トヨタがレース用に開発している水素エンジン車で、5月21~23日に開催されたスーパー耐久富士24時間レースに初出場。水素タンクを積んだレース車両のカローラスポーツは24時間で358周(1634km)を走って完走した。開発途中でもレースができるほどの技術であるわけだ。
であれば、2050年カーボンニュートラルの達成はEV(電気自動車)やFCV(燃料電池車)だけでなく、この水素エンジン技術を市販車に使うことで、エンジン車は生き残れると思うのだが……。それは実際のところ可能なのか?
さらに燃料に水素を使うのであれば、「FCVである必要もないんじゃないの?」という疑問も湧いてくる。
トヨタの水素エンジンは市販車にも使える技術なのか? 国沢光宏氏が解説する。
文/国沢光宏 写真/TOYOTA、ベストカー編集部
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■開発途上で突然の発表だった水素エンジン
トヨタがレースで水素エンジンを走らせた。もちろん開発の緒に着いたばかりのため成績は二の次。おそらくスーパー耐久富士24時間レースでも普通に走っていたら見つからないような、解決すべき課題などたくさん出てきたことだろう。
そして競技に出ると普通のテンポとまったく同じスピード感で開発は進む。なんたって次のレースまでに何とかしなくちゃなりませんから。
さて。こうなると気になるのは「水素エンジンを搭載した市販車が出るか?」だと思う。なかには「市販を前提にしたレース参戦だ」と書くメディアもある。本当のところはどうか?
トヨタ筋を取材してみると水素エンジン、突如出てきたようなのだ。モリゾウさん(豊田章男社長)が試作車に試乗して、「いいね!」。試作車を用意した人もレース参戦は想定外。
■水素エンジンを普通のクルマに搭載したら?
そんな水素エンジン、普通のクルマに搭載したらどうか? 以下、検証してみたいと思う。
まず燃費。今回のレースを見ると、7kgほどの水素で(水素タンク容量7.34kgと発表されているが使えるのは最大で7kgくらい)、50kmくらい走れている。ガソリン車のGRヤリスをレーシングスピードで走らせたら2.5km/Lくらいだと思う。
つまりガソリンエンジンなら20L程度のエネルギー量に相当するワケ。このパワーユニットで燃費のいいハイブリッド車を作ったら、400~500km走れることになる。
ただ7.34kgという水素タンク、新型MIRAIの5.6kgよりずいぶん大きい。レース車両を見ると、リアシート部分に水素タンクがギッシリ積み込まれている。
総合して考えると、現時点では燃料電池よりエネルギー効率が若干低いと言うことなんだと思う。えいやっ! っで大ざっぱに言えば80%くらいだろうか。
とはいえ水素エンジンの開発は始まったばかり。熱効率の改善も可能だと思う。スポーツモデル用のパワーユニットとして使うなら問題ないレベルに達するかもしれません。
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