信号待ちなどでクルマが停止したときに、エンジンを停止させる「アイドリングストップ」。停止中の燃料消費を抑えることで燃費を改善(=排出されるCO2を削減)するという低燃費技術だが、昨今はその効果に対して疑問視する声も多く、実際トヨタは、ガソリン車のアイドリングストップ機能を順次廃止している。
そうはいってもすでにアイドリングストップが搭載されているクルマなら、多少でも燃費が改善するのだからお得でしょ?? と思うところだが、トータルで考えれば、アイドリングストップ非搭載車と比較して、決してお得とはいえない。
文:吉川賢一
アイキャッチ写真:Adobe Stock_tarou230
写真:TOYOTA、Adobe Sock、写真AC
トヨタは「今後も採用しない方針」
まず最初に、本稿で取り上げていくのは、純ガソリンエンジン車のアイドリングストップ機構であり、ハイブリッド車に搭載されるアイドリングストップ機構ではないことを、お伝えしておく。
トヨタは、アイドリングストップをいち早く採用してきたメーカーだが、冒頭で紹介した通り、一部のガソリン車において、アイドリングストップ機構の搭載を廃止している。たとえば、カローラ1.8Lガソリン車(2018年デビュー)、RAV4 2.0Lガソリン車(2018年)、ヤリス1.5Lガソリン車(2020年)、ハリアー2.0Lガソリン車(2020年)などだ。2018年以降に登場したトヨタ製の純ガソリン車から外すようになったようで、2018年以前に登場したカローラフィルダーや、ライズ、ルーミーといったOEM車には、いまだにアイドリングストップが搭載されている。
この理由について、トヨタ広報担当に取材したところ、「(燃費やCO2といった環境性能で)充分に競合性があることと、アイドリングストップ搭載車であっても、ユーザーが機能を停止させているケースが多い。」とし、「(ガソリン車へのアイドリングストップ機構搭載は)今後も採用しない方向で進めている」としていた。
ただ他メーカーでは、いまも(ガソリン車に)アイドリングストップを搭載しているケースが多い。たとえば日産はセレナ、ルークス、デイズ、NV200バネットなど、ホンダはNシリーズ全種、ステップワゴン、フリード、VEZEL、シビックなど、スバルは最新のレヴォーグレイバックまで全て、などだ。わずかであっても、アイドリングストップによるCO2削減効果に期待したい、という考えなのだろう。ただし、スカイライン3LターボやZR-V、三菱のガソリン車(デリカD:5やエクリプスクロス等)など、アイドリングストップが付いていない車種もあるにはある。
オフにしておいたほうが、バッテリーが長持ちする
冒頭で触れたように、アイドリングストップの目的は燃料消費量の低減(=CO2排出量削減)だ。その効果はどのくらいなのかというと、一般的な2.0Lクラスのエンジン車の場合、10分間のアイドリングで消費するガソリンは130mlほどで、1時間だと780ml、ガソリン代に換算すると1時間あたり140.4円(2023年9月上旬時点のレギュラーガソリン全国平均180円/Lで算出)となる。
これがアイドリングストップをオンにしていれば削減されるわけだが、1時間ものアイドリングストップは、長い渋滞やストップ&ゴーが相当激しい環境下でないと到達するとは考えにくく、ガソリン代の節約量も正直なところ微々たるもの。
燃料代だけみれば「それでもないよりはマシ」と思えるが、実はアイドリングストップ機能を使うことで、バッテリーの劣化が早まり、バッテリーにかかるコストが増えてしまう。アイドリングストップ搭載車のバッテリーは、アイドリングストップ非搭載車用のバッテリーよりも交換サイクルが早く、アイドリングストップ非搭載車の「3~4年に1度」に対し、アイドリングストップ車用バッテリーは多くの場合「18か月または24か月」と、おおよそ「2分の1」程度の寿命。そのうえ、アイドリングストップ車のバッテリーは非搭載車のそれよりも1.5倍ほど高価。アイドリングストップ車は、頻繁に始動と停止を繰り返すことでバッテリーにかかる負荷が大きいため、高性能なバッテリーを短いサイクルで交換する必要があるからだ。
昨今の物価高騰のなか、バッテリーの交換頻度がこれ以上早まるのはお財布に厳しく、また上記で試算した通り、アイドリングストップによって得をしたガソリン代では、このバッテリーにかかるコストをカバーしきれない。アイドリングストップに関してはほかにも、再始動時のもたつきや振動・騒音を嫌う人も多く、また、高性能なバッテリーの交換サイクルが早まることが(多少CO2排出量が削減されたとしても)ほんとうに環境によいのかという、環境面での疑問もある。アイドリングストップ搭載車であっても、機能をオフにしておくことで、バッテリーの交換頻度は長くすることが可能。少なくとも、コストや使用感で考えた時には、アイドリングストップはオフにしておいたほうがいいと考えられる。
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コメント
コメントの使い方私の車スズキアルトは10年ほど乗っています。常にアイドリングストップを使っています。バッテリー交換は「3~4年に1度」です。この記事のように「18か月または24か月」と短くないです。またエンジンとか不具合故障は全くないです。
ホンダ車は、アイドリングストップ機能のキャンセルスイッチ(ボタン)すら装備されていないので、市販の「キャンセラー」を付けるしか手段がないが、割と簡単につけられます。
アイドリングストップ装備の車のバッテリーは高価だし、ゴーストップが多い走行をしていると2年も経たないうちにダメになるから『財布には厳しい』
やはりトヨタはお客様のこと、限りある資源のことをきちんと考えてくださっている。これぞ正しいSDGsではないか。
考えてないから頭一つ出たセールスポイントとして見せかけだけでアイスト付けたんだろ。
最近になってネガ情報がユーザーに広まってきて、セールスポイントにならないから廃止しただけの話。
ホンダのフィットも、昨年のマイナーチェンジでアイドリングストップが廃止になりましたね。