令和の小型車戦国時代に音沙汰なし… 超名門「マーチ」はどうすればよかったのか

■マーチ目当ての顧客がノートやデイズや軽自動車を契約していくことも..

 このあたりを販売店ではどのように見ているのか。

 日産ディーラーの営業マンに、マーチについて尋ねると以下のように返答された。

 「マーチは低価格で購入できる運転しやすいコンパクトカーだが、最近はノートに力を入れている。先代ノートにe-POWERが加わると、知名度も高まり、ノーマルエンジンの売れ行きまで伸びた。また軽自動車のルークス(先代型はデイズルークス)も人気車になり、小さなクルマはノートと軽自動車という選択になった」。

令和の小型車戦国時代に音沙汰なし… 超名門「マーチ」はどうすればよかったのか
新型ノート 2016年にe-POWERが加わり、小型/普通車の登録台数の1位に

 先代ノートは、現行マーチの登場から2年を経過した2012年に発売された。

 マーチに比べると後席と荷室が広く、内装の造りも良いから相応の人気を得た。2016年にe-POWERを加えると、さらに売れ行きを伸ばして、小型/普通車の登録台数1位になっている。

 また2013年には、三菱と共同開発した軽自動車の先代デイズ、2014年にはデイズルークスも登場して、2015年には両車を合わせると1か月平均で1万2558台が届け出された。

令和の小型車戦国時代に音沙汰なし… 超名門「マーチ」はどうすればよかったのか
現行型デイズ(2013年) 2014年にはデイズルークスも登場 両車とも魅力的な軽自動車だ

 この2車種の軽自動車も、インパネ中央のエアコンスイッチには、光沢のあるピアノブラックのタッチパネルを採用する。質感はマーチよりも高かった。また先代デイズでも、後席はマーチよりも広く、天井の高いデイズルークスになると後席を畳んで自転車なども積める。デイズとデイズルークスは魅力的な軽自動車で、2014年の末には、両車に衝突被害軽減ブレーキも追加装着された。

 以上のように2010年に発売された現行マーチは、2012年に登場した先代ノート、2013年のデイズ、2014年のデイズルークスに需要を奪われた。マーチを目当てに販売店を訪れた顧客が質感などに不満を感じた時、ノートや軽自動車を推奨して売れ行きに結び付けるのは、当然の成り行きであった。

■日産の貴重な財産「マーチ」の今後はどうなるのだろうか

 マーチにとって最大の敗因は、内外装や乗り心地の質が低かったことだが、発売後の改良を怠って衝突被害軽減ブレーキなどの採用が遅れたことも影響した。質の向上や安全装備の充実は、発売後にも入念に行うべきだった。輸入車だから改良しにくいのであれば、国内生産も検討すべきであった。

 そして現行マーチは発売から10年以上を経過したので、早急に次期型を発売したい。10年を経過すると、現行型のユーザーがフルモデルチェンジを待ち切れず、ほかの車種に乗り替えてしまうからだ。

 現行ノートはハイブリッド専用車になって価格は200万円を上まわり、マーチからの乗り替えに適さない。販売店では「マーチのお客様には、同程度の価格で買えるデイズを推奨している」というが、軽自動車を好まないユーザーは、他社のヤリスやパッソに乗り替える可能性もある。

 その意味で導入に期待したいのが、欧州で販売されるコンパクトカーのマイクラだ。全長は3999mmだから、マーチよりは長いが、ノートに比べると短い。ホイールベース(前輪と後輪の間隔)も2525mmで、ノートとマーチの中間に位置する。

令和の小型車戦国時代に音沙汰なし… 超名門「マーチ」はどうすればよかったのか
現行型マイクラ 欧州で販売されるコンパクトカー(全長3999mm)

 マイクラは全幅が1743mmと少しワイドだから、3ナンバー車になるが、コンパクトカーの範囲に収まって外観はスポーティだ。日産の商品企画担当者は「マイクラのエンジンは直列3気筒1Lターボで国内市場に合わない」というが、設計が古く質感に不満を抱える現行マーチを売り続けるよりは、ユーザーのメリットに結び付く。

 あるいはルノーとの業務提携を生かして、トゥインゴをマーチとして導入する方法もある。トゥインゴの丸みのある外観は、マーチのイメージにも合うからだ。

 日本のコンパクトカー市場を支えてきたマーチの実績と知名度は、日産にとって貴重な財産だ。マーチの名称に相応しい、上質で買い得なコンパクトカーを投入したい。それが日産の復権にも繋がる。これ以上貴重な基幹車種を切り捨てると、日産はさらに危うい方向へ進んでしまう。

【画像ギャラリー】月平均1万台以上を登録していたこともあるマーチの歴代写真はこちら

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