■「EV戦略の中核モデル」という位置づけから考えるbZ4Xの価格
そのうえで、bZ4Xとはまさに、トヨタのバッテリーEV事業戦略の中核モデルだといえる。
となると、新車価格については初代モデルとして少なくとも5年程度(2027年頃まで)は、日本のみならずグローバルでのバッテリーEV市場でのベンチマークとなるべく、トヨタは最終的な値付けを決めているはずだ。
状況としては、1990年代後半にプリウスが登場した時に似ていると思う人がいるかもしれない。
ただし、プリウスの場合、市場導入時点ではジャーマン3(ダイムラー、BMW、VWグループ)やデトロイト3(GM、フォード、クライスラー「当時」)にとって、プリウスは「トヨタの飛び道具」という特殊な存在という見方が強かった。
そうした状況にあることをトヨタも充分認識していたため、その後の量産効果におけるコスト削減についても、正確なロードマップを描くことが難しかったという経緯がある。
■「KINTO ONE」を有効活用したトヨタの戦略
一方、今回のbZ4Xでは、bZシリーズやレクサスを含めた多彩なバッテリーEVラインナップの量産計画を想定しているため、グローバル市場の今後の動きを注視しながらも、コスト削減に向けた道筋は、トヨタとして立てやすいのではないだろうか。
それでも、バッテリーEVにかぎらず新車販売を好調に維持するために重要なことは、リセールバリュー(下取り価格/再販価格)を高めることだ。
要するに、需要と供給のバランスをメーカーやディーラーが実質的にコントロールして、人気を高めるということだ。
そのため、bZ4Xが初代モデルのうちに、マイナーチェンジや年次モデル発表などのタイミングで、段階的に新車価格が下がっていくというシナリオは想像しにくい。
そう考えると、bZ4Xは日本では「KINTO ONE」を活用したサブスクリプションモデルを主体とするなど、ユーザーにとってはリセールバリューへの心配が少なく、またトヨタにとっても市場における資産管理として「手の内化」することが優先されるように思える。
搭載バッテリーのリセールやリユースなどを考慮すると、なおさらサブスクリプションモデルとの相性がよさそうだ。
bZ4Xのサブスクリプションモデルを通じて、テスラや日産などEV事業でトヨタを先行するブランドに対するトヨタの戦略がハッキリ見えてくるのではないだろうか。
■英国販売価格と大きな差異が生じるとは考えにくい 気になるのは日産アリアとの競争
英国市場において、他ブランドのEV価格を見てみると、VWのI.D.4が3万4995ポンド(539万円)から、テスラのモデル3が4万4490ポンド(685万円)から、そしてモデルYが5万4990ポンド(839万円)という設定だ。
これらと搭載バッテリー量などを含めて比較すると、bZ4Xの新車価格は妥当ともいえる。
bZ4Xについては、日本販売価格は英国販売価格と大きな差異が生じるとは考えにくい。そうなると、やはり気になるのは日産アリアとの競争だ。
日産はすでに日本国内でアリアの予約販売を始めているが、エントリーモデルのB6(2WD)は539万円と、bZ4Xの英国仕様価格と比べて107万円も安い。
搭載するバッテリー容量が、アリアB6(2WD)では66kWhで満充電の航続可能距離は470kmに対して、bZ4X Pure FWDは71.4kWhで500km前後としており、アリアB6に対して基本スペックで優位な面がある。
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