かつてトヨタ2000GTから始まったトヨタとヤマハの共同開発。そのヤマハがエンジン開発に携わったエンジンは「音のいいエンジン」として知られている。レクサスLFAをはじめ、70スープラ2.5GTツインターボRや80系マークIIGTツインターボ、90系マークII/チェイサー/クレスタツアラーVなどがそうだ。
また、第2世代スカイラインGT-Rを彩ったRB26DETT、30年間現役を張り続けたスバルのEJ20ターボ、独特のロータリーサウンドで魅了した13B2ローターなどなど、当時を知る片岡英明氏が選ぶ「聞き惚れるほど音のいいエンジン5選」!
文/片岡英明
写真/ベストカー編集部、トヨタ、日産、ホンダ、マツダ、スバル
■マニアが思わず惚れ込むエンジンはこれだ!
エンジンの音色は、マルチシリンダーになるほど魅力的だと感じる。ターボなどの過給機を用いると刺激的な加速を楽しめるが、自然吸気エンジンのほうがダイレクトな応答レスポンスで、エンジンサウンドも官能的だ。高回転まで気持ちよく回ることも魅力のひとつに挙げられる。
2度と出ないであろう珠玉のパワーユニットが、ヤマハ主導でトヨタと共同開発した1LR-GUE型V型10気筒DOHCだ。2010年に台数限定のプレミアムスポーツ、レクサスLFAに搭載され、送り出された。
レーシングエンジンにかぎりなく近い設計で、バンク角72度のV型10気筒DOHCである。排気量は4805ccと、かなり大きい。コンロッドにはチタンを用い、鍛造製だ。ピストンはアルミ合金の鍛造製とした。
重心を下げるため、オイル潤滑はドライサンプ方式を採用する。エキゾーストから吐き出されるエンジン音は官能的だ。量産エンジンの域を超えた気持ちいいエンジン音を奏でる。リーマンショックがなければ、世界が認める名機になっていた珠玉のパワーユニットだった。
■グループAを制するために生まれた「RB26DETT」
直列6気筒エンジンも乗り手をワクワクさせるパワーユニットで、回していくと気持ちいい音色に変化する。平成以降の作品で感激したのは、R32スカイラインからのRB20系6気筒DOHC4バルブユニットだ。
精緻な回転フィールを身につけ、高回転まで滑らかに力強く回る。その究極の存在が、R32スカイラインGT-Rに搭載されてデビューしたRB26DETT型直列6気筒DOHCツインターボだろう。
グループAのレースを制するために排気量を2568ccまで拡大し、セラミックタービン採用のツインターボを組み合わせた。レースでの使用に耐えられるようにほとんど新設計とし、シリンダーブロックなどを補強し、6連スロットルチャンバーや各気筒独立のシーケンシャル電子制御燃料噴射システムなど、最先端のメカニズムを意欲的に採用している。
ターボを装着しているが、高回転域まで軽やかに回り、レスポンスも鋭い。刺激的な加速フィールに加え、エンジン音も心を揺さぶる。
■30年間スバルのモータースポーツを支え続けた名機「EJ20ターボ」
だが、個性という点に関しては4気筒エンジンも負けてはいない。多くの人が個性的な音色だと感じているのは、水平対向4気筒エンジンだろう。コンパクトに設計でき、重心も低くできる。
また、向かい合う位置にあるシリンダー配置はV型6気筒などのようにバランス感覚に優れ、振動も少ない。その筆頭がスバルのEJ20型DOHCユニットだ。自然吸気エンジンもあるが、多くの人の心に深く刻まれているのはレガシィのGT系やWRX STiに積まれたターボ仕様だろう。
排気量1994ccのEJ20型DOHCはビッグボア、ショートストローク設計だから高回転まで軽やかに回る。ターボを装着しても驚くほど高回転の伸びが鋭いのだ。パンチがあるだけでなく、エンジン音も耳に心地よい。
音だけにかぎれば、等長等爆システムを採用する前のEJ20型エンジンに軍配が上がる。ドロドロとした独特のエキゾーストサウンドは際立つ個性の持ち主だ。ちょっとマフラーが傷んでいると、さらにいい音色(!?)を放つ。
■高回転のはじけるサウンド! 究極の自然吸気VTEC「F20C」
ホンダS2000に搭載されたF20C型直列4気筒DOHC・VTECエンジンも名機と言えるだろう。ホンダはオートバイやレーシングカーのエンジンを数多く手がけているから高回転まで気持ちよく回るエンジンが多い。
また、回した時の音色も独特だ。特に自然吸気エンジンは傑作が多く、音色もいい。後輪駆動のS2000のために設計された縦置きレイアウトのF20C型直列4気筒DOHC・VTECは、その最たるものだ。
バルブ挟み角を狭めてシリンダーヘッドをコンパクト化し、カムチェーンの駆動システムを採用したF20C型エンジンは1997ccの排気量で、圧縮比は11.7と驚異的に高い。
リッター当たり出力125psの高性能ユニットで、その気になれば8000回転まで実用になる。6500回転を超えてからの力強い加速と甲高い音色に変わるのに胸を躍らせるオーナーも少なくない。やはり縦置きエンジンはいい、と感じさせてしまうパワーユニットだ。
■マツダしか成しえなかった夢の新世代エンジン
好き嫌いは分かれるが、マツダの13B-REW型2ローターロータリーも音色が個性的なエンジンである。91年秋に登場した最後のRX-7(FD3S型)に積まれたエンジンで、シーケンシャルツインターボとした。
2基のターボを搭載し、低回転ではレスポンスの鋭い小型のプライマリーターボを、高回転域を受け持つセカンダリー側には通気抵抗の少ないハイフロータイプのターボを採用した。
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