新型YZF-R7の2気筒は和製ドゥカティ!? 次は3気筒のYZF-R9で何を目論む?

新型YZF-R7はドゥカティを超えたオリジナリティを持つ

 新型YZF-R7は、回転が落ちてしまってもストトトト〜と粘り強く立ち上がるエンジン特性が、従来の並列4気筒エンジンのスーパースポーツと大きく異なる。加速も一発一発の爆発が体で感じられるもので、単純にアクセルを開けるのが気持ちいい。ヤマハはもっと早くから新型R7を出していればよかったのでは? と思わされる仕上がりだ。

 さらにハイレベルな話をするとLツインやCP2エンジンの不等間隔爆発はトラクション性能に優れ、スライドを抑制する効果があるという。ヤマハは、これを得るために並列4気筒で等間隔爆発のYZR-M1およびYZF-R1のエンジンを、90度V4と同じ不等間隔爆発になるように変更したくらいレースでは重要な要素になる。

YZR-M1は2004年からクロスプレーンクランクシャフトで90度V4と同じ爆発間隔になるように変更された。写真は2009年のYZF-R1に採用された時のもの。直4がV4サウンドを奏でる
YZR-M1は2004年からクロスプレーンクランクシャフトで90度V4と同じ爆発間隔になるように変更された。写真は2009年のYZF-R1に採用された時のもの。直4がV4サウンドを奏でる

 もちろん、ハイレベルな走りができなくても新型R7の2気筒エンジンは高回転型の4気筒エンジンに比べフレキシブルに反応してくれるので、中級者レベルまでなら楽しめる領域が広いのだ。

 加えて、新型R7の楽しさはヤマハならでは設計思想に支えられている。ヤマハはすでに独自の車体パッケージを確立しており、新型R7にはそのノウハウが存分に注ぎ込まれているのだ。それを一言で表すと、コンパクトシャーシ+不等間隔爆発エンジンとなる。

 YZR-M1、YZF-R1の歴史はこれを徹底的に追求してきたもので、MotoGPを始めとするレースでの活躍がその効果を実証している。もはやTRX850の頃のようにドゥカティを模倣しなくても、新型R7はヤマハならではのコア技術だけで充分に成り立つものなのだ。

筆者はサーキットや公道で新型YZF-R7に試乗。ドゥカティのようなエキサイティングさと日本メーカーらしい扱いやすいやすさがバランスよく同居しており、ファンバイクの理想形に思えた
筆者はサーキットや公道で新型YZF-R7に試乗。ドゥカティのようなエキサイティングさと日本メーカーらしい扱いやすいやすさがバランスよく同居しており、ファンバイクの理想形に思えた
最近試乗した2006年型のドゥカティ749。下から湧き出るトルクからズバババっと鋭く加速する。問題はシャーシで、Lツインの前後に長いライディングポジションで気軽に楽しめない感じだ
最近試乗した2006年型のドゥカティ749。下から湧き出るトルクからズバババっと鋭く加速する。問題はシャーシで、Lツインの前後に長いライディングポジションで気軽に楽しめない感じだ

差がつくのはハンドリングのヤマハが極めた車体パッケージ

 バイクレースの最高峰MotoGPとスーパーバイクで日本メーカーに唯一対抗しうる海外メーカーはドゥカティしかない。それも国産車とは全く異なるアプローチで時に輝かしい成功を収めてきたことから、日本のメーカーからも一目置かれる存在となっている。

 それ故、ドゥカティは徹底的に研究され、ホンダはその特殊なフレーム構造を模範とした市販車を投入したこともある。それがピボットレスフレーム構造で1997年にVTR1000Fを発売した。エンジンはホンダも得意としていた90度V型2気筒でドゥカティと同じだが、フレームをアルミ製としていたことが異なる。

写真のVTR1000FもドゥカティのVツインも共に90度なのだが、ホンダは上に開いていることからV型と言われる。ちなみにドゥカティは前に開いているのでL型だ
写真のVTR1000FもドゥカティのVツインも共に90度なのだが、ホンダは上に開いていることからV型と言われる。ちなみにドゥカティは前に開いているのでL型だ

 VTR1000Fはモリワキなどが開発して鈴鹿8耐レースなどに参戦したが、輝かしい成績は収められていない。ピボットレスフレームはエンジン全長が伸びてしまうL型エンジンのデメリットを克服するためのものであり、ある程度長さを短縮できるV型には必要がなかったとも言える。

 そして、エンジン全長をコンパクトにするのであれば、並列配列でありながらV型と同じ効果を発揮するヤマハの取り組みが最適解であり、ドゥカティの進化形がヤマハのスーパースポーツと言えるだろう。

 しかし、ヤマハのエンジンには振動対策が必要で、バランサーを搭載する分最高出力が不利となる。ヤマハがレースで苦戦するのは主にパワーの劣勢が原因で、振動面で有利なV型エンジンを使うホンダやドゥカティと勝負ができているのは、優れたハンドリングのおかげだ。

 そんなレースの世界と一線を画す新型YZF-R7は、ラップタイムや勝敗抜きで「楽しい!」ところだけを満喫すればいい。高性能すぎないのでワインディングに、遅すぎないのでサーキット走行会にもおすすめの新しいスーパースポーツだ。

新型YZF-R7の鉄フレーム+不等間隔爆発2気筒は、ドゥカティと同構成だが大幅にコンパクト。ホイールベースは1405mmで現行ドゥカティ・スーパースポーツの1478mmより70mm以上も短い
新型YZF-R7の鉄フレーム+不等間隔爆発2気筒は、ドゥカティと同構成だが大幅にコンパクト。ホイールベースは1405mmで現行ドゥカティ・スーパースポーツの1478mmより70mm以上も短い
2010年代までLツインを採用していたドゥカティのスーパーバイクはこのような車体構成になっていた。エンジンが前に突き出ているのでコンパクト化が難しい
2010年代までLツインを採用していたドゥカティのスーパーバイクはこのような車体構成になっていた。エンジンが前に突き出ているのでコンパクト化が難しい
現在のドゥカティはホンダと同じように上に開いたV型4気筒を採用する。フレームもアルミを採用しており、今ではドゥカティが日本メーカーの手法に寄せている状況だ
現在のドゥカティはホンダと同じように上に開いたV型4気筒を採用する。フレームもアルミを採用しており、今ではドゥカティが日本メーカーの手法に寄せている状況だ

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