帝王トヨタ一強!! シェア5割超えの盤石体制が国内市場にもたらす功と罪

■2020年のトヨタ販売体制変更で登録台数が急増

 3つ目の理由は、2020年にトヨタの全店が全車を扱う体制に移行したことだ。以前のアルファードやハリアーはトヨペット店、ヤリスも発売時点では東京地区を除くとネッツトヨタ店の専売だったが、2020年5月からは全店で買える。

 その結果、特にアルファードとハリアーは登録台数を急増させた。2020年度の登録台数を見ると、アルファードは前年同期の1.6倍、ハリアーは2020年6月にフルモデルチェンジを受けた影響もあって前年同期の2.8倍だ。

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アルファード 特別仕様車 S“TYPE GOLD”(ガソリン・2WD)
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ハリアー 2020年6月にフルモデルチェンジをおこなった

 コンパクトカーのルーミー&タンクは、全店が全車を扱う体制になったのを受けて、2020年9月のマイナーチェンジでタンクを廃止した。需要がルーミーに集まり、同年10月以降の登録台数は前年同期の1.5~1.7倍に達する。全店が全車を売る体制になり、売れ行き一層伸びて、販売ランキングの上位に入った。

帝王トヨタ一強!! シェア5割超えの盤石体制が国内市場にもたらす功と罪
ルーミー 2020年9月のマイナーチェンジよりタンクを廃止したことにより、需要が集まった

■販売制度の変更でデメリットも..

 ただしその弊害もあり、売れ行きを下げたトヨタ車も少なくない。筆頭はアルファードの姉妹車になるヴェルファイアだ。現行型が登場した時にはヴェルファイアの売れ行きが多かったが、その後のマイナーチェンジでフロントマスクを変更すると、順位は逆転してアルファードが売れ始めた。

 この販売格差が、全店で全車を売る体制になって拡大した。アルファードは、以前はアルファード&ヴェルファイアを扱わなかったトヨタ店やトヨタカローラ店でも堅調に売られ、以前はヴェルファイアを専門に販売していたネッツトヨタ店でも「アルファードを選ぶお客様が増えた」という。

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ヴェルファイア 特別仕様車 Z“GOLDEN EYES”(ガソリン・2WD)

 その結果、2021年3月の登録台数は、アルファードが1万3986台、ヴェルファイアは1183台になり、約12倍の販売格差に達した。基本的に同じクルマなのに、ヴェルファイアはアルファードの8%しか売れない。

 このほか2020年度で見ると、プリウスは前年同期の52%、アクアは53%、C-HRは57%、クラウンは74%の売れ行きだ。特にプリウス、アクア、C-HRは、現行型が登場した時から全店で販売していた。そのために発売当初は全店扱いのメリットで好調に売れたが、2020年5月以降は、その優位性も薄れて売れ行きを下げた。

■販売格差が起こるのも想定されていた⁉

 プリウスとアクアは、以前はハイブリッド専用車の魅力も際立った。環境対応をアピールする企業が、その特徴を表現することも視野に入れ、外観を見ればハイブリッドとスグに分かるプリウスやアクアを営業車に使うこともあった。

 ところが今は売れ筋になるトヨタ車の大半にハイブリッドが設定され、もはや珍しい環境技術でもなくなったから、アクアはヤリスハイブリッド、プリウスはカローラツーリングハイブリッドなどに需要を奪われた。

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カローラ HYBRID W×B(スパークリングブラックパールクリスタルシャイン)

 以前のトヨタ店では、クラウンの顧客がアルファードやハリアーに乗り替えると、自社の顧客がトヨペット店に移ることを意味した。これは困るから、サービスを手厚くするなど一生懸命にクラウンを売ったが、今は自社で普通にアルファードを販売できる。

 その結果販売格差が生じるのは、当然の結果だ。

 ただしこの状況が加速してクラウンが廃止されたり(すでにSUV化する話がある)、アルファードの姉妹車であるヴェルファイアが廃止されると、ユーザーの選択肢を狭めてしまう。

 これは、あらかじめ想定されていたことで、全店が全車を売るようになった目的のひとつも、生き残るクルマを明らかにして車種をリストラすることだった。

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