依然として新車の納期遅延が深刻といわれているが、年末~年度末商戦を見据えて、メーカーとディーラーはともに販売するクルマを欲している。このビジネスチャンスを放置することはできないからだ。
そのため工場の稼働状態を正常に戻すことに注力しているわけだが、そうなれば車を待っているユーザーにとってもありがたいことである。今回はあらためて2021年度末の販売現場の声をお届けしよう。
文/小林敦志、写真/ベストカー編集部、AdobeStock
■不足は半導体に留まらない『混乱』
販売現場で聞くと、トヨタ カローラクロスや同ヤリス、ヤリスクロスなどでは納車待ち1年ほどとのこと。そしてホンダ ヴェゼルのPLaYグレードはオーダーストップ。状況がより深刻なものをピックアップすればキリがないほど新車の納期遅延は広く深刻なものとなっている。
そもそも“受注生産(注文をもらってから生産する)”が大原則となる日本では、ここ数年は人気の高いモデルにオーダーが集中して長期の納期遅延になることはよくあった。
前述したカローラクロスやヤリスシリーズ、ヴェゼルなども人気が高くデビュー以来多くのオーダーが集中していたのだが、これに世界的なサプライチェーンの混乱が加わり事態がより深刻なものとなったのは、みなさんもすでに報道などでおわかりのはず。
当初は“半導体不足”と表現されていたが、いまでは“サプライチェーンの混乱”などと表現されている。つまり、ことは半導体とか限定したものではなくなってきているのである。販売現場で話を聞くと、「いまはハーネスの手配がなかなかつかなくて新車の生産が滞っているようです」という話を聞く。
ハーネスとはおもに銅線を束ねた配線のことであり、総部品点数が3万点ともいわれる自動車のなかでは重要な部品のひとつとなっている。しかし、このハーネスを日本メーカーの国内完成車工場ではほとんどを海外生産に依存している。
日本国内では「新型コロナウイルスは死滅しつつある」などとも言われるほど、現時点では小康状態にある。
しかし、ASEAN(東南アジア諸国連合)諸国など新興国では、一時よりは落ち着きを見せているものの予断を許さない状況が続いているし、中国では現地報道を見る限りでも感染の再拡大が起こっている模様。
新型コロナワクチン接種の進んでいるヨーロッパでも感染の再拡大が起こっている。さらに直近では南アフリカなどで新たな変異ウイルスが発見され、株価が大幅下落したりしており、依然として先行きは不透明といえよう。
感染拡大が深刻なころはロックダウンにより工場の操業停止などが起こり、その際に工員を故郷に帰したり解雇したりしていたので、いざ操業再開となっても十分なマンパワーを確保できないこともあり工場稼働率が下がっている状態が続いている。
そしてさらに、ハーネスでいえば原材料となる銅が不足し、そのため銅線も世界的に不足していることも追い討ちをかけているのである。
「工場が操業停止していた時期なども含め、それでも新規受注が世界から入ってきますので、受注は積み上がりますから仮に工場稼働率が100%に戻ったとしても納期遅延はしばらく続くのではないかとの話もあります」とは事情通。
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