待望の新型(2代目)が発表され、7月にはBRZがいよいよ発売となり早1ヶ月(GR86は秋の発売開始を予定)。この状況でもはや「旧型」と言っていい初代にスポットを当てるなんて、ベストカーひねくれてんなーと思われるかもしれない。
しかし、新型が発表されたからこそ、熟成の極みとも言うべき初代モデルのことをもっと知ってほしいのだ。
新型に対する諸氏の反応も交えながら、まごうことなき傑作・初代86とBRZの足跡と魅力、中古で狙うなら??? を大特集!
●トピック
・第1部 名うての「86遣い」が熱~く語る!! 初代の進化と魅力
・第2部 オーナー&レーシングドライバーが語る!初代86/BRZへの思い
・第3部 新型登場間近だからあえて狙う!! 初代86/BRZ中古車最前線
・第4部 期待と不安評論家5人が語る 新型86/BRZ発表後の率直な感想
・第5部 カスタマイズ&チューンも自由自在!初代86/BRZ 最新チューニング事情
※本稿は2021年5月のものです
文/橋本洋平、永田 恵一、田中美里、谷口 信輝、山野 哲也、萩原文博、片岡英明、清水草一、岡本幸一郎、鈴木直也 写真/TOYOTA、SUBARU ほか
初出:『ベストカー』2021年6月10日号
【画像ギャラリー】実は今が手に入れる絶好の好機!!? 初代トヨタ86/スバルBRZの改良&追加履歴をギャラリーでチェック!
■第1部 名うての「86遣い」が熱~く語る!! 初代の進化と魅力
まずは、名うての86使いで、自らも3台の86を乗り継いだ橋本洋平氏が進化とその魅力に迫る!
* * *
2012年の登場以来、僕らに話題を提供し続けてくれた初代86&BRZも、いよいよ次期型にスイッチする。今改めてその魅力を振り返る。
まず思い出すのは86とBRZの走りのテイストの違いだ。86はBRZに対して、わずかにフロントサスを柔らかい設定とすることで、ドリフトの姿勢に持ち込みやすい特性としていた。プリウスと同じエコタイヤを装着して速さじゃなく、扱う愉しみが凝縮されていた。
対するBRZはノーズが入り過ぎず安定志向。その差はわずかなものなのだが、セッティング違いでキャラクターを表すという面白さがあり、トヨタとスバルの対決の構図が作れたところも話題のひとつだった。
もうひとつの魅力は、微細な変更を繰り返し、A型からH型まで進化。常に走りを磨き込むその姿勢は、スポーツカーとしてあるべき姿を実践できたといっていい。だからこそ魅力が持続し盛り上がったのだろう。
僕もその過程を楽しんだひとりだ。86&BRZレースにA型、E型、そしてH型と3台を乗り継いだ結果、同じクルマでも別物になることを体感した。
A型は、取材の足からレースの相棒として大いに活躍してくれたが、そのベースがあったからこそ、その進化が手に取るように理解できた。
サスペンションメンバーの締結ボルトがB型で変更されたとなれば、それを即座に部品注文して愛車に取り付け、走りの味変が体感できたことは面白かった。
一時はこの体験をしようとそのボルトに部品注文が殺到し、品切れになったこともあったのだとか。それだけユーザーが走りの質感に興味を持ったことも面白い現象だったと感じる。
また、レースでは使わなかったが、アルミテープによってボディの帯電を放電させ、空力効果を発揮させやすくする試みや、さらにお魚フィンと呼ばれていたエアロスタビライジングフィンを装着したテストも見どころがあった。
いずれもタウンスピードからステアリングフィールが変化するほどのアイテムで、クルマの姿勢が安定したことが見どころのひとつ。こうしたメーカーのトライと実験を肌で感じさせてくれる環境が整っていたところが、86&BRZの魅力のひとつだった。
ただ、いっぽうでA型はある意味、未完成だった。ボディも当初は弱さがあり、リアシートの上部パネルあたりから、入力があるたびにパチパチという音を発し、それは後に溶接の甘さだったということが判明。
レースで4シーズン戦ったボディは、ルーフ側面に雹害にでもあったかのような歪みが発生した。後に溶接点を増やすなどの処置が入り、リア回りのボディ剛性アップを果たし、走りをみるみる成長させて行くことになる。
E型に乗り換えると、当初の問題は払拭され、初期応答が甘かったA型とは異なり、微操舵域から切り込み応答までリニアなハンドリングを実現できるように成長していた。
E型になって最も衝撃的だったのはインマニなどを変更してわずかながらにパワーアップしたこと、そしてファイナルギアの変化だ。これによりスタンディングスタートの加速から、コーナー脱出時のトラクション性能が高まった。
よりアクセルに忠実に動かせるように仕上がったことで、街乗りからサーキットまで満足いく仕上がりが実現できた。この時、若干ではあるがモード燃費を落とすことになるが、それをよしとして登場させたことが当時は驚きだった。エコばかりにとらわれず、クルマの質感を追求するその姿勢に共感した。
こうしたベースモデルの土台があってこそ、GR、GRMN、TRD 14R-60そしてSTI Sportなどのチューニングコンプリートモデルも輩出できたのだろう。速さも質感も手にしたこれらのクルマたちが、メーカー直系で登場したのだから驚くばかりだ。
スポーツカーはカルチャーであることを体現するために登場した86&BRZ。その過程に間違いはなかった。今、次期型にバトンを渡せることがその証明といっていい。
そして継続されるほどの世界を作り上げたことが、何よりもこのクルマの魅力なのかもしれない。
(TEXT/橋本洋平)
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