2020年12月25日、日本政府の経済財政諮問会議のもとに設置されている加藤雅信官房長官が議長を務める成長戦略会議は、2020年10月に菅義偉内閣総理大臣が宣言した「2050年カーボンニュートラル」に基づき、「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」を採択した。
そのなかで気候変動緩和を「成長の機会と捉える時代」になったと位置付け、変革のロードマップを示した。自動車・蓄電池(バッテリー)産業では以下のように明記されている(一部抜粋)。
「自動車は、電動化を推進する。欧州の一部の国やカリフォルニア州ではガソリン車の販売の禁止が相次いで打ち出されるなど、自動車の電動化は、想像以上のペースで進んでいる。日本は、この分野でのリーダーを目指さなければならない。
遅くとも2030年代半ばまでに、乗用車新車販売で電動車(電気自動車、燃料電池自動車、プラグインハイブリッド自動車、ハイブリッド自動車)100%を実現できるよう、包括的な措置を講じる。商用車についても、乗用車に準じて2021年夏までに検討を進める。
この10年間は電気自動車の導入を強力に進め、電池をはじめ、世界をリードする産業サプライチェーンとモビリティ社会を構築する。この際、特に軽自動車や商用車等の、電気自動車や燃料電池自動車への転換について、特段の対策を講じていく。
こうした取組やエネルギーのカーボンニュートラル化の取組を通じて、カーボンニュートラルに向けた多様な選択肢を追求し、2050年に自動車の生産、利用、廃棄を通じたCO2ゼロを目指す。
CO2排出削減と移動の活性化が同時に実現できるよう、車の使い方の変革による地域の移動課題の解決にも取り組む。ユーザーの行動変容や電動化に対応した新たなサービス・インフラの社会実装を加速する。
また、蓄電池は、自動車の電動化や再生可能エネルギーの普及に必要となる調整力のカーボンフリー化の要である。研究開発・実証・設備投資支援、制度的枠組みの検討、標準化に向けた国際連携といった政策により、蓄電池の産業競争力強化を図る。
2030年までのできるだけ早期に、電気自動車とガソリン車の経済性が同等となる車載用の電池パック価格1万円/kWh以下、太陽光併設型の家庭用蓄電池が経済性を持つシステム価格7万円/kWh以下(工事費込み)を目指す。
また、2030年以降、更なる蓄電池性能の向上が期待される次世代電池の実用化を目指す。具体的には、まずは全固体リチウムイオン電池の本格実用化、2035年頃に革新型電池(フッ化物電池・亜鉛負極電池等)の実用化を目指す」。
(出典:経済産業省・2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略)
注目したいのは、軽自動車の存在。政府が示したこのロードマップのなかで、軽自動車も電動化の対象に含まれることが明記された。いまや軽自動車は新車販売の約4割を占め、登録車に比べて維持費が安く、地方では1人1台といえるほどの生活必需品、いわば庶民の足だ。
しかし、現状では、軽自動車にフルハイブリッド車を採用している自動車メーカーはなく、スズキや日産&三菱(NMKV)が簡易タイプのマイクロハイブリッドを採用している。ホンダ、ダイハツのハイブリッド車はない。
スズキの場合、スペーシア、ハスラー、ワゴンRなどの売れ筋車種に、マイクロハイブリッド(モーター出力は2.6~3.1ps)を搭載、スズキの軽乗用車に占めるマイクロハイブリッド比率は50~60%となっている。
政府が進める電動化は、庶民のアシ、軽自動車まで含まれるということが明らかになったわけだが、この電動化が、マイクロハイブリッドで済むのか、それともフルハイブリッドでなくてはいけないのか?
もしフルハイブリッドしか認められないということになると大幅なコスト高で、軽自動車の価格が高くなり、存在価値が薄まってしまうのではないか?
本企画では、政府が進める「2035年までに純エンジン車新車販売禁止」における、軽自動車はどうなるのか、モータージャーナリストの国沢光宏氏が解説する。
文/国沢光宏
写真/ベストカー編集部 ベストカーweb編集部 ホンダ スズキ
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