運転中「ヒヤッ」とすることが増えた、急ブレーキ、急ハンドルが多くなったような気がする……。誰にも相談できないけれど、自分の運転に不安を覚えることが多くなったと内心思っていないだろうか? その原因は「反射神経」の衰えにある可能性大。まだ若いから大丈夫と思っていたら大間違い。反射神経は成人した後には1歳年をとるごとに、確実に衰えることが医学的にわかっている。
しかし、あきらめるのはまだ早い! 自力で反射神経の衰えを遅らせ、鍛えることは可能なのだ!
文/室井 圭、医療監修/伊藤重範(医療法人三九会 三九朗病院 循環器内科専門医・総合内科専門医・医学博士)、写真/写真AC、イラストAC
【画像ギャラリー】反射神経の老化は運転技術の低下をもたらす!
反射神経の働きが低下すると運転が下手になる
反射神経はよく耳にする言葉だが、実は反射神経という神経は存在しない。
体には視覚や聴覚など感覚を受容する感覚神経と、手足や眼球の筋肉を動かす運動神経の2種類があり、このふたつが連携することで体はとっさの事態にも素早く反応して対応することができるのだ。
正確に言うと、反射神経とは、目や耳などの五感で感じ取った情報が脳に伝わり、さらに脳から運動神経に「どう体を動かせばいいか」という命令が伝わるまでの速度のことをわかりやすく表現した言葉だ。つまり、感覚神経→脳→運動神経という情報伝達の流れがスムーズで素早ければ「反射神経が良い(鋭い)」、逆に、遅ければ「反射神経が悪い(鈍い)」ということになる。
運転は視覚や聴覚(視覚が80%)から受け取った情報を元に、ステアリングを操作したり、アクセルやブレーキの調整をする必要がある。しかし、反射神経が鈍くなると、アクセルやブレーキのオンオフの微調整がうまくできなくなり、急発進や急ブレーキが多くなったり、急ハンドルをしやすくなったりと、他人に「運転が下手」と思われてしまうような操作をすることが多くなってしまうのだ。つまり、反射神経の良し悪しがドライビングテクニックの良し悪しに直結するということだ。
年をとれば反射神経が鈍るのは必然!?
反射神経が鈍くなる主な要因は加齢。高齢者での事故が多いのも反射神経の衰えによるところが大きい。特に、30代後半から40代前半は反射神経の低下を感じやすい時期と言われている。
一般的には、飛び出しを発見してからブレーキを踏むまでの反応時間は平均で約0.7秒。ただし、20代が0.63 秒なのに対し、60代では0.83秒という実験結果(※)も報告されている。クルマの速度が60km/hだとすると、0.7秒の間に約12mも進んでしまうことになり、60代は20代より進む距離がさらに4m近く伸びてしまうことになる。アクセルを踏む、ステアリングを切るなどの反応速度も同様に遅くなるということが考えられる。
思った以上に強くアクセルを踏んでしまったり、前のクルマの急ブレーキに対応できなかったり、コーナーリングでステアリングを切るのが遅れて対向車線にはみ出したりといったことも、反射神経の衰えによる反応速度の低下が一因と言える。
自分は他人より若いと思っていても、年をとるとともに反射神経が鈍くなる、つまり、運転は年をとるとともに下手になっていくのは避けられないということになる……。
※引用 : 「牧下らの自動車運転中の突然の危険(飛び出し)への制動反応時間を調べた研究」より
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