■現地の人はULEZについてどう思っているのか?
ロンドン郊外でR129のSL350を保有する筆者の友人のイギリス人弁護士にULEZについて聞いてみた。
筆者:ULEZについてどう思う?
友人:まずロンドン中心部にはクルマで行かなくなった。SL350ではいろいろと不便なのでもう一台テスラを買ったよ。
筆者:テスラだったらULEZチャージなしで乗り入れられるよね。
友人:たしかに混雑税の15ポンド払えば乗り入れられる。だけどロンドンでは多くの道路で最高速度が時速20マイル(32km/h)に引き下げられたうえ、一瞬のスピード違反じゃなくて平均速度を取り締まるカメラまで取り付けられているのでスピードメーターばっかり見ていなきゃいけないから凄いストレスがたまる。
そして駐車料金もバカ高い。だからテスラでもわざわざ中心部に車で行こうとは思わないな。
筆者:それはもうクルマでは来ないでくれ、と言われているのに等しいね。
友人:さらに渋滞もひどくて、クルマでオフィスまで通勤しようとすると15マイル(24km/h)行くのに一時間半もかかるんだ。
筆者:コロナのせいで少しはましになっていると思ったけれど。
友人:いやむしろ公共交通機関を避ける人が増えたので酷いものだ。公共交通機関が貧弱だから、どうしてもクルマを使わなければいけない人たちも結構いるんだよ。
筆者:なるほど。それと古いクルマ乗るのも大変だね。
友人:そうなんだよ、R129のSL350は燃費も排出量もまだマシだから、一律に新規登録年とかユーロ4とかで規制するのは変な話だと思うよ。文句言いたいことはたくさんあるけど、正直言ってこれは新たな金儲けの仕組み、つまり新しい税金だと思ってる。
なかなか興味深いぶっちゃけトークではないかと思う。
■海外主要都市での乗入れ規制の現状
ロンドン以外の欧州主要都市でも乗入れ規制が導入されている。フランスではすべての車両にクリテール(Crit’Air)という汚染物質の排出量に応じて6種類に分類されたステッカーをフロントガラスに貼ることが義務付けられている。
クリテール4、クリテール5はそれぞれディーゼル車のユーロ3基準(2001年から2005年登録)、ユーロ2基準(1997年から2000年登録)を指し、また1996年以前登録のクルマはガソリン、ディーゼル問わずステッカーがもらえない。
現状月曜日から金曜日8時から20時までに拡大パリ圏を通行できる乗用車はクリテール4まで(2021年6月からはクリテール3まで)、パリ中心部を通行できるのはクリテール3までのみ。違反すると68ユーロ(約8800円)の罰金が課せられる。
2022年からはさらに厳格になり、拡大パリ圏、パリ中心部ともクリテール2(ガソリン車ユーロ4基準、ディーゼル車ユーロ5基準)、2024年にはクリテール1(ガソリン車のみ、ユーロ5基準)までのクルマしか通行できなくなる。
公共交通機関が発達していてクルマの所有率が4割以下というパリでは2024年にはディーゼル車が、2030年にはガソリン車の乗り入れが禁止される。
ドイツではクルマの汚染物質の排出量に応じて赤、黄、緑の3段階に分けられた環境ステッカーを貼ることが義務付けられており、緑のステッカーの貼ってあるクルマ(ガソリン車でユーロ1基準、ディーゼル車でユーロ4基準もしくは粉塵フィルター付きユーロ3基準以降)は全ての低排出ゾーンに指定されている都市を通行することができる。
またベルリン、ハンブルグ、ダルムシュタットにてユーロ6基準を満たさないディーゼル車が走行できない区域が限定的ではあるが設けられた。ダイムラーやポルシェが本社を置くシュツットガルトではユーロ5基準を満たさないディーゼル車は市内全域に乗り入れることができない。
イタリアでは州によって規制が異なるが、たとえばミラノではガソリン車でユーロ1基準(1992年12月登録以降)、ディーゼル車でユーロ3基準以降のクルマしか月曜日から金曜日の7時半から19時半までの間は通行できない。
スペインではDGT(スペイン交通局)環境ステッカーを貼ることが義務付けられており、首都マドリードの低排出ゾーンであるマドリード・セントラルにはガソリン車でユーロ3基準、ディーゼル車でユーロ4基準を満たさないと乗り入れることができない。
バルセロナ市内には上記基準を満たさないクルマは月曜日から金曜日の7時から20時に乗り入れることはできない。
環境問題をテコにして域内の経済活性化を目指しているEUやイギリスではやはり乗入れ規制が厳しくなってきていることが分かる。
アメリカではバイデン政権に代わって環境問題が再びフォーカスされるようになってきているが、カリフォルニア州にてゼロ・低排出車専用レーンが存在するものの、都市への流入規制はこれまでのところない。
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