日本と欧米の衝突安全・燃費基準は別物!? 水野和敏緊急提言「日本車が世界に取り残される」

日本と欧米の衝突安全・燃費基準は別物!? 水野和敏緊急提言「日本車が世界に取り残される」

 日本車は品質、性能、バリューなど、あらゆる面で世界の基準をリードしていると思っていないだろうか?

 今、日本車は世界基準から見ると、大きく引き離され、凋落の一途をたどっていると水野和敏氏は危惧している。その理由とは!?

※本稿は2022年12月のものです
文/水野和敏、ベストカー編集部、写真/ベストカー編集部 ほか
初出:『ベストカー』2023年1月10日号

■「欧州車の評価は高め、日本車はあまり褒めない」というご意見もいただくのですが

自動車エンジニア、ジャーナリストである水野和敏氏。日産 R35型GT-R開発者としての経歴はあまりにも有名
自動車エンジニア、ジャーナリストである水野和敏氏。日産 R35型GT-R開発者としての経歴はあまりにも有名

 水野和敏氏は半年に一度、自身が主催するコミュニティのオフ会として、海老名市で開催される講演会で、ベストカーもコラボして、より皆さんが「知りたい」テーマを取り上げている。

 今回は「世界における日本車の評価」がテーマ。自動車の開発を牽引してきた水野氏だから伝えられる、奥深い話に参加者も興味津々だった。

*   *   *

 皆さんこんにちは、水野和敏です。今回は、ちょっと耳の痛い話かもしれません。

 皆さんは走行性能や排気と燃費、そして衝突安全性など、クルマの基礎となる商品力について、世界で日本車はどんなレベルにあると思っていますか?「上位に決まっているだろう……」このような答えが返ってくるでしょう。

 私が(『ベストカー』)本誌記事『水野和敏が斬る!!』での評価において、ベンツやBMW、プジョーなどの欧州車の評価は高めで、日本車はあまり褒めない、というご意見も稀にいただきます。

 改めて申し上げますが、私は趣味ではなく、プロとして、お客様のためのクルマ作りをしてきました。プロである以上、中立な視点から、自分の嗜好や憧れなどは抱かないようにしてきました。

 それは、本誌での評価も同じです。さらに加えると、クルマをモノとして比較や評論するのではなく、社会環境や法律規定などを含めた開発の背景、メーカーの狙い、ターゲットカスタマーとマーケット、製造の造りと精度、開発陣の技術や思考力のレベルなどまで含めて、評価をします。

 なぜなら、開発されるクルマのスペックなどを決める主導権はその国の文化や価値の優先度、そして法律の規定やお客様の願望と声にあり、メーカーはそれらを受けて、クルマという商品の開発をしているからです。

日本車を「あえて」低く評価しているなどということはない。自動車開発の背景を知れば、欧州のクルマ作りの真剣さがわかる
日本車を「あえて」低く評価しているなどということはない。自動車開発の背景を知れば、欧州のクルマ作りの真剣さがわかる

 例えば欧州のようにガソリンが高額で、生活必需品として走行距離や耐用年数も長く、走行環境や法規の規定も厳しく、顧客側も選択の知識をきちんと持っている状況から生み出されるクルマ。

 これとは対照的にクルマはどれも同じと考えるユーザーが多く、休日や近場しか乗らず、車両の生涯走行距離も10万km以下。

 走りより便利さや買い得感が大切、あまり法律規定も興味はないとお客様が思う市場環境で売ろうとするクルマ。両者ではおのずと基本性能や耐久信頼性、維持費、排気性能や燃費、そして開発や製造の技術、衝突安全性などへの取り組みは違いますし、それがグローバルな競争の商品力に繋がります。

 例えば皆さんが外国に行くと、走っている車型の違いを感じると思います。

 セキュリティや衝突安全、実用性を重視するアメリカでは地上高の高いSUVと、大きめのセダンを多く見ます。

 一方、高額な燃料代と高速の走り、長い耐用年数と生活実用性、さらに社会環境や安全性を重視するヨーロッパでは空力に配慮したSUVや5ドアハッチバックが主流です。

 そしてミニバンやSUVチックな車型の多さは日本独特の光景です。

 皆さんはこのように考えてみたことがありますか?

次ページは : ■各国の風土、文化、顧客の心がクルマを作る

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