現在日本車のミニバンは、ラージサイズのアルファード&ヴェルファイア、ミドルサイズはヴォクシー三兄弟、セレナ、ステップワゴン、コンパクトサイズはシエンタとフリードが中心になっており、かなり淘汰が進んでいる。
しかし、しばらく前までは個性的なモデルも少なくなく、ユーザーの選択肢も多かった。当記事ではそんな、主流になれなかったミニバンたちの個性と魅力を振り返ってみた。
いつかまた再び、ミニバンのジャンルも(現在のSUVのように)多くのバリエーションが復活することはあるのだろうか。なかなか難しいとは思いつつ、しばし「逝きし日の面影」を振り返ってみたい。
文/永田恵一
【画像ギャラリー】主流にはなれなかったが、個性的な魅力を持つミニバンたち
■ホンダラグレイト
1999年に登場したラグレイトは、日本で大ヒット車となったオデッセイ(1994年発売)が、アメリカではボディサイズやエンジンの小ささにより伸び悩んだことにより、「アメリカ向けのオデッセイ」としてフルサイズへ昇格させたモデルである。
ラグレイトの個性と魅力は、なんといっても(北米向けにカナダで生産されるミニバンだけに)すべての要素にタップリとした余裕があった点だ。
具体的には全長5105mm×全幅1935mm×全高1740mmというボディサイズを生かし、7人乗りの日本仕様ではゆったりとしたサイズを持つキャプテンシートとなる2列目シート、三人掛けも苦にならない3列目シートという室内空間、中低速のトルクを重視した3.5リッターV6エンジンの搭載による余裕ある動力性能といった要素が挙げられる。
アメリカ車的な魅力に溢れていたとも言い換えられるラグレイトだったが、特にボディサイズが日本での使用には向かなかったこともあり、発売当初から販売は伸び悩んだ。
奮闘むなしく日本では2005年に後継車なく絶版。なおラグレイトは、アメリカでは「オデッセイ」の車名で販売され、フルモデルチェンジを繰り返しながら現在は5代目モデルとなっている。
■マツダビアンテ
2000年代後半、マツダはミドルサイズにプレマシー、ラージサイズはMPVという、全高がそれほど高くない乗用車に近いキャラクターを持つミニバンが存在した。しかしこの頃には日産セレナに代表されるミドルハイトミニバンがミニバン市場において勢力を高めており、その分野に対応すべくマツダが用意したのが、2008年に登場したビアンテだ。
ビアンテの魅力は個性的な内外装を持っていたことである。
エクステリアでは歌舞伎の隈取をイメージしたフロントマスク、インテリアではセカンドシートの足元空間を不必要なくらいに拡大できるリビングモード、2列目シートの左右を離しキャプテンシート的にユッタリと二人が座れ、3列目シートへのアクセスもしやすくなるウォークスルーモードなどを持つ豊富なシートアレンジを思い出す。
またビアンテは、ミドルハイトミニバンでは唯一実質的な3ナンバー幅だったこともあり、室内幅にも余裕があった。
しかし、ビアンテはプレマシーをベースにしていたこともあり、運転席の着座位置が上げられず、ハイトミニバンとしては着座位置が低かったためミニバンらしい見晴らしの良さに欠けていた。
これに加えて2リッターエンジンの低速トルクの薄さや乗り心地の悪さなど、全体的に完成度が低かったのもあり(登場後の改良でずいぶん良くなったが)販売は低迷。
ちょうどこの頃にマツダがラインナップの「選択と集中」を決断。ミニバン市場から撤退したこともあり、2018年にあえなく絶版となった。
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