半導体をはじめとする自動車部品の供給遅れに加えコロナ禍というダブルパンチで、クルマの販売は大きなダメージを受けている。
納車したくてもできず、大量のバックオーダーを抱えたクルマが増えていることもあり、人気車=販売(登録)台数が多い、という当たり前のことすら崩れてきている。本当に由々しき事態である。
本企画では、遠藤徹氏、渡辺陽一郎氏、佐々木亘氏、木村俊行氏というクルマ販売関連のスペシャリストを揃えてお届けする。各メーカー&ブランドとも戦略、ニューカー状況などが違うため、それぞれに独自のテーマを設けて、日本のクルマ販売の最前線に迫っていく。
※本稿は2022年6月のものです
文/遠藤徹、渡辺陽一郎、佐々木亘、木村俊行、写真/ベストカー編集部 ほか
初出:『ベストカー』2022年7月26日号
※各メーカーの新車の遅れに関する記述は遠藤徹氏の情報に基づく
■トヨタ編(2021年の国内総販売台数:142万4380台/国内の販売拠点数:4600店)
●テーマ
・全店全車扱いから丸2年経過。何か変化はあったのか?
・全店全車種扱いの長所と短所は?
トヨタの販売現場は、全車種取り扱いになったことで、提案の幅が大きく広がり、全体に好調だ。さまざまなニーズの受け皿としてアルファードが選ばれ、大きく台数を伸ばした印象が強い。
しかし量販に軸足が置かれ、サービスの質が低下したと嘆く声も多くある。良質な販売や管理を求めるユーザーの声もトヨタの特徴だ。販売台数の確保だけでなく、商品やサービスの品質維持が、今後の課題であろう。
クルマが統合された一方、チャンネルカラーはしっかりと残る。トヨタチャンネルには、高級のトヨタ店、落ち着きのトヨペット店、温和なカローラ店、若々しいネッツ店というイメージがあり、店作りに反映してきた。
店舗の雰囲気から制服のデザイン、営業マンの話し方や所作に至るまで、チャンネルイメージに合わせて教育されてきたものだ。売るクルマが同じだからこそ、お店の特徴や雰囲気で購入店を選ぶ。これもまたトヨタならではの買い方となるだろう。
競争激化で、ユーザーにとって販売条件がよくなる反面、全店全車取り扱いにはデメリットもある。大きな影響は販売店舗数の減少だ。地域にひとつだけの販売店が競争に敗れ姿を消す。こうした影響が、ユーザーに及ぶことも忘れてはならない。
全店全車販売開始後に登場したハリアー、ランクル、ノア/ヴォクシーなどは、相当の販売台数を記録している。なかでも元専売店は、売り方を知っているし、安心感があり強い。
チャンネルによって違う「新規取扱車種」をどう売るかが、併売化後のトヨタ販売競争に勝ち残るカギだ。
(TEXT/佐々木 亘)
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