本企画は、自動車評論家たちが「初期型は酷評し、後に改良でよくなったんだけど、ソレを伝える機会がなかった」というクルマを紹介していく。
やはり第一印象というのは大きいもので、初期がダメだとずっと「ダメ」なイメージが離れないものなのだ。しかし、その後地道な改良を重ね、あるいは大胆な方針転換を果たし、そのイメージを実質的に払拭しているクルマたちもある。
今回はそんなクルマたちの名誉を挽回させるべく5人の評論家が立ち上がった。じっくり読んでいただきたい企画だ。
●ラインナップ
・トヨタ アクア
・フェラーリ488GTB
・日産 スカイラインV37
・ホンダ フィット(先代)
・BMW2アクティブツアラー
・【番外コラム】マイナーチェンジで名誉挽回できるクルマの条件
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※本稿は2020年11月のものです
文/渡辺陽一郎、清水草一、片岡英明、岡本幸一郎、松田秀士、写真/TOYOTA、NISSAN、HONDA、BMW、Ferrari
初出:『ベストカー』 2020年12月26日号
■トヨタ アクア
2011年に登場したアクアに初めて試乗した時は驚いた。
車内に入るとインパネがプラスチック素材丸出しだ。ハイブリッドだから、モーターのみの駆動で発進した後にエンジンを始動させるが、この時はノイズが一気に増大した。
遮音材が省かれ、エンジン音が直接車内に入る感覚だ。乗り心地は粗く、路上のデコボコも伝えやすかった。
逆に動力性能には余裕があり、操舵感もダイレクトでスポーティカーのような走りを味わえたが、内装、ノイズ、乗り心地の質は低かった。
この後、アクアは改良を頻繁に行った。遮音材の追加、サスペンション設定の見直し、内装の質感向上、さらにボディについてはスポット溶接の増し打ちまで行った。
足まわりの設定を見直すなら調整の範囲だが、スポット溶接の増し打ちは根本的な改善だ。「どれだけ安く作っていたの!?」と改めて驚いた。
今でもアクアは上質とはいえないが、初期の不満はかなり改善された。質を下げた一番の原因は、2008年の終盤に発生したリーマンショックによる世界的な不況だ。
2010年に発売された最終型のヴィッツや先代パッソを含めて、この時期に登場した低価格のコンパクトな車種には駄作が多い。
トヨタに限らず、2010年に登場したマーチ、2012年のミラージュなども質が低かった。ミドルサイズ以上の車種は、もともと価格が高いので品質を保てるが、コンパクトカーは吸収できずに下げてしまうのだ。
ところが同じ低価格車でも軽自動車は、競争が激しいこともあり、この時期にも我慢して質を下げなかった。新車の販売総数に占める軽自動車の比率も、2012年以降にN-BOXの登場もあって増え始めた。
この時に生まれた市場環境が、今に繋がっている。
(TEXT/渡辺陽一郎)
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