■本当に必要な車種をしっかりと投入する
ホンダ内部の関係者に話を聞くと、車種再構築のための〝痛みの時期〟だという。
4月に就任した三部敏宏社長は、4月23日の社長就任会見の場で大胆な中期的計画を明らかにしている。その骨子は以下のとおり。
●2050年に完全なカーボンニュートラルの実現を目指す。
●先進国全体でのEV、FCVの販売比率を2030年には40%に、2035年には80%とする。
●2040年にはグローバルで新車販売を100%EV、FCVとする。
●日本国内では、2030年にハイブリッドを含めて新車販売を100%電動車とする。
つまり、日本国内の車種ラインナップでは、10年以内に全モデルEVかハイブリッド、FCVになる、ということで、軽自動車を含めて純内燃機関車は存在しないことになる。が、一方でハイブリッドということは、内燃機関も併用されるということでもある。
グローバルに目を向ければ、10年以内にEV、FCV比率を40%、15年以内に80%に高めるとしているが、ここにはハイブリッドは含まれていない。さらに約20年後の2040年にはこれを100%にすると目標を定めている。しかし、裏を返せば2035年時点でも20%は内燃機関が残るということだ。
とはいえホンダはこの先15年、さらに20年を見据えて完全電動化へと舵を切っている。2040年には内燃機関を搭載した自動車はすべてなくなるという計画だ。FCVは駆動部分はEVそのものだ。EVに発電装置である燃料電池を搭載すればFCVとなる。
EVに関しては、4月に開催された上海ショーで公開されたピュアEVのSUVモデル「e:prototype」を来年春に市販を開始予定。さらに5年以内に10機種のホンダブランドEVを中国市場に投入する計画を進める。
また、GMとの共同で開発が進められている大型SUV「PROLOGUE」を2024年にホンダブランド、アキュラブランドそれぞれで北米市場に投入する。現時点では車名のみが明らかにされているに過ぎないが、積極的にEVのラインナップを拡大する動きだ。
■開発が進められるEV専用スポーツ
これと並行してホンダ独自のEVプラットフォーム「e:アーキテクチャ」の開発が進行しており、2025年以降、グローバルに複数モデルに展開されることになる。当然、日本国内に向けたEVモデルも複数計画されている。
来年にはS660、そしてNSXが相次いで販売を終了することでホンダからスポーツモデルが消滅することになる。しかし、開発現場に近い関係者は「新開発中のEV専用プラットフォームでのスポーツモデルに向けた研究は進んでいる」と証言する。
これより前の2024年には、日本国内に向けた軽規格のEVが投入される。いよいよ軽自動車もEV化されることとなる。
こうした、10年後、20年後のカーボンニュートラルに向けた目標を実現するため、ホンダは開発資源を「電動化」に集中させている。
一方で来年前半に登場するニューモデルは急速に進められた電動化計画が立ち上がる前に開発がスタートしていたモデルたち。ここまで解説してきた電動化計画とはやや矛盾してしまう「内燃機関車」も計画されているが、まさに過渡期の苦しさだ。
本年末で消滅するオデッセイと入れ替わるように新規モデルとして開発が進行中の上級ミニバンは2Lエンジンを搭載したe:HEV。
また、やはり来年にフルモデルチェンジが計画されるシャトルは、複数の情報があるのだが、最新の情報では、現行型のようなコンパクトワゴンではなく、フィットの基本プラットフォームを活かした小型SUVに生まれ変わるというものがある。
これまで本誌スクープ班がその存在をお伝えしてきた直3、1Lターボエンジンを搭載する小型SUVが、シャトル後継車となる可能性が高いということだ。その一方で、あくまでも小型ワゴンを継承するという情報もあり、並行して開発が進められている模様。
来年前半にはシビックタイプRの登場や、ステップワゴンのフルモデルチェンジも予定されている。シビックタイプRは従来型同様、2Lターボエンジンを搭載しながら、後輪をモーター駆動する、スポーツ型ハイブリッドに進化。
ステップワゴンはキープコンセプトのモデルチェンジだが、ミニバンとしての使い勝手を徹底追及。パワートレーンは2Lエンジンを使うe:HEVを踏襲する。
現行モデルの生産終了という暗い話題が相次ぐホンダだが、来年以降、今後5年、さらに10年後に向けた新たな動きがいよいよ始まる!
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