■2010年の4代目以降より売れ行きが低迷
1992年に登場した2代目マーチは、1993年に1か月平均で1万台以上を登録した。今のヤリス(ヤリスクロスを除く)と同等かそれ以上だ。2002年に発売された3代目の先代型も、2003年には1か月平均の登録台数が1万台を超えた。
それなのに2010年に登場した4代目の現行型は、2012年(2011年は東日本大震災の影響が大きいから除いて考える)における1か月平均が3308台だった。2/3代目は発売の翌年に1万台以上を登録したのに、現行型の2012年は3分の1に留まる。発売時点から売れ行きが低迷した。
現行マーチは、発売時点で1か月の販売目標を4000台に設定していた。この数値は現行型が生産を終えるまでの平均値を意味するから、発売直後は目標台数を上まわる必要がある。しかし2012年の時点で、早々に下まわった。
しかも今では現行マーチの発売から10年以上を経過したので、1か月の平均登録台数は、前述の500台以下まで低下した。フルモデルチェンジの周期が長引いたことも、販売不振の原因だ。
■現行マーチの売れない理由とは
さて現行マーチが売れない理由として、商品自体では質の低さが指摘される。
例えばインパネ周辺の素材や形状は、コンパクトカーの中でも低い部類に入る。リヤゲートを開いて後席を倒すと、広げた荷室の床面部分に隙間が生じた。運転感覚も同様で、乗り心地には粗さが感じられ、操舵感は曖昧だ。
コンパクトカーはレンタカー料金が安いので、仕事や旅行で遠方まで出かけた時に利用するユーザーも多い。借りるたびに、マーチ、スイフト、ヤリス、マツダ2などを運転すると、コンパクトカーの良し悪しも自然に分かる。このような事情で、マーチが売れ行きを下げた事情もあった。
マーチがタイ製の輸入車であることも影響した。タイ工場の生産精度に問題はないが、輸入車だとグレードやメーカーオプションを豊富にそろえられない。現行マーチもエンジンは1種類で、4WDは用意されず、メーカーオプションの数も少ない。もちろんe-POWERを含めてハイブリッドはなく、ユーザーが自分に合った仕様を選びにくいことも、販売面でマイナスに作用した。
そして輸入車だから、在庫車に好みのボディカラーがない時など、新たに発注すると発売当初は納期が数か月に伸びた。ほかの車種にも当てはまる話だが、海外で製造された車両を輸入すると、バリエーションと納期に不満が生じやすい。
■質・乗り心地・安全装備などに不満が散見
輸入車という影響もあり、衝突被害軽減ブレーキの装着も遅れた。マーチに採用されたのは2020年7月になってからだ。軽自動車のムーヴなどは2012年に採用しており、コンパクトカーも、この時期から衝突被害軽減ブレーキの装着を積極的に進めた。日産もノートには、2013年に単眼カメラ方式を採用している。
衝突被害軽減ブレーキはユーザーの関心が高い装備で、2015年頃には、非装着車は販売面の不利が目立っていた。それなのにマーチでは装着されない状態が長く続いたから、日産の売る気のなさが感じられた。
そのためにマーチの登録台数は、2015年には1か月平均で1290台、2017年には1190台、2019年には779台と下がり、2020年には前述の500台を下まわった。現行マーチは、内外装の質、乗り心地、安全装備まで、多岐にわたる不満が散見されて売れ行きを下げてしまった。
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