相変わらず好調のハスラーをはじめ、納車1年待ちと人気沸騰中のジムニー&ジムニーシエラ、昨年12月に発売され販売好調のクロスビー、さらにはスイフトスポーツやアルトワークスなどクルマ好きの心をくすぐるモデルもラインアップしている。
スズキの今年4~6月の第一四半期連結決算は、売上高と各利益で過去最高を記録した。なぜ最近のスズキ車は評価が高いのか? 売れてる理由をどこにあるのか、探ってみた。
文/福田俊之、清水草一
写真/ベストカー編集部
初出/ベストカー2018年10月10日号
■なんで安いクルマを作れるのか!?
TEXT/福田俊之
スズキが1998年以降、20年間もずっとアピールし続けているコーポレートスローガンは「小さなクルマ、大きな未来。」。もっとも、最近の財務状況をみれば、「小さなクルマ、大きな〝儲け〟」などと書き換えてみても異論を唱える人はいないだろう。自称〝浜松の田舎会社〟が驚くほどの高収益企業に成長しているからである。
2018年8月上旬に発表した2019年3月期の第1四半期連結決算でも本業の稼ぎを示す営業利益は1165億円と前年同期に比べて36.9%の大幅増となり、売上高とともに過去最高を更新した。しかも、営業利益率は11.8%と2ケタの大台に乗せ、トヨタ自動車(9.3%)やスバル(8.1%)を抜いて業界トップに踊り出た。
だが、スズキは軽や小型の「小さなクルマ」が主力車種で販売価格が安いこともあり、新車1台当たりの収益力では、ブランド力の比較的高いトヨタやスバルに比べると半分程度の利益しか得られていない。にもかかわらず、国内ではスズキが最も稼ぎまくっている自動車メーカーなのである。
■半端ない効率経営が他社との違い
その背景には同じ業界でも徹底的に無駄を省いて利益を積み上げるスズキ流の〝半端ない効率経営〟に他社との違いがあるようだ。
例えば、鈴木修会長が社長に就任当時、初代「アルト」の開発陣に「1部品1円、1グラム」を指示。驚くほどのコスト削減と軽量化で50万円を切る「47万円」という超低価格で売り出したのは知る人ぞ知る逸話。
その後も「製造業は1円のコストダウンが生死を分ける」というケチケチ哲学を貫いて原価低減に邁進する。さらに、デンソーなどから外販部品を調達するにも、メーカー側の購買担当にありがちな「上から目線」での商談ではなく、相手の立場になって考える巧みな交渉術を身に付けていることも大きい。
また、コスト削減は開発製造現場ばかりではなく全社的に浸透していることも強みだ。ボールペンやコピー用紙など事務用品を厳しく管理するのは当然だが、節電効果を上げるために外光をたっぷり採り入れた工場レイアウトや稼働しない休日は自動販売機の電源を切るのもほんの一例だ。
スズキの本社は浜松市だが、東京の拠点は「支社」でなく「支店」と呼ぶ。「〝田舎者〟であるがゆえに変な見栄を張ることがない」と鈴木会長は言う。
事務所は雨漏りしなければ上等という考えで、以前は販売会社の古いビルに間借りして、東京駐在の社員は通勤定期代もかからない同じビルの軒先を〝社宅〟にしていたほど。
ただ、何から何までコスト削減に徹しているわけでもない。お金には「生き金」と「死に金」があるといわれるが、ここ一番の新型車のお披露目会などは都内の一流ホテルの大宴会場を貸し切って開催するなどメリハリを付けることも忘れない。
「チリも積もれば……」で、ライバルよりもスズキのクルマの価格が安いのは、全社一丸となってコツコツと積み上げた努力の賜物以外には考えられないだろう。
100万円以下で買えるアルト(8代目)
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