シンプルな機構のため、既存車両への対応にも期待できる
これまでヤマハは、2015年に自律走行ロボの「モトボット」、2017年に自立バイクの「モトロイド」という実験車両を発表してきた。
モトボットは、無人運転ロボットが通常の車両を運転するもので、車両を操作&運転する人側の情報の可視化や、車両挙動の関係性を解明するのが目的。2017年にはVer.2に進化し、200km/h以上でのサーキット走行も実現した。
モトロイドは、低速や停止時の自立を可能にしたモデル。メインフレームに沿って後輪につながった軸を回転させることで重心をコントロールしている。
今回のAMSASには両者の技術が活かされている。モトボットからは走行状態の技術が、モトロイドからは停止状態での技術が活用され、長年の研究の集大成とも言えそうだ。
そしてAMSASは構造がシンプルなため、フレームへの変更が最小限で済み、既存車両に後付け可能なのがポイントだ。
モトロイドは大がかりなシステムで、バイクの根本から作り替える必要がある。なお、ライバルのホンダは後輪をスイングさせることで自立させる「ライディングアシスト2.0」を2021年11月に発表したが、こちらも車体後半を入れ替える必要がある。
また、モトロイドやホンダのシステムは制御が強く、大きな力を加えても倒れない。一方AMSASは、これらに比べるとアシストする力が弱く、故意に倒そうとすれば倒れてしまうが、実際のシチュエーションでは有効。その分、軽量シンプルかつコストを抑えられ、後付けが可能というメリットがある。
ちなみに、電力はそれなりに必要だが、バッテリーの増設がマストかどうかは「ノーコメント」。システムは前輪ではなく、後輪でも搭載OKと自由度も高い。
現時点での市販化は困難ながら「+5万円」を目標にしたい
現時点でのシステムは非常に高価で、残念ながら市販化に関しては未定。ヤマハの日高社長は「さらに小型軽量化、シンプル化が必要。コストの問題がクリアできれば、今すぐにでも市販したい。私の感覚では(通常車両から)+5万円程度なら市場に受け入れてもらえる」とし、「四輪のアイサイトのようにAMSAS仕様が一番売れるようつくりこんでいきたい。期待してほしい」とコメントしていた。
「+5万円」は、一昔前の二輪用ABSの感覚。市販化されれば、特に免許取り立てのビギナーや、足着きに不安な人に有効だろう。+5万円なら欲しい人は相当数存在すると思われる。
ベテランにとっても300kg越えの大型クルーザーなど重量級モデルで大いに恩恵があるはず。やはり価格が課題になるだろう。
ヤマハから世界初のブレーキ連動レーダーが2023年にも発売!
一方で、世界初のバイク用ミリ波レーダー連携ブレーキシステムの市販化が決定した。
搭載されるのは、11月のミラノショーで発表されたスポーツツアラーの新作、トレーサー9GT+。ヤマハ初のレーダーで前方の交通状況を探知し、他メーカーでも採用が始まっているアダプティブクルーズコントロール(ACC)が使用可能に。前方車両の速度に応じて車両が自動で速度をコントロールし、一定の車間を保ってくれる。
さらに世界で初めてレーダーを利用した自動ブレーキ制御を採用。ミリ波レーダーとIMUが感知した情報を基に、ライダーのブレーキ入力が不足している場合、前後配分を自動調整しながらブレーキ力をアシストする。
さらに電子制御サスも連動し、違和感なく安全に減速できるのがバイクならではのポイントだ。なお、ブレーキ入力が全くない場合はメーターの画面で警告。そのままブレーキングしない場合、自動停止はしない。
レーダーの基本デバイスはボッシュ製だが、前後ブレーキの制御や電子制御サスとの連動システムはヤマハが独自開発している。
ヤマハの発表によると、日本での発売は2023年夏以降の予定となる。
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