車を注文してから納車までの期間は、日本車の場合、1~1.5か月が多い。在庫車があれば2週間程度だが、今は車の売れ行きが下がり、保管コストも加わるために在庫車をあまり持たなくなった。
こうした状況のなか、異例ともいえる販売状況で話題になったのがトヨタの新型スープラだ。当初、発売前の段階で一部グレードの初年度分が完売状態にあることが判明。
その好調ぶりはスポーツカー市場に大きな希望をもたらしたが、一方で販売面での対応は後手に回っている印象もある。
5月に生産台数を上乗せしたが、現在の納期は短縮しているのか? 最新の販売状況とともに、スープラの「売り方」は正しかったのかを今一度検証したい。
文:渡辺陽一郎
写真:茂呂幸正、TOYOTA
今買っても約1年待ち!? 新型スープラ納期の最新実態は?
納期の長さで驚かされたのがトヨタ スープラだ。発売は2019年5月17日だが、予約受注は3月上旬に開始した。注文を早めに募っておけば、人気グレードなどの販売動向がわかり、生産や納車も効率良く行える。
ところがスープラは、メーカーが予想した以上の人気車であった。直列6気筒3Lターボエンジンを搭載する「RZ」は、3月上旬に(つまり数日間で)、2019年の受注枠を使い切ってしまった。
直列4気筒2Lターボエンジン搭載グレードの「SZ」や「SZ-R」も、2019年4月上旬には、各販売会社とも「残りの台数はわずか」という状態になった。
そして、販売店は3月中旬から4月にかけて、「RZ」の購入を希望するユーザーには「2020年に入らないと受注できない」と案内していた。
状況が変わったのは2019年5月17日の発表においてだ。「本日より受注を再開できることになった」という案内が行われた。
改めて販売店に尋ねると「日本向けのRZを1500台上乗せしたらしい。お客様の反応を見ると、RZが圧倒的に人気だから、生産台数の上乗せもRZで行っている」という。
それでも納期は「2020年に入ってから」なのだが、以前は受注可能になるのが2020年だったから、大幅に縮まったと考えられる。結局のところスープラの納期は、8か月から1年少々と考えれば良い。
その一方で“マットストームグレータリック”に塗装された「RZ」は、全国で24台の抽選になる。生産台数に限りがあるためで「2019年5月17日から6月14日に、抽選販売専用サイトで受け付ける」としている。
スープラが採った“抽選制”は過去に成功したとは言えず……
抽選でユーザーを決めた例には、直近では2015年10月に発売された先代ホンダ シビックタイプRがあった。英国工場で生産される輸入車だが、限定生産ではない。それでも750台に限り、ホームページで購入希望者を募った。
膨大な応募があったが、中古車販売店を含めた業者も多く含まれ、すべてがユーザーの手に渡ったわけではない。
ホンダカーズのセールスマンからは「歴代シビックタイプRをすべて購入しているお客様が抽選で漏れた。私には何もできず、大変申し訳なかった」という声も聞かれた。
スープラの抽選に関しては、利用規約の「禁止事項」として「転売その他自ら所有又は使用する目的を有しない者による商談申込」という記載がある。
要は業者が転売目的で買うことを禁じているが、家族の購入は当然ながら許され、実質的に業者を締め出すことは難しいだろう。
また、利用規約で「自ら所有又は使用する目的を有しない者」の購入を禁じるのは勝手だが、常識で考えると矛盾がある。新車の販売会社が、業者に新車を売る「業販」は、ごく普通に行われているからだ。
「一般のお客様に直接売りたい、業者に販売してプレミア価格の中古車になったりするのは困る」という気持ちもわかるが、それを押し通せば、顧客を選別する売り方になってしまう。
シビックタイプRの時もそうだったが、ユーザーに対して抽選で「商談を行う権利」を与える発想は、思い上がりだろう。
また、利用規約の「本車両売買契約の成立」には、「弊社(トヨタ)は、ユーザーによる商談申込を、ご指定の販売店へ取り次ぐのみであり、(中略)本車両に関する売買契約の成立に関しては、なんら保証するものではありません」と記載されている。
つまり、ユーザーを抽選で選別して、販売店に取り次ぐ仕組みは作ったが、それ以上の保証は負わない、販売店とユーザーの間で解決するとしているわけだ。
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