永田恵一/写真:ベストカー編集部
初出:『ベストカー』 2020年9月10日号
■スポーツの「F」を切り開いたセダン、IS F
初代ISのフラッグシップとなるスーパースポーツセダンがIS F。5L V8+8速ATを搭載し、アルテッツァにV8エンジンを搭載したテストカーを起源に登場。
また名前の「F」は開発されたトヨタの東富士研究所や、テストされた富士スピードウェイなどに由来し、LFAなど車名にFが付くスペシャルモデル、スポーツグレードのFスポーツといった、スポーツ系レクサスの第一弾でもあった。
初期のIS Fは楽しいクルマながらジャジャ馬なところもあったが、改良の積み重ねで楽しさはそのままに、扱いやすさと快適性も持つスーパースポーツセダンに進化。
現在、IS Fが切り開いた世界観は間もなく絶版となるGS FとRC Fが引き継いでいる。
■愛しい存在“スカクー”
日本では最後となったV36スカイラインクーペ。V6エンジン化など、1990年代までのスカイラインから生まれ変わった先代V35型からほぼキープコンセプトで登場したモデルだ。
技術的な話題は、出力制御に基本的にスロットルバルブを使わないVVELを採用した3.7L、V6エンジンで、VVELは高出力化と燃費の向上に貢献した。
スカイラインクーペは近年の日本車にはほぼない、成熟した大人が乗れるフル4シーターのラグジュアリーなクーペだっただけに、今になると愛しい存在だ。
■世界のブランドにも影響を及ぼしたGT-R
R34スカイラインのGT-Rの絶版から5年ぶりに復活したGT-R。「日本一ではなく世界一を目指したスーパーカー」と、スカイラインGT-Rとはまったく違うクルマとなった。
そのコンセプトは「(天候に左右されず)いつでも、どこでも(どんな走行シーンでも)、誰でも(扱いやすく)乗れるマルチパフォーマンススーパーカー」と、それまでにないもの。
このコンセプトは重量配分の適正化などに貢献した独立型トランスアクスルアテーサET-S、ダウンフォースに代表される空力や重い重量によってタイヤをいつでも最大限接地させる思想などに基づく。
さらにカーボン、アルミ、スチールを適材適所に使ったボディ構造といった世界最先端技術により実現。世界のトップブランドにも大きな影響を与えた。
また、GT-Rはとかく速さが注目されがちだが、日本のおもてなしに代表される国民性や技術の素晴らしさを、法規よりずっと高いスピードで衝突した際の衝撃吸収性や、「300km/hでバーストしてもディーラーまで行けるランフラットタイヤ」に代表される安全性などでカタチにしたクルマでもある。
それだけに生みの親の水野和敏氏は「このクルマは日産GT-Rだけど、日本GT-Rって呼びたいんです」とよく口にされる。現在もまったく古さを感じさせないまま進化を続け、今も自動車業界をリードし続けるGT-Rだ。
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