電動化が叫ばれている昨今だが、現在販売されているEV&PHEVで、純正でソーラーパネルを搭載することができるのはトヨタ『プリウスPHV』くらいとなっている。
一般的には、航続距離を延ばすのに、レンジエクステンダーでエンジンを回すよりも、排ガスが少なくできていいような印象を受けるのではないだろうか? しかし、電動車にソーラーパネルを搭載することは普及しないことを考えると、なにかしら理由があるのではないだろうか。
コストなのか? それとも別の理由からメーカーが取り入れないのか? 今回はクルマの自然エネルギー発電事情について考察していきたい。
文/高根英幸
写真/TOYOTA
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■太陽光発電でクルマが走ればこの上ないエコだが、普及しない理由とは?
ソーラーカーによるレースが世界規模で行なわれていることはご存知だろうか。車体にソーラーパネルを貼り付け、そこから発生する電力だけで走行してゴールまでの速さを競うレースだ。中でも最もメジャーなワールドソーラーチャレンジはこれまでに30年以上、15回もの開催実績をがある。しかもオーストラリアの広大な大地を縦断し3021kmを走破するという、過酷な競技だ。
参戦しているチームは自動車メーカーやソーラーパネルなどの電機メーカー、大学の研究室などが主体となっており、日本からはこれまでホンダや京セラ、東海大学などが優秀な成績を収めている。中でも東海大学は最も長く参戦を続けており、2度の優勝経験もある有力チームとして知られている。
つまり、技術的には、太陽光だけでクルマを走らせることは可能なのだ。しかし量産車の世界では、ソーラーパネルからの電力だけでは、走行を続けることなどまず不可能なのである。なぜなら一般的なクルマは車体やバッテリー、快適装備や安全装備などが満載で車体が重く、競技用のソーラーカーとは比べ物にならないほどEV走行で電力を消費するからだ。
それでもハイブリッドカーが普及し始めてからというもの、ソーラーパネルを車体に貼り付けて電力の一部をまかなおうというアイデアは実践されてきた。車検などが日本のように厳しくない米国などでは、プリウスを改造してソーラーパネルを装着したオーナーも出現していた。
トヨタも『ZVW30型 プリウス』にはガラスサンルーフにソーラーパネルを内蔵させて、その電力で換気扇を回して車内の温度上昇を抑えるソーラーベンチレーションシステムをオプションで用意したが、セットオプションで20万円という価格であり、一部のオーナーだけが選択した装備だった。
そして、現行の『ZVW52型 プリウスPHV』にはルーフパネルをソーラーパネルにするオプションが用意されている。その価格は約28万円(!)。しかし、それで晴天時に1日充電させても蓄えられるのは大体6km分(1kWh)の電力程度。残念ながら、とても元は取れないレベルの発電ぶりなのだ。これを選ぶユーザーは限られるため、ほかのハイブリッド車に設定が進まないのも当然だ。
キャンピングカーの広いルーフにソーラーパネルを装着して、車内で利用する電気を発電である程度カバーすることは、このところ急速に普及してきた感がある。だが、これはクルマというより、住宅の屋根にソーラーパネルを取り付けることに近い感覚だ。
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