旧車オーナーにとって悩みのタネである絶版パーツ。しかし金属3Dプリンターによるパーツ製作が、いよいよ現実的になってきた。強度、耐久性、コストともクリアしつつあり、レストアや動態保存の革命児になりそうだ。
東京オートサロンに3プリンターによるCR110のシリンダーを出展し、話題になったNTTデータザムテクノロジーズに詳しく話を訊いてみた。
文:沼尾宏明/写真:NTTデータザムテクノロジーズ、沼尾宏明
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部品かデータがあれば生産終了パーツも量産できる
クルマやバイクの部品は、生産終了から10年程度でパーツの供給が終了するケースが多い。重要な走行部品が絶版になり、代替品がないと貴重な旧車も走行不能になってしまう。そのため旧車オーナーにとってパーツの有無は死活問題だ。
特にエンジンパーツは構造が複雑な上に、高度な金型技術が必要。強度や高熱による耐久性も不可欠だ。仮にワンオフ製作したとしても、とんでもない高額になってしまう。
そんな問題を解決する決め手となりそうなのが金属3Dプリンターによるパーツ製作。オリジナルの部品またはデジタルデータさえあれば複製が可能だからだ。
こうした動きは既に始まっているが、強度やコスト面での課題が残っていた。そんな中、NTTデータの100%子会社である「NTTデータザムテクノロジーズ」(XAM)が、現実的なサービスを開始している。
XAMは、1月に開催された東京オートサロンおよび2月に行われた3Dプリンターの展示会「TCT Japan」で様々な展示を披露。四輪関連ではドリフト車用のエンジンパーツ、二輪ではホンダ往年のWGPレーサーCR110と3Dプリンターで製作した同車のシリンダーなどが大きな注目を浴びていた。
NTTデータの子会社が3Dプリンターでレース部品を供給中
金属3Dプリンターの本格運用が始まったのは2000年頃。当時は金属を溶かすには向いていないCO2(炭酸ガス)レーザーが主流だったが、2006年頃から様々な金属を溶かして固められるファイバーレーザーが登場した。これによりチタンやインコネルといったレースでも使われる合金の使用が可能に。以降、ますます品質と生産性が向上しているという。
XAMは、1970年代から前身がCADを販売するなど、新しい発想での製品設計を提案してきた企業。2006年にNTTデータが株主となり、2020年に現在の名称となった。以前から金属積層造形機で世界シェアNo.1を誇るドイツEOS社の金属3Dプリンターを国内に導入。これを用いた受託開発サービスやR&Dを2010年から本格的に実施している。
現在のところH3ロケットの燃焼室や人工衛星のフレームなど航空宇宙分野が業務のメイン。一方で、ワンオフが得意なことから四輪レースで声がかかり、現在は最高峰レースの一部部品も供給している。
量産車のパーツ製造に関しては、コストが厳しいものの、近頃、二輪四輪の旧車は価値が上昇するばかり。部品供給が途絶え、メーカーに金型がない旧車の部品でも、金属3Dプリンターで再生可能であることをアピールするため、オートサロンなどに出展したという。
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